「和解」
「狂った魔術師が狙われてたのは他人にだけじゃなかった」
それから少しウミは俺をみた。
これでわかったろ?と言いたげな目をして。
他人にだけじゃなかったって…
まさか!!
「怜!!怜にも…家族にも狙われてたのか??」
俺は気付いた。
他人じゃないってことは身内。
そしてウミは怜を最低といっている。
怜は狂った魔術師の弟だ。
ということは狂った魔術師を狙っていたのは怜及び狂った魔術師の家族だ!!!
「大当たり。そうさ。狂った魔術師は家族に狙われていた。薄々気付いていたけど彼は気付かないふりをした。だって彼は監禁状態にあって家族以外に人をしらなかった。頼りは家族のみだった。家族を愛していた。狂おしいほどの愛。ふふっ…家族にとっては迷惑だったのかもしれないけど。彼が能力を開花し始めたのは怜が1歳彼は3歳の頃。親は恐ろしがった。それでも監禁されたくらいでしばらく殺されるようなことはなかった。彼が6歳になったときまでは」
「6歳…?」
「そう。6歳になったとき彼の母親は気付いてしまった。能力が怖くて監禁してしまっていたけどあの子は私のことを恨んでいるんじゃないだろうか?このままではいずれは殺されるってね…。監禁ももう限界だった。彼は逃げようと思えば逃げれたけど逃げなかった。そのことに家族は気付いていたかは知らないらしいけど。当然ながら母親がそんな態度だから怜も滅多に彼には近づかなかった。怖かったんだろうね。怜も彼ほどじゃないにしても同じ能力をもっていた。狂った魔術師が6歳だったんだからその時怜は4歳だね。彼は弟の怜のことは好きだった。母親も。最初に言ったと思うけど。だから考えもしなかった。まさか自分を殺しに来るなんて…」
「殺しに!?」
俺は信じられなかった!
怜が…?
そんなことするなんて!!
「そうさ。ある晩にね、怜と母親が狂った魔術師を監禁している洞窟の前へ来た。殺しに。彼は喜んだ。二人が来てくれたって!!でも違った。怜は召喚術を使い始めたんだ。そしてそれをだすとワープして逃げた」
「それって…?」
「猛獣。鎖につながれた彼は身動きがとれない。絶体絶命ってやつさ」
「どうやら能力は祖母から受け継いだものらしくてね…母親の能力はファインダーだった。狂った魔術師は勿論抜け出した。ワープで。母親は知らなかった。ワープできることを。だから狂った魔術師は逃げようと思えば本当にいつでも逃げれたんだ」
「なんで今まで逃げなかったの?」
俺には理解できない。
監禁された時点で俺なら逃げ出す。
「だからいったろ?家族を…母親と怜を愛していたから」
「わかんないよ!!俺にはわかんない!!監禁されてるって時点で家族に見放されてるんじゃん!!なのになんで愛せるんだ…?俺にはできない」
「…そうだね。僕にも理解できない。狂った魔術師は名前だけに狂っているからかな?…狂ってるのはそれとも僕らなのかも」
ウミは少し寂しそうに笑った。
「俺ら…が狂ってる?」
それも俺には理解できなかった。
「狂った魔術師にとって触れ合える生き物は家族だけだったからね。絶対的な存在だったのかも。三歳くらいまでは大事に育てられたんだし?」
「でも…でも…なんで母親はそんなに怖がったんだろ?監禁するなんて…自分の子どもで可愛がってたのに!」
俺はなんか泣けてきた。
だってそれじゃあんまりだ。
「…怜が生まれてなければまた違ったのかもね。なんでそんなに怖がったか…。外に出せばいろんな奴らに狙われる。危険な能力を持つって奴は狙われるっていったろ?弱肉強食な世界だからね。中には目が合うだけで人を殺せるやつもいる。能力がわからなくても強い奴っていうのは大体オーラでわかるんだ。あと特殊な能力っていうのも大体オーラで分かる。大体の人はオーラを特定できなくても部類別に感じることはできるんだ」
「そっか…。でも俺は…俺なら絶対に子どもを閉じ込めたり見放すようなことはしない!!」
怜が生まれてこなければ違った…それってきっと子どもがもう一人いるから一人いなくてもってことなのかな?やっぱり…。