「協力」
「お前らに話したって仕方ないさ…」
「なんだと!?」
焔が俺をおしのけてウミに掴み掛かった。
「お前…なんなんだよ!?偉そうに!!!ふざけんじゃねぇよ!!」
「お前…赤毛?」
予想外の人物にウミは少し驚いていた。
「赤毛じゃない!!焔っていうんだ!!」
焔は相当苛立っている。
なんでこんなに真剣なのかとみんなは疑問に思った。
だって初めは世界を滅ぼすつもりだったじゃないかと。
だけど拓斗だけは少し勘付いていた。
もしかして俺(拓斗)の母さんに何か関係があるんじゃないかと。
焔は最近母さんと妙に親しい。
あの焔が俺らに協力すると言った日以来。
母さんは焔君は寂しいのよって言ってた。
母親がいないって事も。
もしかして焔は俺の母さんと焔の母さんを重ねてるんじゃないだろうか?
だからいきなり世界を守るなんて言い出したのではないか?
だとしたら母さんはすごい。
けど…なんか俺より母さんと仲が良さそうなのは微妙。
そんなことをぼ〜っと焔に押されへたれこんでから考えていた。
そして考えながら二人のやりとりをみていた。
俺はわかった。
もうウミにはなんの力もない。
なら早くコイツに狂った魔術師の居場所を聞き出さなきゃ。
じゃなきゃ悠里が…。
「焔…どいて」
俺は冷たく焔に言い放つ。
「何!?」
焔は怒ってこちらをみた…が、すぐに言葉を引っ込め後ろに少し下がった。
(こんな拓斗…みたことねぇ…)
その時の拓斗の顔はまるで心を失ったような表情だった。
「やぁ…ウミ…はじめましてでは無いよね。もう一人の俺…」
その言葉にウミは大きく反応した。
「もう一人の俺だと!?じゃあ…お前がこちらの世界の僕?」
ウミはわなわなと震えている。
そして手を前へだした。
心をとる気だ!
…が、アリスが前にでてそれを防いだ。
「拓斗は絶対に守る!!」
「邪魔するな…!ファインダー!!」
「ファインダーじゃないわ!アリスよ!!」
「っは…!じゃあもしかして青髪も名前をもってるわけか?碧髪は確かリンだろ?」
ウミはゆがんだように鼻で笑った。
「それが何だっていうんだ?お前だって悠里に名前をもらったんだろ!?早く言えよ!狂った魔術師の居場所を!!」
「だからなんでお前らに言わなきゃならないんだ?僕は一人で悠里を助けに行く!!手出しはさせない!!」
「寝てたくせに…」
焔がボソッと言い放った。
「なんだと!?」
ウミがものすごい形相で怒り出した。
「寝てたんじゃない!眠らされててたんだ!!」
その時ウミは気付いた。
眠らされてたってどれくらい眠ってたんだ?
僕は。
今は昼だ。
狂った魔術師のとこへいった時は夜だった。
そしてタイミングよくこいつらが来たときに僕はめざめた。
もしかして…これも狂った魔術師のシナリオなのか!?
「どうした?」
ウミの表情が変化したことにいち早く気付いたのは怜だった。
「…狂った魔術師は…お前らがここに来ることを知っていた。だから僕をお前らが来たと同時におきるよう魔術をかけたんだ。きっと…。あいつは僕とお前らにはむかわせるようにわざと悠里を…」
「なんだって!?そんな…狂った魔術師ってやつはそんなこともできるのか?」
拓斗は予想外の狂った魔術師の力にすごく驚いていた。
「そこまでとは…」
アリスもだ。
「やるわね〜」
リンはまあ予想できてたという感じ。
そして焔も。
「もっといろんなことをできるよ。あいつはすごい」
怜は狂った魔術師について結構知っているようだった。