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 「(オウ)妃、お会いできて嬉しいですわ」

なぜ。なぜ、こうなった。華栄(カエイ)に嫁いできてから早一週間。私は今、豊満な胸の美女と二人きりでお茶会中だ。彼女は華栄の属国・冥蘭(メイラン)の王女、凜空(リンクゥ)。年は先頃二十歳になったばかりの正に花の盛り。後宮内では雲雀(ヒバリ)妃と呼ばれている。妃同士が茶会をすることに違和感を覚えているのではない。まだ後宮に入って日の浅い、幼い妃の前に谷間全開で乳首が見えそうな露出の多すぎる服を着てくるのはやめてくれというだけの話だ。別に皇帝との閨でその格好をするのは良い。でも、我、幼い妃なり。純真無垢な妃なり。私の貧相な胸を嘲るような格好はしないでほしい。そんな考えは顔に出さず、私はにこやかな笑みを浮かべる。

「ええ、私もですわ、雲雀妃」

やっぱり目が警戒してる。表面上は笑って取り繕っても、元皇女の私は欺けない。そんな警戒心剥き出しの態度じゃあ、私の実家への手紙でこの国が大きな輸入路を絶たれるかもしれないのに。それともう一度言おう。その衣装やめて。

「鶯妃は、実に美しい御髪(おぐし)をお持ちですね」

凜空に言葉に私は麗麗(リャウリャウ)に丁寧に結ってもらった髪に意識を向ける。頭の中央より少しだけ上の部分に結われた大きな団子は大輪の薔薇のような形で、それ以外の髪はそのまま下ろしている。団子には薔薇の葉を表現するかの如く葉の形をした濃い桃色の地に金色の縁取りがされた簪が二本挿されている。

「お褒めに預かり光栄ですわ。かく言う雲雀妃も、それはそれは丁寧におめかしをなさって……」

私は微笑みながら毒を吐く。上っ面だけの軽薄な笑みには気付いていますよ、という思いを込めて嫌みを言ったことを悟ったのか、彼女は怒りで顔を真っ赤にした。

「え、ええ。それはどうも、ありがとう。わたし、鶯妃の母国の北林(ホクリン)の政治に興味があるのですわ。少しで良いから、教えていただけないかしら」

まったく。どこに自国の内情を他国の妃にばらす馬鹿な為政者がいる。そんなことをする人間がいればこの大陸中の国は全部とっくに地図から消えてる。でもここでやんわり断る方法は見つからないため、笑顔で嘘を言おう!

「ええ、我が国の政治は特殊です。雪国のため政府の人間が平民の雪かきを手伝ったりして、人々の信頼を集めていますわ」

「まあ、素晴らしいことですわね。そのような国で、わたしも行ってみたいわ。ま、そんなことを言っても妃で有る限り実現には至りませんけど。それを考えると鶯妃、あなたはかなり恵まれているのですよ」

はいはい。旅行をすることができて羨む体で結局は他国の人間なのだからでしゃばるなと。そんなの私が気にするわけない。というか今の政治の情報信じてる?そんな政治してたら北林は終わる。第一、気位の高いうちの国の高官たちが平民の手伝いをするわけがない。高官ではなく下位の武官が遠征に行って、その地方の人々を助ける。ちなみにその案件は私が父上に提案したら頼りにしてる風な態度で資料の作成や人選などを丸投げされたのでよく覚えているし根に持ってもいる。結果的に良いようになっているので父上が私に頼んだことは正解だと言えるが、丸投げされたこちらは異常に多い勉強と時間を切り盛りしながら仕事をしたせいで一週間ほとんど一睡もできずに終わった。私は当時九歳だった。我ながらよくやったと言える。自信を持って。その後は結局私が余裕で皮肉を返せる会話を繰り返して、茶会はお開きになった。最後、凜空は悔しそうな顔をして帰っていった。

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