「友達」
「信じられない!! なんで…!? 人間なのに…! あんた…! この人間の心盗ったんでしょ!?」
「そうだよ。悠里の世界に対する心をとった」
女の子の顔が赤く赤くなっていく。
どうしてこの子はこの世界のためにここまであつくなるんだろう?
この子の世界はここじゃないのに。
「サイテー!!! あたし…あたしは絶対あんたを止めるから!!! 絶対…!」
女の子があつくなってるのに対してウミはすごく冷たく…そう冷ややかだったんだ。
「とめれるならとめたら?」
少しの間があいた。
ぽたっ…。
涙だ…。
泣いてる…。
女の子が泣いちゃった…。
「昔は…昔はあんたそんな…そんな奴じゃなかったのに…。なんで…?」
そしてくるっと背を向けるとスーーーーッと消えてしまった…。
「あ…」
ウミの方を見た。
少し眉がさがって…
なんていうか…
そう…悲しそうだった…。
「ウミ…?」
「…悠里」
力なくウミが笑う。
「あの子は…ウミの何…?」
「…昔からの知り合いかな…」
ウミは女の子が消えたほうをみた。
「それって…友達ってこと…?」
「…そう…だったのかもね…。昔は…」
ウミはまだ女の子が消えた方を見ている。
友だち…。
それは僕らにとっては邪魔なもの。
禁句だ。
世界を滅ぼすのに大事な人はいらないんだ。
僕はすべて捨ててきた。
ウミは…?
ウミも捨てたはず。
なのにどうしてこんなにウミは寂しそうなの?
僕はどうしてそれをみて共感してしまってるの?
僕は一度失った友達を「ウミ」といるうちに取り戻してしまった。
ウミがどう思おうとウミは僕の友だち。
僕はそう感じてしまって…。
あぁ…
なんで?
いやだ…。
その記憶は好きじゃない…。
なんで友だちってきいて「拓斗」が思い浮かぶの?
ねえ…僕は…ウミも…闇に完全に埋もれてはいないんだね。
友だちを愛おしいと思うんだから。