栗色の髪の婚約者は悪い意味で自己中心的な人でした……。~ああはやく婚約破棄されたい~
私の婚約者である栗色の髪の彼アンティーボウは悪い意味で自己中心的な人だった。
顔を合わせれば嫌みを言う。
お茶をすれば自分ばかり良いものを選び私には低価値なものばかり与える。
少しでも不機嫌だと当たり散らす。
気に食わないことが起これば分かりやすく苛立ったような顔をして圧をかける。
……などなど、彼の行動における問題点は少なくなかった。
そんな彼と過ごす時間に意味を見出だせなくなった私は、かつて、一度「この関係、もうやめにしないか」といったようなことを言ったことがある。
だが彼はそれを受け入れず。
頷かなかっただけでなく、怒りを爆発させながら非常に攻撃的な言葉を発し、私が二度と意見を言えないようにしてきた。
ただ、彼のどうしようもない行動はそれからも続き、改善される様子は一切なし。
なので私は嫌われるために頑張ってみた。
敢えて嫌われる行動を取る、というのは、簡単なことではなかった。自分がしないようなことをしなくてはならないのでいろんな意味で難易度が高い。それに、そもそも、嫌われる行動そのものを考えるのも大変なのだ。
――だが、その努力の結果が実る日がついにやって来た。
「お前クズすぎだろ! 婚約、破棄な! お前みたいな女と生きていくとか絶対無理だわ。だからここまでな! ばいばい!」
アンティーボウはそう言って私を切り捨てた。
……ああ、ついに、ついにこの時が。
彼から婚約破棄という言葉を聞けた時はとてつもなく嬉しかった。
心躍るの極み、みたいな感じで。
身体中に歓喜がみなぎるかのような幸福感がそこにはあった。
これでもう、彼に振り回されることはない。
それがこんなにも嬉しいなんて……予想はしていたが、予想以上だ。
◆
あれから三年。
私と彼のその後は真逆のようなものとなった。
私は、婚約破棄されたために生まれた時間を使って清掃ボランティアを始めたのだが、そこで知り合った青年と親しくなり結婚した。
最初に話した時から印象は悪くはなかった。けれどもその時はあくまで知り合いと捉えていて。これからも楽しく話せればいいな、くらいにしか考えていなかった。ただ、共に清掃を続ける中で、彼の色々な面が見えてきて。短絡的だと笑われてしまうかもしれないけれど、一緒にいることで特別な感情が芽生えた。
一方、アンティーボウはというと、あの後別の女性と婚約するもその女性がとてつもなくわがままで高圧的な人物だったらしく、今彼は妻となったその女性に虐げられながら奴隷のような生活をしているらしい。
そしてそれは一生続く。
人はそう簡単に変わらない、だから、その女性はきっとこれからも変わらずそういう性格だろう。
どうしようもない人だが、その人を妻としてしまったのだ。彼女のわがままから解放される日など訪れはしない。いつか寿命を迎えたら、といったことなら話は別だが。もしそんな日が来るとしても、それはきっとずっと先の話で。すぐに解放される道、自由を得られる道は、アンティーボウには存在しない。
◆終わり◆




