第5話 エロまんが家にヒロインは難しい②
〝あ。〟先生。
見た目は幼いが俺も掲載しているエロまんが雑誌の創刊号から活動している大御所。
ペンネームを聞いたときは自分の目を疑ったほどだ。
大御所だけに緊縛属性で劇画タッチを得意としている。正直、シワシワのおじいちゃんをイメージしていた。
ジシバリやアイビーなど恐らくは『束縛』の花言葉を関しているものの刺繍がされた黒い和服。
赤い帯。その服で彼女の髪色の白が映える。
身長と顔(または胸の小ささ)のせいで背伸びしている子供のような印象を受ける。
「小僧はなぜ、この無人島探索に参加したんじゃ?」
「俺の意思はない。編集長になかば無理やりさ」
「うむ。この無人島に入れるのは〝エロまんが家のみ〟。うちの出版社が独占したいはずじゃから選択肢も少ない、しかも編成のほとんどが女子エロまんが家ときておる。ろくでもない男エロまんが家を参加させたらそれこそどこぞの乱交無人島になりかねん。小僧は編集長に信用されておるのだな」
あのドS編集長がどう思ってるのかは知らん。
むしろ「ヘタレだからなにも起こらないはず」なんて思われていそうだ。
「エロまんが家ってのはな。自分の作品に精力を注ぐのにそれこそ精一杯なんだ。現実のエロに割く容量はないんだよ」
「よく言った!」
気に入ったと言わんばかりに豪快に笑う。
当然のことを言っただけなのに、どうしてこんなにも喜ばれるのだろうか。
「それにしても疑問に思ったんだが、幼女先生はどうして緊縛属性のエロまんがを描いているんだ? しかも全員熟女だし」
「緊縛されている美女を描くのが好き以外理由はあるまい。縄に縛られる肉は良い」
「そういうことじゃなくて、なんでぺったん属性じゃないのかって話で」
「……はて?」
「合法な参考資料がちゃんとあるのに、もったいないなと思ったんだ」
「こ、小僧ッ! ワシの関心を返せ」
顔を真っ赤にさせて腹を殴られた。
年上として振舞っている彼女が急に慌てだしたのを見て、「あ、やばい。失言した」と思う。
「ごめん。セクハラの類になったのなら申し訳ない。……ただやましい気持ちは一切ないんだ。純粋にエロまんがの教材があることがうらやましいなと思ってしまって」
待て、失言の重ね塗りか?
しかし彼女の納得したような表情を見るに言いたいことは伝わったようだ。
「そんなまっすぐな瞳で常識が全くないことを言われたのは初めてじゃ。小僧だって竿役のモデルが自分のアレで出来るから羨ましいなんて言われたら困るじゃろう」
「困るも何も……うん、まあ……実際」
「………………う、うむ。そうか」
口をきゅっとさせて黙り込んでしまった。
エロまんが家は下ネタへの耐性があるとばかり思っていたがそういうわけではないのだろうか。
これでは完全に事案である。
普通、耐性あるよね。エロまんが家なんだもの。
さんぽ先生が正常で、このあ。先生の方が異端のような気がする。
「下ネタへの耐性がない?」
「そ、そんなわけがなかろう。ワシは大御所じゃ。口にするにも憚られるようなえろえろ展開は腐るように描いてきておる! ……ただ現実の異性とこういった会話をするのが初めてなだけじゃ」
見くびるなと言わんばかりに凹凸のない胸を張る。
編集長が言っていたコトは本当のように思えてきた、長年エロまんがを描き続けてきてはいるが缶詰生活でも強いられて来たのか異性への耐性がない。
「男性はそういうものじゃろ?」と言わんばかりの態度も長年の想像力の賜物なのかもしれない。
俺への警戒心も納得がいく。
「約束しよう。俺は決して幼女先生の事をえっちな目で見ないことを。もともとそっちの気はないんだ。決して君の成長の止まった身体に興味はない」
「ほーん。そうきたか小僧。さぞかしワシの堪忍袋の緒を切らすのが好きらしい」
「怒らせるつもりはなかったんだが」
睨みつけられてしまった。
小さな声でなにか言ってるものだから顔を近づけると、襟元を引かれてしまった。
「知っておるか? 日本男児はロ●コンが多いと聞く。ワシの事が喉から手が出るほど求めるような体にしてやろう。だが指一本でも触れてみよ。事案を装ってムショ行きじゃ」
「やだなぁ、ここは無人島だぞ。どこに警察が」
「口の減らん小僧じゃな」
〝ぺちんっ〟。
おでこにデコピンをもらった。
下ネタ耐性がないロリババア系ヒロイン。




