俺の決意と本気
「ぎゃっはははははは!ニコポ!ニコポ意味なし!ひー!ひー!ぎゃははははげふっゲフッ………ひゃーはははははは!」
「笑うなていうか神野郎てめえ全部わかっててやりやがったな!」
「あーははっはっはっは……いやだって、ちゃんと約束守ったろうがよ」
「そうだね、確かに魔法があってモンスターいたけどモンスターしかいねえとか予測できるか!」
「条件がそれだけだったんでなあ。正直、後はランダム設定で飛ばした。……いいじゃねえかよ、ほんとだったら条件の『他』は全部ランダムだったのに、気を利かせて『お前がそのままでも生きていける世界』を条件に入れたんだからな」
言われてぞっとする。
そうなると、本当は空気がなかったり溶岩だらけの世界だっておかしくなかったってことか。
「わかったか?こっちはちゃんと約束は守ってる。次は気をつけるんだな」
「……次?」
「ああ、次だ。いったろ?これはワッシの暇つぶし。お前にとっちゃあ生存の機会だ。やめるっていうならそれもいいさ。強制はしない」
「…………」
「どしたよ」
「なんで、俺なんだ?」
「偶然って言いたいけどな。お前が面白い奴だからさね」
「面白い?」
「ああ、面白い。……あの世界で、お前はきっちり最後まで本気で生きた。絶望して自殺したり、精神を病んだり、ワッシへの恨みで己をなくしたりすることなく、な。普通、ねーよ」
「……」
「ワッシはお前があの世界にいったあとな、お前の生き様に対して『予見』は使ってないが、『予測』はしてたんだぞ?仮にも神とお前に言ったワッシの『予想』に、あの結末はなかったさね」
「…………」
言われて、俺はあの世界での自分の最後を振り返る。
……ああ、そうだろうなあ。
「だってなあ……あの世界に結婚って文化持ち込んで、スライムちゃんと結婚して添い遂げるとか完全に予想GUY」
「いわないでー!さびしかったのー!それに慣れたらかわいく見えてきちゃったのー」
「ちゃんと夜のお勤めまでするお前マジパネェ。ある程度姿変えられるとしって女性型とらせて白いタンパク質をスライムちゃんの中で放出してソレを元にスライムちゃん分裂、子供できちゃったとかどうなの」
「うっうっうっ……いいもん、スラちゃん愛してるもん……」
「気持ちよかったか?」
「うん、マジで」
正直あれはすごかった。
「……幸せだったか?」
「ああ」
即答する。それだけは間違いないから。
苦労したし、正直辛かったことのほうが多いけど、一生懸命に生き切ったことに後悔なんて無い。
「そういう、お前だからだよ。……さて、どうするよ。次は」
「……なあ、これはできたら、でいいんだが……」
「む?」
「今の『俺』は終わりで良い。俺はちゃんと生きたから。二度目が在るってのが本当はおかしいんだ。……あの俺の愛するスライムたちの世界で生きて死んだ俺は、『死ぬ』べきだ」
「……ほう」
「だけどさ、神さん。『前の俺』にチャンスをくれてやってくれ。せっかく『テンプレ乙』な機会をもらった俺だ。ちゃんと最低系な世界を愉しんだ俺が居ても、いいだろう?今の俺の記憶を、『知識』として前の俺に与えてやって、改めて『次』をやってくれ」
「……やっぱり、面白い奴だよ、お前は」
優しく俺に笑いかける神。
そこには、見守り人たる親のような、自愛の笑みで――
「言っとくけどすでに神さんの笑顔なんざ信用してねえ。暇つぶしと言い切ったドヤ顔の『イイ』笑顔の貴様を信じている」
「ッチ……」
「それからするなら『慈愛』だ。自愛してどうす……いや、本気で『自愛』で言いやがったな神野郎」
「よーし、願いはきいた。ではさらばだ!」
「ちょ!てめえ、まちやが……」
じゃあな、神様。グッバイ、俺。