「始まり」
「ん〜・・・。 危ないかもしれないけど・・でもあまり関係ないかな? 会っても関わらないから」
「?どーゆーこと?」
「僕の世界ではね、7歳になると親元を離れて1人で暮らすんだ。 学校なんてもちろんないし会社だってない。 皆かって気ままに暮らすんだよ。 友達とかはできるけどあまりいない。 下手に関わると危険だからね。 僕らの世界はこちらでいうとすさんだ世界なんだ。 だから僕はこの世界が羨ましい。 元は一つだったこの世界がいとおしくて憎らしくて・・・。 たまらないんだ」
ポツリポツリとウミは話してくれた。
「元は一つの世界だったって・・・?」
「そうさ。 昔ここと僕の世界は一つだった。 けど分離したんだよ」
「なんで?」
「昔1人の能力者が思いついてしまったんだ。 悪い部分をおいやっていい部分を残せば世界はよりよくなるって。 そうして能力者は世界を二つに分離させたのさ。 いい世界はもちろん悠里の世界。 悪い世界は僕の世界さ」
「そんなことできる人いるんだ〜!!」
「稀にね」
「ふ〜ん・・。 実感わかないや・・。 ところでウミの能力は何なの?」
「僕の能力は時空移動と心の喪失。 それから闇の力の覚醒さ」
力の覚醒。
それはウミが僕につかったものだ。
僕にはまだ自覚がないのだけど。
そして僕はもう1つ気づいてしまった。
ウミが滅ぼしたいのは・・・こっちの世界だけじゃない。
あっちの・・ウミの世界も滅ぼしたいんだ。
「ねぇウミ・・・。ウミは僕と君の世界両方を滅ぼしたいんだね?」
ウミがゆっくり目をあわせてくる。
「・・・うん。僕は・・闇しかない僕の世界が嫌いだ。でも希望をもってるこの世界も羨ましくて・・ひどく腹が立つ。」
はじめてウミの感情というものを見た気がした。
本気で嫌なんだ。
「・・どうやって世界を滅ぼすの?」
「人から心を完璧にとっちゃうんだよ。そしたら皆抜け殻みたいになって人類が・・・僕にとっての世界が滅びるんだ。地球は残っても僕の世界はなくなる。永遠に。」
「心を盗る・・・。それは僕が覚醒させられた力?」
「よくわかったね。そうだよ。あの日公園で悠里を覚醒させた。君には素質があった。力を開放させることができる素質が。」
「素質・・・。」
ウミいわく昔は僕らの世界が分離したとき能力はすべて「悪い世界」のほうへいってしまったという。
「ねえ!今思ったんだけど、分離したってことはそっちの世界にもう1人の僕がいるってこと??」
「いる・・・かもね。でも姿は違うと思うよ。」
「なんで?」
「そりゃ生んだ母親と父親までが一緒だとは限んないだろ?」
「なるほど。」
母さんね・・・。
「ウミさ・・・僕から心・・完璧にとんなかったでしょ・・。あの時公園でウミが僕にしたのは覚醒だけでなく心もとったんだ。僕の世界に対する心。」
「とったよ。」
あっけらかんとウミが答えた。
「悠里の心を完璧に盗ったら悠里は抜け殻みたいになっちゃうだろ?そしたら世界をほろぼせない。」
「そっか・・。世界って・・ウミはどっちの世界を滅ぼすの?」
「両方だよ。それに世界を滅ぼすのは君も一緒。良い世界だけなら僕1人でもできるんだけど悪い世界のほうが厄介でね・・。能力者がいるから・・。だから君が必要だった。」
僕は黙ってじっとウミをみて話を聞き続けた。