「闇」
「悠里!?」
拓斗の姿がみえた。
こっちへくる。
「こんなとこにいたのかよ? よかった・・。 おばさんたちめっちゃ心配してんぞ! 帰ろう?」
拓斗。
名前はわかる。
けど拓斗への感情は忘れてしまった。
「悠里?もしかして・・・やっぱ怒ってる?; 今日のこと・・・。 ごめんな? 俺もちょっとイライラしてて・・・」
「何も感じない」
「は?」
拓斗にはわけがわからなかった。
まず悠里の隣にいる銀髪の少年は誰なのか?
何も感じないって何?
なんか・・・・悠里の何かが変わった気がするのは気のせい?
「あきらめなよ。 拓斗君?」
銀髪少年が拓斗にむかって口をひらいた。
「え・・・?」
拓斗はきょとんとしている。
「もう悠里は悠里じゃないんだから。 前の悠里とは同じようで別人なんだ」
「何いって・・・?」
「その通りだよ。 拓斗。 僕はもう昔のままじゃない。 僕にはわかる。 僕は僕じゃなくなってしまった。 世界を滅ぼさなきゃ。 僕はもう君を見ても怒りも何も感じないんだ・・」
悠里が冷ややかな顔をして俺(拓斗)をみている。
「おい・・! どういうことだよ!? わけわかんねーよ! お前・・! 銀髪・・! お前誰だよ? 悠里に何した!?」
「暗示みたいなものをかけただけだよ。 悠里の心の闇の部分を増徴させただけ」
「は!?」
何漫画みたいなこといってんだ?こいつ。
格好もかわってるし・・。
コイツなんか危ない。
「悠里! いくぞ!」
俺は悠里の手をとって家につれて帰ろうとした。
なのに悠里は俺の手を振り切った。
思い切り。
「悠里・・・?」
「僕は帰らないよ。 もう帰るひつようもない。 僕は自由なんだ」
何をいっているのかわからない。
「満たされてる?」
銀髪もわけわかんないこときいてる・・・。
「うん・・・。 でもなんか・・心が寒いっていうか空しいっていうか・・。 そうなんだ」
「すぐに慣れるさ」
ああ。もう何がなんだかわからない。
悠里は別の世界にいっちゃった。
なんかそんなかんじがした。
「じゃあそろそろいこうか」
銀髪が悠里に手をさしだした。
「どこへ?」
「世界を滅ぼすのに邪魔がはいらないとこへ」
悠里がニコっと笑ってうなずくと銀髪は悠里の手をつかんだ。
そして消えた。
手品みたいに。
俺の前からきえてしまった。
何がなんだかわかんなくて
俺はただ呆然としていた。
けど冷静だった。
悠里は行ってしまった。
手の届かない世界へ。
闇の中へと。