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S~基本的にチャラい奴の話ですけど、

「人生は与えられた手札で勝負するしかない……。

そう言われるが、そもそも与えられた手札が平凡で扱いに困る手ばっかりならどうするんだ。

ゲームと違い、捨てて、取り替えるって選択はないんだぞ。

なぁ、お前ならどうする?」


そう俺は自問自答していた。


いろんな答えが浮かんだ。

リセットとか、

クソゲーと言って諦めるとか、

あとは……。

まぁそんな事はどうでもいい。


俺は高校を中退して、知り合いの紹介でD工務店に入った。

会社のメンツはB社長とR専務とW部長、事務員Fとあと同い年のK。


中小零細企業ってやつだ。

まぁ退屈な会社だよ。

誰もサーフィンもスノボもスケボーもやっていない。

なんつーか、普通の人ばっか。


俺はスポーツが得意だった。

ほら小学校ってさ。

スポーツが得意なだけで割とモテるだろ。

それで気分よかったんだけど、中学入いると、俺よりスポーツ上手い奴なんかゴロゴロいて、目立たなくなった。

勉強頑張ろうかって、ちょっとやったんだけど、小学校の頃のツケが来て、まったくついていけない。

じゃあヤンキーにでも……

って思ったら、自分より喧嘩強い奴ばっかで、ここでも落ちこぼれた。


顔も多少いい。

スポーツも多少できる。

女の子と気軽に話せる。


俺の手札ってコレだけってさ。

15の時気がついた。

そして受験勉強して受かった高校を中退して、今D工務店。


サーフィンとか、スケボーとか、スノボやったらモテるって思って始めてみた。

割とモテた。

ただ……長くは続かない。

いつも別れ際に言われるのが

「中身薄い」

意味わかんねえだろ。

中身薄い女に言われるんだぜ。

それで

「お前に言われたくはねぇよ」

ってキレてオシマイ。

これで35人


まぁモテてはいるんだから、それでいいんだけどな。


それで中身薄いってなんだよ。

って……

何度も考えた。


そしたら本を読んでないから……

って答えがあった。


たしかに本とか、教科書とかマニュアルくらいしか読んだ事がなかった。


なんか小説とか読むと他人の人生が知れて深みが出るって書いてあった。


他人の人生なんか……

みんな興味ある?

俺は全然興味なかった。


今日の波は?

かわいい子いるかな?

飯どこで食おうか?

そんなものだった。


でも……

35人に振られて、

薄いって言われるくらいだから、

よっぽどかなって思って小説投稿サイト?で読んで見た。


なんか異世界転生ものって奴。

売れないお笑い芸人が笑わない女王を笑わせるっていう作品なんだけど、笑いとお笑い芸人の苦悩がガンガン来て。

ヤバかった。


それで始めてこういう人は、こんな風に考えるんだなって思った。


それでさ。元カノとかのやり取り考えてたんだけど、あんまり何も考えて付き合ってなかったんだよな。


今日はヤレル日、やれない日とか、こないだ奢ったから、今日はワリカンとか、誕プレなににしよっかくらい。


昨日の様子おかしかったな、なにかあったんかな。

そう言うのは考えたこともなかった。

わからないしな。

でも本を読んでると、実際その通りかどうかはわからないけど、登場人物の心理みたいなのは、ちょっとだけわかるようになった。



だから最近はいい波が来てない時は、小説を読んでる。


目的がモテのためなんだから、ちょっとダサいかもだけどな。


同い年の奴がラノベとか読んでそうだから、交流して、そう言う会話もしてみたいんだけど、なんかちょっとハズい。


見た目がこうだからな。


そういえば新しい彼女ができた。

とっても性格の良い子。

サーフィンしている時、海をボーっと見てる女の子がいたので声をかけた。

歳は3つ下。

髪の毛はロングで黒髪。

色は白くて清楚な感じ。

良いところのお嬢さんかなって、始めは思った。

話を聞くと、そうでもないらしい。

俺と同じでシングルマザーみたい。

結構苦労したんだって。

すげえ気持ちがわかった。


話してると、彼女のお腹がなったから、

「飯食いに行く?おごるよ」

って言ったら、ついてきた。


近くに牛丼屋しかなかったから、

「ごめん牛丼屋なんだけど」

って言ったら、

「大丈夫。うれしい」

って言った。


牛丼の並みをペロっと食べた。

その後、追加でプリンを2つ食べてた。

よっぽどお腹空いてたんだろうと思って、聞いたら。

「しばらく食べてない」

って言ってた。


俺はてっきりダイエットかなと思ったんだけど、

なんか違ったみたい。


「家まで送ろうか?」

って聞くと、

「家ないの。今……」

って答えたから、

「俺、母親と住んでるんだけど、家来る」

って聞いたら

「いいの?迷惑じゃない」

って言ってきた。

俺は一応、母親に連絡して、OKをもらった。

彼女に

「OKもらったから大丈夫」

って言ったら、喜んでついてきた。


母親は介護職でその日は夜勤だった。

お風呂を入れて、

「入っていいよ」

って言ってあげた。


お風呂から上がってきて、来た時の服装のままだったから、

「着替えないの?」

って聞くと、

「洗濯していないから」

そう答えた。


彼女はキャリーバッグを持っていた。

そこには、ぐちゃぐしゃになった着替えが無造作に、詰め込まれていた。


俺は洗濯機で彼女の服を洗ってあげた。

母親が忙しいから、洗濯は自分でしていた。

だから彼女の服も別に苦ではなかった。

「ごめん。男の俺が洗ってもだいじょうぶ。恥ずかしくない」

って聞くと、

「だいじょうぶ。私そういうの苦手だから」

そう笑った。


洗濯機のスイッチを入れ、俺も風呂に入る。

お風呂の湯が薄く汚れていた。


あの子……。

お風呂何日も入ってなかったんだ。

そう思った。


お風呂から上がると、

彼女は俺に抱きついてきた。

「やっていいよ」

そう言った。

その手は小刻みに震えていた。

「なんで」

そう聞くと、

「ご飯食べさせてもらったし、風呂も入れてくれたし、洗濯もしてくれたし、お礼……。

お金ないから……

私頭も悪いし……」

そう言った。

…。


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