「駒」
それからまぁ…5分くらいアリスは悠太君にむこうの世界のことや、悠里のしようとしてること、能力について話した。
悠太君が納得するには十分な時間だった。
「これで納得できた?信じてくれた?」
アリスが悠太君と目を合わせる。
「信じられない…けど信じるしかないじゃないか…!!さっきの拓兄のみたら…」
(ちなみに俺は悠太君に拓兄と呼ばれてる)
「そうだよな〜〜!!!あれはすごかった!!」
焔がうんうんと頷く。
「焔;;茶化すな;」
ここで怜の注意が入った。
「で、これから拓兄達は兄ちゃんを連れ戻しに行くんだろ!?僕も行く!!!」
「「「「え!?」」」」
4人同時に叫んでしまった。
よくよく考えなくても悠太君が「一緒に行く」って言い出すことは予測できたのだけどその時皆は驚いてしまった。
「無理だよ!」
俺は悠太君を説得しようとした。
「なんでさ?行くよ。誰でも能力は目覚めさせればあるんだろ?僕の能力も覚醒させてよ!!」
悠太君がアリスの方をみる。
「やっ…;;無理だよ;;」
アリスもどもりながらも悠太君に無理と言った。
「だからなんで??」
悠太君は苛立ってるみたいで声が少し大きく不機嫌そうになった。
「なんでって…危ないからよ!!」
アリスがきっぱりと言い張る。
「だから能力覚醒させてよ!」
悠太君もねばる。
「あのね、能力を覚醒させたからといってすぐ使えるかは分からないの!もう3日後には出発するのよ?それに…悠里に続いてあなたまでいなくなったらご両親悲しむでしょ?まだ小さいんだし」
小さいといっても悠太君は今小5だ。
「そんなのアンタらだって同じだろ??」
悠太君はぐるっとみんなを見る。
「拓斗はそうかもしれないけど他の私達は違うわ。親はいないもの」
アリスの言葉に悠太君の表情は一瞬とまった。
「親いないの…?」
「正確に言えばもう会えないってとこね。私の世界ではね、小さい頃に独り立ちするの。そうなったらもうほとんど親とはまともに会えないわね」
「そうなんだ…」
悠太君は驚いてるようだった。
そしてあきらめた。
もう絶対にアリスは許可をくれないと感じたのだろう。
「わかったよ…。僕あきらめる…。兄ちゃんのこと拓兄達に任せる…」
悠太君は大きなため息をついて、そして少し泣きそうな顔でつぶやいた。
悔しいのだろう。
「よっしゃー!!まかせとけって!!」
焔がやたら大きな声で悠里に言う。
「俺も全力を尽くすよ」
怜は悠太君の背中を軽くたたいた。
「あたしもよ〜wwだって悠太君可愛いんだもん♪」
リンには少し引いていた。
「だからちゃんと親孝行してなさい!!」
アリスが悠太君の真正面に立った。
そして俺はそのアリスの横に立って悠太君に言う。
「俺絶対悠里連れ戻すから!!!」
この一言で分かってくれたかな?
安心していいよって事何だけど。
「うん…。頼りにしてるよ。拓兄!」
悠太君は俺を見て少し笑顔になった。
わかってくれたみたいだ。
そして後で話してくれた。
「本当はね…僕、拓兄に八つ当たりしてたんだ。あの日悠里がいなくなるきっかけは拓兄じゃない。僕だ。兄ちゃんと喧嘩したんだよ。不愉快だ。そんなんだと嫌われるよって言ったんだ。兄ちゃんに。だから…本当は僕の所為なんだよ。でも認めたくなかった。認められるわけ無いよ!!兄ちゃんにもう会えないと思うと涙が出てきた」
「悠太君…」
「でもね、考えたんだ。その涙は罪悪感から来てるんじゃないかって。僕の所為で兄ちゃんが出てった事を思い出さないように別の理由を作ったんじゃないかって。そう思うと心の中がもやもやして本当に毎日憂鬱だった。けど拓兄が兄ちゃんとあの日喧嘩したって事を知ってたから自然に拓兄が悪いって心の中でそう思ってた。そう思おうとしてたんだ。僕は最低だよ」
すべて話し終わると悠太君の目からはまた涙が零れ落ちてきた。
俺はなんていって良いか分からなかった。
悠太君の気持ちは痛いほど分かって俺まで泣けてくるくらいだったから。
「馬鹿ね〜〜〜〜!!!あんた達」
その時リンが俺らのおでこを小突いた。
「「え…?」」
俺と悠太君は口をあんぐりあけてリンをみる。