「憎しみ」
…が、そこを俺がとめた。
「アリス!!もういいから!!」
「うるさい!!」
だけどアリスは俺のことまで突き飛ばした。
「いてっ!!」
俺はつい悲鳴をあげてしまった。
「あ…ごめん」
アリスがやっと正気に戻ったようでウミから手を離した。
「…本当乱暴だな」
ウミは手のひらで頬を押さえてため息をついた。
「ウミ…。なんでお前が俺を恨んでるのか聞かせてくれよ…!俺とお前は会ったことないはずなのに」
俺はまっすぐウミの目をみた。
きくなら今だと思った。
何故俺が憎いのか。
「…前にアリスが言ったとおりだ。僕はあっちの世界が嫌いなんだよ」
「だからなんで?」
俺はイライラしてきた。
「僕は一人立ちしてから毎日すごくすごくすごく大変だった。ハートレスの能力をもっていたから危険な能力をもつやつに狙われたりね。僕の能力をほしがるやつはいっぱいいたし。良い意味でも悪い意味でも狙われてた。力だめしとかいって僕を追い回す奴もいたしね。アリスとは本当に小さい頃から知り合いだったわけで…。僕が拓斗の世界へワープする日たまたまあったんだよ」
そのまま少しウミは黙った。
そしてまた口を開いた。
「僕がこれから話に聞く、もう一つの世界へ行くといったらアリスは自分もいくといった。毎日が地獄のようで疲れきっていた俺たちにとってそれは唯一楽しめることだった。そしてワープしてみたもう一つの世界は希望に満ちていた。皆楽しそうにしていた。その場所は日本。そしてアリスはファインダーの能力を使ってもう一人の自分を探し当てた。するとその隣にいたのが偶然にももう一人の僕、拓斗だった。そう…僕は昔々拓斗を見たことがあるんだよ。それをみたアリスはお前の世界に憧れた。けど僕は違った。憧れを通り越して抱いた思いは憎しみ。なんで僕はこんなに苦しんでるのにお前…拓斗はあんなに楽しそうにしてるんだ。もしかして苦しい思いをしたのは拓斗だったのかもしれないのにって」
「そんなの…逆恨みじゃないか!!」
俺はさすがにカチンときた。
「そうだよ。だからなくすんだ。こんな不平等な世界を。僕はもうこの世界が嫌なんだ。僕の世界も拓斗の世界も嫌いなんだよ。大嫌いだ」
狂ってる。
と思った。
それほどにウミはつらい思いをしてたんだろう。
「そんな僕の気持ちをわかってくれたのは悠里だけなんだ。だから僕は狂った魔術師にやられるわけにいかない。そのために僕はお前らを利用するんだ」
そういうとウミはゆがんだ笑みを浮かべた。
上等じゃねぇか…!!
「俺も悠里を連れ戻すためにお前を利用する!」
俺とウミは少しにらみ合った。
「で、どうすんの?」
焔の一言。
そうだ。
俺らは世界を滅ぼす日がくるまで悠里を連れ戻すことができない。
「特訓するしかないんじゃない?」
リンが半ばなげやりなかんじで言う。
「どこで?」
怜の疑問。
「俺…学校ある」
俺が一番足手まといかも…。
「僕が始めに悠里といた場所でいいだろ。そこを特訓場所にしたらいい」
ウミが俺らに提案した。
全部ぶちまけたら少しすっきりしたみたいだ。
「そうね!そうしましょ!」
アリスも大賛成だ。
こうして俺らは特訓することになった。
世界を滅ぼす日まで。
それはいつなのかわからない。
俺は…俺らはそれまでウミとうまくやってけるだろうか?
悠里はそれまで無事だといいけど。
そんな心配が胸に残るまま俺らはもといた世界へ戻った。