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儚い夢

作者: 雪那

言葉が疎かですが。

読んでいただけると嬉しいです!


もう少し…時間を下さい。

もう少しでいいから…


校舎裏

「あの…ずっと杉浦君の事好きでした。付き合って下さい。」

女の子の告白。

「ごめん。無理」

そしてフる俺。

杉浦亮一。高2

いつもながら無残なフり方。

もうあきあきだ。

「亮ちゃん!」

「あ?」

「またフったの?優しくフれないの?」

「うるせーな優。」

須田優。高1

俺の幼馴染み。

いつも校舎裏に来る変な奴。

「また来たのか?つか俺がOKしたらお前キレるだろ」

「まぁね。亮ちゃんに限ってそれは無いと思うけど!」

そして俺の彼女(?)

お遊び程度の付き合いみたいなもんだが…

「あっ!1限体育だ!」

「じゃあ早く行けよ。」

「うん♪ばいばい!」

嵐のような奴だ…

「はぁ」

「亮一!みーちゃった♪」

「…今田…」

「何?お前ってロリコン?あれ1年だろ?」

「違う。只優のお遊びに付き合ってるだけだ」

「へぇ大変だな」

俺は優の事を考えて無かった。

優がもういないと思って。

後から考えると結構ひどい…

翌日から優が校舎裏に来なくなった。

俺は毎日、同じ事を繰り返し言っているのに…

帰り道電話してみることにした。

「もしもし」

『もしもし』

「優。もう校舎裏来ないの?」

『もういい。亮ちゃんの馬鹿。』

プープープー

(何だ?)

俺は何がなんだか分からなかった。

「ただいま。」

「おかえり!病院どうだった?」

お玉を片手に持った母さんが台所から顔をだす。

「あっ!」

「早く行きなさい!!!馬鹿息子!!!!」

「うぉ!!」

思いっきり蹴り飛ばされた。

もう病院なんて面倒だ。

「イテテ…」

早く行ってしまおう。

明るければ気持ちがいい商店街も、人がいなかった。

とにかく寒い。

「雪でも降りそう…」


市立病院心臓外科

「お、来たね。今日は来ないかと思ったよ。」

「すみません。」

ドクターが待っていてくれた。

渋々診察室にはいる。

「じゃいつもの様に」

「はい。」

診察を終えるとドクターの表情が変わった。

そしてすぐに笑うと

「これからまだまだ寒くなるから、スポーツは控えてね。」

「はぁ…はい」

俺は心臓病だ。

だから大好きなスポーツはあんまり出来ない。

まっ他な事は何でも出来る!

というポジティブに考えてるけど。

病院を出ると雪が降っていた。

「うわ…寒っ」

家迄徒歩20分

ぼーっと歩けばあっという間の距離だ。

俺は優にもらったCDを聞きながら歩いた。

「…優」

家の前に着くと優が立っていた。

つかつかと歩いて優は近付いて来た。

ドン!

「杉浦亮一!

