第11話 エロまんがはフィクションですか
「これってありえる大きさか?」
「ほんとエロまんがみたいな身体してるよね」
「私もそれなりに大きい自覚はありますが、ここまでとなると豊胸手術して良そうですよね。……個人的には無頼漢に揉みしだかれて大きくなったって考えると、ヌけますね」
「うむ。緊縛したいのう」
まるでなんらかの品評会かのように、俺の部屋のベッドに横たわった女性をまじまじと眺める。
なんだか存在自体がアダルトコンテンツのような危うさがある。
女性すぎる身体に比べると顔はやや凛々しいというか大きな傷があるせいで気が強そうだ。
俺たちの視線が不快だったのが「ん」と声を漏らして、まぶたを開いた。
コンマ数秒、状況判断するのに固まりはしたものの、すぐに警戒心が芽生えたのか眉間にしわを寄せて戦闘態勢に入る。拳がぎぎぎっとなっているところを見るに素人ではなさそうだ。
「お主、なにものじゃ?」
ししょーが「先達者が若者を守らねば」の精神で俺たちの前に立つ。
しかし見た目のせいで頼りない。
子供を盾にしているようで心が痛むほどだ。
「同じ出版社のエロまんが家ってわけでもないよね。ペンだこもないわけだし」
「ここの先住民……でもありませんよね。衣服が文明的ですから。トランシーバーなどを持っていないということはおひとりですか?」
質問攻めだ。
口が堅そうな彼女は余計に肩が力む。
「やれやれ」と俺は間に入る。
「君は俺に『助けてくれ』と言ったんだ。こっちには敵意はない。むしろ君に興味深々なんだ。名前と経緯くらい教えてくれてもいいんじゃないか」
彼女はこちらを眺める。
赤い髪、綺麗な琥珀色の瞳、大っっっきなおっぱい。
触った感覚が脳裏に過り手汗が止まらなくなる。
「……ハウパー・G・グンニル」
「なんて卑猥な名前じゃ」
いよいよ末期なのかここにいる全員がエロ単語が思い浮かぶ。
悪いのはそんなこと思いつく我々です。ごめんなさい。
こちらもペンネームを名乗る。
当然のことながら「変な名前だな」と言われてしまった。
「それで君はどうしてこの島に?」
「この無人島が歌川珍宝のエロまんが島だからに決まってるじゃねぇか」
「なるほど。お主もうちの出版社に騙されたクチかの。服装を見るにきっとトレジャーハンターじゃろ」
〝トレジャーハンター〟。
金儲けを目的とした宝探しの冒険家。
ロマンを追い求めているというか、賊のような下劣な奴らばかりだと聞く。
宝の為なら仲間を裏切るのは当然。
「ハッ、そうだ。結構名の知れたトレジャーハンターなんだぜ。テメェらエロまんが家に宝探しなんか出来っこねぇ。家に帰ってしこしこエロまんが家描いてろや」
なんかすごい嫌み言われている気がするが話すたびにおっぱいが揺れるもんだからそれどころじゃない。なにこのおっぱい、生き物なの? すっごくばいんばいんしてる。
「でも残念だけど。ここって歌川珍宝のエロまんが島じゃないと思うんだよね」
「はぁ?」
「この丸太家がある時点でお分かりでしょう。この島はうちの出版社が用意した遅筆エロまんが家を缶詰にするのを目的に用意された場所です。だからお宝なんてここにはないんですよ」
「この島が何の変哲もないただの島って言いてぇのか?」
怒るのも無理はない。
宝探しに来てこんな結末なら冷めきってしまう。拍子抜け。
なんの成果もないまま帰らなければならないのだ。
「おい、そこの男——なにキョトンとしてんだ。テメェしかいねぇだろ」
一応レオンも男なのだが、俺に指差している。
「随分とオレの胸が気になるようだからひと揉みさせてやるよ」
「いや、一度揉みしだいたので大丈夫だ」
「本当に正直なバカ弟子じゃ」
「なんでエロまんが展開フラグのセリフをそうも簡単に流せるんですか! 揉みまくってそのまま「ちょ、もういいだろ」「やめ」でケダモノセッ——」
暴走するさんぽ先生をレオンが止める。
ありがとう。そのままソイツの発言権を奪って欲しい。
「ならわかんだろ。このバカでかい胸がどんな感触か。マジモンの女のそれだ」
「他を触ったことがないから言ってる意味が……」
「もちろん下もそんなもんだ。オレは生粋のオス。なのにこんな肩のこるようなもんをぶら下げてる。全部この島のせいだ」
「百合の攻めって話?」
「最近若者がよく言っておる多様性ってやつじゃろ」
「そもそもエロまんがって業界事態が多様性じゃない?」
「それな」
「話の通じねぇ奴らだな。動く石造に襲われて変な液体をかけられたら女に身体にされちまったんだよ。ここはあのエロまんが島で間違いねぇ!!」
動く石造。変な液体。女の身体に。
え……それなんてエロまんが?




