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第10話 エロまんがの光と闇

 善と悪、光と闇、天使と悪魔。

 どんなものにも対照的な存在はある。

 人間のように二面性を兼ね備えていることだってあるが、ほとんどがそれらは共存せず対立関係にあると思う。


 それこそ純愛(らぶえっち)NTR(ネトラレ)

 決して共存しない二属性のエロまんが。

 俺<ばなな☆ちっぷす>と彼女<さんぽぱんぱん丸>の作品への思想は決して共有は出来ない。

 おそらく、いや間違いなしに。


「お、小腹でもすいたか?」


 朝食を済ませたはずだがキッチンでエプロン姿のさんぽ先生。

 巨乳のせいで用意されたエプロンのサイズが合わないからか後ろで結べず、ひらひらとしている。


「小麦粉で〝ローション〟を作っていました」


 髪をかき上げて、まるでレモネードでもこしらえたかのような清楚的笑顔でそう断言した。(セリフがなけりゃ超絶美女ヒロインなんだけどな……)


「ネットが繋がっているのでSNSだとかで救助依頼を出そうかとも思ったのですが、投稿できませんでした。電話もこちらからは出来ないみたいですから受信は出来ても送信は不可、と考えるべきでしょう」


「それとローションになんの関係が?」


「なんだかムラムラしてしまって。無人島で男女が4人、なにも起きないはずもなく。下準備というわけです」


「なにも起きやしない。ローションかき混ぜるのやめろ」


「初めて作ってみたんですけど、ちゃんとしています。ほら、触ってみてください」


 レンチンされた茶碗の中に白いとろとろ。

 これはなかなかに……()()


 右手の人差し指と中指で触れる。

 清楚系美女に差し出された明らかに大人向けな液体に触れるのはなんだか背徳感がやばい。

 粘り気があり、糸を引く。


「しかし持続性は市販のものよりないですね。小麦粉水なので結構すぐに乾燥してしまいます。プレイ中は注ぎ足し必須ですね!」


「解説しないでいい」


 普通ならば「なにをバカなことをやっているんだ」と思ってしまうところだが。

 俺たちはエロまんが家だ。

 こういう彼女のような変態を勤勉と定義されるのだろう。


 実際、俺もこの小麦粉ローションは有益な情報で素直に感心してしまう。

 自分のエロまんがで扱いたいくらいだ。


「さんぽ先生、君に聞きたいことがあるんだが」


「ふたりから話は聞いています。私にとっての〝エロい〟とはなにかですよね」


「ああ」


「それより『レオン』や『ししょー』みたいに親しみやすい愛称をくださいよ。ペンネーム+先生のままだと私だけ距離感があるみたいじゃないですか」


「さんぽ先生」


「距離感あるんですね!?」


 涙目で驚かれた。

 だって貞操の危険を感じるしNTR(ネトラレ)狂人だし、清楚系変態だし。

 『さんぽ先生』という呼び方がしっくりくるのだ。


「いーですよー。私のほうから愛称で呼んじゃうんですから。こっちから距離感を狭めます。うーん、ばなな☆ちっぷす。——逢坂(あいさか) (めぐる)クン」


「……な」


 ホラーである。

 なぜ俺の本名を知っているのか。

 開始10話にして主人公の本名が提示された。国民的アニメのジャ●子のように同姓同名の人がいじめられないようにする配慮なのかと思われたが、どうやら違うらしい。


「どこで知った?」


「ふふん、初歩的なことですよ。単純に部屋に忍び込んで免許証を確認しました」


 ドヤ顔で宣言。こいつが男だったら顔面にストレートを入れている。

 探偵みたいな口調でメンヘラストーカーの奇行を吐露した。

 というかレオンしかり俺の部屋に忍び込まれすぎていないか。


「私は名取(なとり) 麗華(れいか)です。これでおあいこですね」


 耳元でささやかれる。

 ふわっといい香りがした。


 だが決して、俺は彼女の部屋に忍び込んではいないのでおあいこではない。

 お巡りさんこの人です。


「さんぽ先生。とにかく教えてくれ」


「むむ。頑なですね」


 ぷくっとリスみたいにほっぺたを膨らませる。


「エロまんがは液体とち●ぽです。それをいかにリアルに描くか。肌をつたう汗、過剰とも思えるほどの量の精●。綺麗なものが汚されていくほどの芸術はありません。相手役は汚いおじさんかチャラ男にするべきです」


「すまん。そもそも属性が違った」


 表現方法自体違うな。

 俺の場合、いかに綺麗に繊細に描くかだ。

 竿役だって情報量は少なく清潔感のあるイケメンかモブ顔がふさわしい。


NTR(ネトラレ)は良いですよ! モラルもなければ限界がない。尊厳の破壊、それゆえの背徳。俺が先に好きだった───」


 さんぽ先生のエンジンがかかりだし、止めることはほぼ不可能になりそうな瞬間。

 扉が強くたたかれる。

 俺たち4人は全員丸太家(ログハウス)の中にいる。


 無人島と聞かされていた。

 外に誰かいる。


「出版社の人間だろうか?」


「き、気を付けてくださいね」


 緊張しながら扉を開ける。

 そこには傷だらけで服がぼろぼろ、巨乳を超えた爆乳の赤髪女性。

 野蛮そうな表情で顔に大きな傷がある。


「た……すけて……くれ」


 力尽きて、俺の腕に倒れこむ。

 爆乳が手からこぼれた。……柔らかすぎて一瞬意識が遠のいた。

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