私!本気だから!」

優は手紙を押しつけて帰ってしまった。

「…………?」

【亮ちゃんへ

この間の話聞いちゃった。

私、お遊びのつもりなかった。

でも亮ちゃんは嫌だったんだよね。ごめんね

私は杉浦亮一が大好きです。

付き合ってくれるなら1/31志賀駅北口桜公園13時に待ってます。

    優 】

「一月三十一日って優の誕生日…」

どうしようか困った…

1月31日 快晴

どうしようか困ってると思う。

亮ちゃんのことだから。

でも来てくれるって思って公園に向かっちゃうんだ。

今日は1年は都内巡りの振替えで休みだから。

でもね…そういうのってあっさりだめになるんだよね

「もしもし」

『優!亮ちゃんが!』

「えっ?」

何事も無く来てくれると思ったのに。


優を傷つけたのは俺だ。

俺は優を妹みたいに見てた。

いっつも目が離せないくらい可愛かった。

俺は今日行かなきゃいけないんだ。

「すーぎーうらーー!!走ってる途中に考え事してんな!」

俺が普通に優を好きになって、普通の体だったら…

ドサッ

「亮一!!」


「お母さん!!」

「優…大丈夫。手術終わったから。でもね…」

「…嘘っ」

昔、お母さん同士の会話を聞いた事がある。

すっごい気になって頭に残っている。

〔亮一君、この頃どう?〕

〔相変わらずよ。元気で大変。このまま何もなかった様に生かせてあげたい。〕

〔信じられないわ。亮一君が心臓病だなんて。〕

〔私、亮一が病気でも後悔なんてして無い。あと20年の命なら。楽しい20年になって欲しいと思ってるの。〕

〔そうね!亮一君なら大丈夫よ!あなたの息子だもの〕

最初何だか分からなかったけど。

亮ちゃんは20年しか生きられないんだ。

「お母さん!大丈夫だよね?亮ちゃんちゃんと目覚ますよね?」

「優!何動揺してるの!貴女が亮ちゃんを信じてあげなくちゃいけないんでしょ!」

「…うん…」

亮ちゃん目を覚まして。

辛いよね…

酸素ボンベ取りたいよね。

ごめんね。手を握るしか出来なくて…

亮ちゃんは昔から入院が多かった。

その度に胸に傷が増えて泣いていた。

痛いとは決して言わないけど。

ずっと苦しくて泣いていたんだと思う。

私の知らない所で、孤独と病気に一人で立ち向かってたんだ。

「亮ちゃん…」

暗い…もう先が見えないみたいだ。

でも何だか温かい…。

俺は今どこにいるんだろうか。

真っ暗な所でがむしゃらに光を探している。

【1/31志賀駅北口桜公園13時に待ってます。】

そうだ優はどこにいるんだ…

優に会わなくちゃ。

優…優。優!優!!


「す…ぐる」

亮ちゃんが目を覚ました。

私の名前を呼んでいる。

亮ちゃんが帰ってきた。

「亮ちゃん…おはよう!」

「公園…」

「良いの!亮ちゃん来てくれようとしたんでしょ?ありがとう!」

「…」

もう…会いに来ちゃいけないって思った。

亮ちゃんは今回の入院で限界らしい…

私が側にいると亮ちゃんは頑張って生きようとしてしまうから…

もう無理しないで、亮ちゃん…

「すぐ…る。泣く…な。」

「亮ちゃん…ごめんなさい。もう、会えないよ。

亮ちゃんに私何も出来ないもん。ごめんね…亮ちゃん…大好きだったよ…」

「すぐる…?」


神様は不公平だ…

なんて、何回も思う。

変わって欲しいって。

でも、運命は変えられない。

だから、もう少し時間を下さい。

せめて、大好きな子にお礼が言えるだけでも…

もう少しで良いから、あの子の笑顔を見せて下さい…

それだけで良いんです。

「今日は帰るね」

私はセカセカと帰る支度をすると病室を出た。

私はここにいちゃいけない。

迷惑を掛けてしまうから、私は亮ちゃんの側にいられないんだ。

止めどなく涙が流れる。

私は逃げたんだ。


「亮君気分はどうだい?」

「…ん」

俺は今首を動かして、返事をする体力しかない。

きっとすぐ元気になれるだろう。

「亮君、今回の入院はきっと長くなるから頑張ろうな」

「な…んで…」

「7回も手術しているからゆっくり経過が見たいだけだよ。」

「……」

嘘だってすぐに分った。

主治医は嘘の時に笑う。

俺はきっとこの入院で…

前はそんなことなかったのに。

「それじゃ!また来るから」

無理やり笑う主治医が悲しく見えた。

「亮」

母さんが来た。

笑っているのは何故?

「亮?俯いていたら心臓似悪いわよ?」

「……俺…」

「な〜に?」

「おじい…さんに…なれる?」

おじいさんになれる?

