第33話 始まる秩序の崩壊と究極的融合【アルティメイト・メタモルフォーゼ】
20XX年。全国の高校において、能力解放という科目が選択できるようになり、五人に一人という割合で能力を使えるものが現れるようになったのだが…
その能力自体を悪用し心奏たちが住む世界をひっくり返そうとする組織が現れる。
そして、その組織に立ち向かう心に誓い決心した。心奏と心湊とその仲間たちとの世界平和と存亡を賭けた大きな戦いが今、幕を開けようとしていた。
再び現れた、黒い靄の存在。
その正体は、まさかのもう一つ世界・・・所謂、パラレルワールドと呼ばれている世界線の心奏だった。
現実世界の心奏が、ピンチに陥ってしまった事によって、この現実世界へやって来たのだ。
そして、パラレルワールドからやって来た心奏は、現実世界の心奏に治癒魔法を施して、致命傷を負っていた現実世界の心奏を、復活させてしまうのだが・・・
「あたしは・・・。本来であれば、今居る世界には干渉してはならない存在。つまりは、存在してはならない禁忌。それが今のあたし。」
パラレルワールドの心奏は、哀愁漂う悲しげな表情でボソッと呟いた。
この世界・・・いや、この世界の宇宙から観測すれば、今起きている事象は宇宙秩序をも乱しかねないものであったのだ。
本来、衝突しないモノ同士が衝突したりはたまた、出会うことの無いモノ同士が出会ってしまうこと自体が、禁忌行為なのだ。
しかも今回の事案に関して、言ってしまうとパラレルワールドの住人であるもう一人の心奏は、本来であれば現実世界の心奏と出会うことがないのだが・・・。
今現在、館の外で繰り広げられている高次元の戦いのエネルギーが、この世界の創造の範疇を遥かに超えており尚且つ、高エネルギー同士が幾度なく衝突を繰り返してしまっている事が、原因で空間そのものに歪みが発生して、すれ違うことの無い世界同士の境界線を消してしまっているのだ。
そして、その影響はパラレルワールドの住人である心奏にも及んでおり、彼女は数回この世界へ飛ばされていたのだ。
その為、以前に姉のカトレアが目撃していた心奏らしきものと、神恋島に出現した黒き靄の正体が、今こうしてパラレルワールドの住人であるもう一人心奏であるという結論に辿り着いたのだが...
現実世界の心奏は、パラレルワールドの心奏とは違って元から未来視を使えたり、ある日を境に性別が変わってしまう未知の症状...突発性性転換症候群を引き起こしてしまう特異体質ではないのに対して・・・。
パラレルワールドの心奏は、能力暴走や能力燃え尽き症候群に陥ったり、能力制御装置を使っている。
そして、現実世界の心奏とパラレルワールドの心奏の違いは、特異体質であり突発性性転換症候群を引き起こしており、現在は女性として第二の人生を送っているという点だ。
ただ、どちらの世界の心奏も一度は、能力が暴走したり能力燃え尽き症候群になったりと、共通している部分がある。
だがしかし...今は、館の外で起きている高次元の戦いをなるべく早めに内に、終止符を打たせなければいけないという高難易度の任務が発生していた。
宇宙の秩序が乱れ始めてしまった今、様々な不可解じみた現象が世界線はおろか、生と死の境界線すらも乱しえないという混沌とした状況下に、陥りかけている。
一刻も早く烏丸との戦いを終わらせたいというのもあるのだが・・・。
現実世界の心奏は、ある一つの悩みを抱えていたのだ。
それは・・・今の力量では、到底烏丸の力量の足元にも及ばないというものだ。
だが・・・そんな現実世界の心奏の悩みをたったひとつの手段で、解決できるとパラレルワールドの心奏が口に出した。
「この状況を打破するには、究極的融合を使うしかない。」
究極的融合・・・現実世界の心奏とパラレルワールドの心奏の力を一つの肉体に集結させるというものだ。
「だけど・・・究極的融合にも弱点がある。それは、使用後に七割の確率で、突発性性転換症候群を引き起こしてしまう。そしてもう一つは、魔力と共に精神力の消耗が激しいという点。そんな条件を伴うけど、受け入れるの?現実世界の心奏?」
現実世界の心奏は、悩むこと無く返答した。
「受け入れるも何も、その究極的融合を使わないと烏丸に、勝てないと言うのなら最初から受け入れると決めていたよ。貴女の言っていた絶望と憎悪に塗れた世界を現実世界でも、作りたくからね。」
思いの外、悩むどころか即決で、条件を受け入れた現実世界の心奏を見たパラレルワールドの心奏は、少々驚きはしたが、何処かそうなるだろうなという予測を立てていたかの様に、あっさりと受け入れていたのだ。
そして、二人の心奏は館の中心まで歩いてから、究極的融合を行う為の最終調整に入ることに・・・。
その頃、時を同じくして館の外では、烏丸VS神翔&レンによる高次元の戦いが続けていた。
魔力消耗が激しいはずの高次元の戦いは、早くも開始二時間は経過しようとしていた。
「やるではないか…。馬鹿息子。そして、水瀬レンと言ったかな?貴様も中々の強者だ。此処まで、やつがれを楽しませてくれるとはな。一体・・・何十年ぶりだろうな。」
「言ってくれるじゃないか?親父。だが・・・もう諦めたらどうだ?いい加減その老体には、負担が掛かるんじゃないか?」
神翔は、烏丸の身体を思って諦める様に、説得を持ち掛けるのだが…。
その言葉が気に入らなかったのか少々、怒りを露わにした。
「ほう。言ってくれるな馬鹿息子よ。では、仕方あるまい…。魅せてやろう。やつがれの十割…百パーセントの力というものをな。その眼に焼き付けとくが良い。馬鹿息子よ!!」
烏丸は、神格化を解放した二人を前に全力すら出していなかったと言うのだ。
流石に、神格化の状態の二人でも烏丸の発言に、警戒態勢を取ってしまう。
烏丸は、グッと拳を握り魔力を高粘度で高めて力を解放させていく。
それに伴い、空模様も混沌を極めて天変地異が今にも起きそうな雰囲気を醸し出している。
果たして、烏丸の百パーセントの力とは一体・・・
そして、二人の心奏の力を合わせる究極的融合の力量の程は…。
心奏は、ひとつの事件をきっかけに、謎の人物から狙われる様になってしまう。
そして、心奏自身は、稀有な存在として扱われていくことになるのであった。




