「同盟」
ウミはしばらく黙ってた。
やっと口を開いたときにはもう1時間くらい経過してた。
「さて…はじめようか…」
「うん…」
話が飛びすぎて何がなんだかわからないかもしれないけど「はじめようか」っていうのはつまり…最初に言っていた僕が人の心を盗る練習なんだ。
女の子のことがあってからだから、なんかやりにくいな…。
僕らは人がいっぱいいるところに移動した。
「あの子…。あの子の心盗ってよ」
「うん…」
ターゲットにされたのは子どもだった。
男の子だ。
手に風船をもってお父さんと手を繋いで…
すごく楽しそうで幸せそうだった。
僕が心をとるまでは。
「ど…どうやるんだっけ?」
僕が不安気にウミの方をみる。
「さあ…精神を集中させて…。あの子の方に手をだして…。心をとろうって思うんだ」
僕は前に手をだす。
男の子をよくみて…
心をとろうと心の底からおもう…。
ああ…これだ…。
僕の心をとった黒い煙のようなものが今僕の手からでている…。
男の子に向かってしゅるしゅるとその煙は伸びていく。
あ…男の子をつつんだ…。
僕は今男の子と向き合った状態にいて…
男の子の目をみることができた。
目から光が消えていっている。
風船が手から離れた。
空へ空へ高く高く上っていく風船。
男の子はそれを見ようともしない。
お父さんが心配そうに男の子を見る。
「どうしたんだ?」
男の子は答えない。
愛しい家族への感情さえも男の子はもう覚えてないんだ。
風船はみえなくなった。
男の子の心も…。
ああ・・・僕の中にまた闇が生まれる。
人の心をとるのはなんだか気持ちいい…。
ゲームをクリアしたときみたいな…。
少し切ない。
儚くて…花火みたい。
ウミをみた。
ウミは微笑む。
「そう…上出来だ」
僕も笑う。
それはそれはゆがんだ笑顔で…。
ああ…これで僕らは完璧に共犯者だ。
人の心とはなんと矛盾したものなのだろう。
愛おしいと思ったり憎らしいと思ったり…。
これだから「感情」は困る。
何日かぶりに更新しました☆
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