遠回りに「生きられる?」と聞いている。

どうしても口では言えない一言。

母さんは息をのんだ。

「亮?何言ってるの?母さん亮が元気になってくれるの信じてるよ?」

「もう9年…もたな…い」

天井を向いて流れない涙をみながらかあさんにいった

「…亮?9年とかカウントダウンしないで?20年これから生きてやるって言ってよ」

「お母さん…ほんと…言ってよ」

「大丈夫、大丈夫だから…頑張ろう?ね?」

「……」

もう聞くのはやめよう。

嘘は聞きたくないから。

ガラッ

「亮ちゃん!」

「優。学校どうしたんだ?」

「さぼっちゃった!」

「オイ!」

亮ちゃんが目を覚ましてからもう3日がたった。

食事は取れないもののしっかりとした言葉で返事してくれる様になった。

ここに来るのは今日で最後。

亮ちゃんを見てると苦しそうだから。

この前亮ちゃんの主治医に聞いたんだ。

〔亮君は気持ちは強いんだけどね。体が悲鳴を上げているんだ。今度話すつもりだよ。僕は頑張って助ける方法を考えたいよ。〕

〔先生が言えば亮ちゃん頑張ると思います。でも私が側にいたら、亮ちゃん辛くなっちゃうから。私何もできなくて…〕

最後は自己嫌悪に陥っちゃって…私馬鹿みたいだ。

「優?」

「あ…何?」

「だから俺が退院したら、スケート行こうっ!」

「…うん!」

もう会えないなんてやっぱり言えないし、会いたくなっちゃうかもしれない。

無邪気な亮ちゃんを見ると、目が離せないんだ。

ガラッ

「亮君お話が〜」

「あっ先生。じゃ優外で待ってて!」

「…うん」

亮ちゃん。ごめん。さようなら。


最後まで、私は何もする事ができない。

怖いんだ。

目の前にいる最愛の人がいなくなることが。

「え?」

一瞬耳を疑った。

主治医から出た言葉。

それは『余命3年』だった。

俺、17だけど何となく分かってた。

でも嫌だ。

まだ、何もして無い。

「先生…俺まだ17で高2だよ?二十歳で死ぬの?」

「…」

主治医は何も言えなかった。

きっと言いたくなかったんだろう。

でも、隠したら俺が怒るから。

「もう少し…生きたいな…俺…」

力の入らない右手を握ると涙が止まらなかった。

主治医が出たあと、入ってきたのは優じゃなくて看護師だった。

「亮君。優ちゃんお手紙置いてったわよ〜」

「優が?」

俺は封筒を預かるとすぐに開けた。

〔亮ちゃんへ

亮ちゃん今迄私のわがままに付き合ってくれてありがとう。

無理してたよね…。ごめんね。

もう、亮ちゃんに会いに来ないから。

亮ちゃん私がいると、無理してるから。

元気になったら。スケート行こうね。

行きたいな…

でも、もう会えないよ。

私亮ちゃんみたいに強くないから。

怖いんだ…

亮ちゃんが、私の側じゃいられないんだ。 

今迄ありがとう。

亮ちゃん大好きでした。

さよなら〕

無理してる?俺が?

段々怒りが頭に昇って来た。

「これいつ渡された?」

「5分位前よ?」

ガシャン!

「亮君!!!!」

俺は手に付いていた点滴をひきちぎると、走った。

優はまだ病院にいる!

院内放送で呼ばれても俺は走った。

息が苦しい。でも…

「優ー!!!」

優は玄関を出た所にいた。

俺が叫ぶとこっちをみた。

「亮ちゃん!?」

「馬鹿野郎!俺はお前の前で無理なんかして無いし!迷惑でもない!俺はお前が可愛くて仕方ないんだ!!優!最後なんて言うな!大好きだ!」

「亮ちゃん…」

「危ない!!!!」

ドーン!!

「優!ゴホッゴホッゲ…」

「亮君!」

俺は気を失った。

目の前で優が飛ばされたのを見た後…。


優…優…すぐる…

「ガーゼ!!輸血すぐ運んで!!O型の+よ!早く!」

「須田さーん?聞こえますかぁ?」

「意識レベルが下がってます!」

「すぐCT撮って。」

「はい!」

救急センター。

優はそこにいた。

看護師の話によると、ワゴン車に突っ込まれた。

俺は自分を責めた。

俺が優を呼ばなければあんな事には…

「呼吸停止!」

「呼吸器入れて!須田さん!しっかりしてぇ!」

「先生!心肺…停止…」

そんな…

「すぐるーーーー!!!!!!」

1年後。

俺は体力がほとんど無くなり喋るのもままならなくなった。

優は俺が起こしてしまった事故で俺より早く逝ってしまった。

優は、俺の大好きの一言で運命が変わってしまったんだ。

でも、あのセリフの後優は笑った。

あいつの笑顔は久しぶりだった。

優の母さんは俺を恨んだりしなかったのは、きっと優が最後に笑ったからだと思う。

俺は、やっぱり優が大好きだったんだ。

ありがとう…

ガラっ

「りょーう?」

「……」

静かな病室に心肺停止音だけが響いていた。

「亮ーーー!!!!」











神様は時間をくれた。

俺に、優に…。

俺は大きな翼で、最愛の人の所へ向かった…。


END
















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― 新着の感想 ―
[一言] なんかすごく痛々しくて、最後まで読むのが辛かったです。。もうちょっと救いの手があったらな、と個人的に思いました。儚いですねー。。これからも頑張ってください。
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