「駒」
「はっ!!何笑ってるんだよ。最低だな」
後ろのほうから声が聞こえた。
すごくすごく聞き覚えのある声。
昔一時期は毎日のように聞いていた声。
誰の声?
これは…
「悠太君…」
悠里の弟、悠太君だ。
彼は俺を見ていた。
すごく憎らしいといった表情で。
裏切り者というように。
俺は一瞬口を開けなかった。
開き方を忘れたように…。
「それ…どういう意味…?」
かすれた声で聞く。
心臓がバクバクいってる。
何故って?
心当たりがあるから。
忘れてはいけない。
それは…
「どういう意味だって?お前の所為で兄ちゃんが行方不明になったんだろ!?変な奴についてったんだろ!?お前の所為で兄ちゃんは狂ったんだろ!?」
そう…
排除して追い詰めるっていう重い重い罪。
「俺…俺は…」
嗚呼…思い出したくない!!
あの日君に言った言葉!
思い出したくない!!
あの日の君の顔!
そして俺を突き放したときの君。
全部悠里のことだよ?
悠里の都合の悪い事はすべて封印したい。
「俺は何?何なのさ?俺の所為じゃないっていいたいの?だとしたらとんだ勘違いだよ。お前の所為だ!!お前が学校で悠里にひどいこと言わなければあんなことにならなかった!!僕と悠里が喧嘩することも!!あの日あの時あんなことを悠里にいったお前が悪いんだ!!!!!!!!!!」
悠太君の顔は真っ赤になっている。
少し涙目だ。
「俺は…俺は…悠里を…連れ戻す!!連れ戻すから!!絶対に!!」
悠太君をみる。
悠太君も俺をみる。
そして笑った。
許してくれたの?
俺を。
でも違った。