第32話 激しさを増す高次元の戦いと再び現れる黒き靄の存在。
20XX年。全国の高校において、能力解放という科目が選択できるようになり、五人に一人という割合で能力を使えるものが現れるようになったのだが…
その能力自体を悪用し心奏たちが住む世界をひっくり返そうとする組織が現れる。
そして、その組織に立ち向かう心に誓い決心した。心奏と心湊とその仲間たちとの世界平和と存亡を賭けた大きな戦いが今、幕を開けようとしていた。
ラグナロク中閉じ込められた妹の心湊を救出した心奏。
だがしかし、そんな嬉しみに浸っている時間もそう長くは続かなかった。
烏丸の反感を買ってしまった心奏は、父の神翔に迫った危機を回避する為に、自分の身を犠牲にして烏丸からの攻撃を受けてしまい、結果的に心臓を貫かれてしまった。
そして...父の神翔の下に、思わぬ助っ人が登場した。
それは、心奏の古き良き友人である水瀬レンだ。
彼は、何か嫌な予感がするという感覚で、烏丸の拠点があるこの極地までやって来ていたのだ。
そしてついに、レンは心奏がやられてしまったという状況を見てしまい、心奏に対する自身の想いを胸に、神の名を持つ能力を解放した。
レンの能力である冥界の王・・・
父である神翔も全知全能の神の能力を解放した。
そして、二人の神の名の能力は限界を超え、神格化という境地に到達した。
神々の領域に到達した二人と世界を支配して唯一神になろうとしている者の頂上決戦が、今この瞬間その火蓋が切られた。
「では、行くぞ!神格化の強さとやらをやつがれに魅せてみよ!」
烏丸の言い放った言葉を合図に、三人が衝突する。
レンは、武器であるバイデントを・・・
神翔は、神の雷を纏った剣、ゼウスソードを召喚した。
一方、烏丸は芭蕉扇を懐から取り出して、自身の魔力を注ぐ込む。
そして、余裕な笑みを浮かべた烏丸は、神の名の能力を解放した二人を前にしても、全くと言って良いほどに、冷静さを欠く事無く場の雰囲気すらも、醍醐味として扱っていた。
「こんな状況なのに、アイツ...満喫してやがる。何て奴よ・・・御堂烏丸という人間は。」
レンの口から思わず、愚痴が零れる。
そして、三人は再び正面から衝突するのだが・・・
あまりの高次元の強さ故か、空の色は鉛色へ変化し大地は轟々と音を立てて蠢き、時折雷鳴が鳴り響きまるで終焉の時に向かって時が動いていると、言っても過言ではない程に周辺の様子がガラリと様変わりしていた。
三人が、高次元の戦いを繰り広げている間、地上では妹の心湊が兄である心奏を抱きかかえて、マリンと輝夜の居る所へ向かい合流して、烏丸の館の中へ一旦避難する事に・・・
「"かなちゃん"」
幼馴染の三雲マリンが、心奏の手を握りながらボソッと呟く。
「心奏さんは、この様な事で命を落とす訳がありませんよね?」
心奏とマリンの友人である千歳輝夜が、俯きながらボソッと呟く。
完全に心臓を貫かれてしまっており、脈拍も鼓動もない。
見れば一目で解る・・・
心奏は、もう帰って来ない存在だということが…。
妹の心湊は、兄である心奏を抱きかかえてそっと、祈る様に目を閉じた。
「お願い神様・・・。お兄ちゃんを、私のかけがえのないたった一人のお兄ちゃんを、生き返らせて下さい。大好きなお兄ちゃんにもう一度会わせて下さい。」
妹の心湊が声にならない声で、ひっそりと祈り呟く。
外では、高次元の戦いが収まる気配もなくより一層、激しさを増している。
彼ら三人が衝突する度に、大地は轟々と音を立てて蠢き、一時的に避難している烏丸の館すらも、グラグラと揺らぎ、残り何回衝突による余波の大地の蠢きに耐えられるかという神のみぞ知る世界へ成り果てていた。
だが・・・突然、館の中に魔法陣が展開されて黒き靄が、魔法陣の中から出現する。
「今、助ける。心奏!!」
黒い靄の存在が、心奏に向かい言い放ちゆっくりと揺らめく様に黒い靄が、心奏に近付く。
勿論の事、妹の心湊は当然のことながら警戒して、その場から動こうとするが・・・
「動けない・・・。」
妹の心湊はまるで金縛りにあったかの様に、ピクリとも動けず只々、黒い靄が近付くのを見ていることしかできずにいた。
幼馴染の三雲マリンもその友人である千歳輝夜も、妹の心湊同様にピクリとも動けない状況下に、陥ってしまった。
そして、黒い靄が遂に、心奏の目の前まで来ると徐々に人の形を成して、一人の成人女性の様な姿へ変貌を遂げる。
「貴方をここで死なす訳にはいかないわ。」
突然現れた女性が、心奏に向かい呟くと心奏は眩い光に包まれてしまう。
あまりの眩しさに、目を閉じてしまう三人。
そして、その眩い光は周辺の雑音すらもかき消してしまい、次の瞬間にはドクン…ドクンと心臓が鼓動する音が、聞こえ始めて心奏の胸に開いた穴が、心臓の鼓動が始まると共に少しずつ閉じていく。
やがて心奏の胸に開いた穴が、全て塞がると次に全身に負っていた傷が、一つまた一つと消えて無くなり遂に、閉ざされていた心奏の眼がゆっくりと開く。
「あれっ?僕は、確か・・・。」
心奏が自身の身体を見てボソッと呟く。
すると、心奏の隣にいる女性が、ゆっくりと心奏に語り掛ける。
「貴方は一度人生に幕を閉じました。ですがそれは・・・貴方の選んだ人生ではない。他人の手によって閉ざされてしまった人生。だけどそれを貴方は望んではいない。そう、あの方を倒さなければ歪んだ人生が貴方を待っている。その様な人生を貴方には送って欲しくないから、あたしの力で貴方を呼び起こしました。此処から始まる第二の人生の為に・・・・」
突然姿を現した女性が、心奏に語り掛けて、閉ざされていた鍵をひとつひとつ開けて、心奏の眠っていた力を呼び起こす。
そして、心奏は気が付いたのだ。
今、自分の目の前に居る女性が、かつて姉のカトレアを救っていたことを...
そして、その深くフードを被った下に隠された素顔が、自分そっくり…。
いや、むしろ自分自身そのものだと・・・。
今まさに、出会うはずのないもう一つの世界の自分と今此処で、出会ってしまったと。
だが・・・もう一つの世界の自分は、女性なんだと。
全てが手に取る様に理解できてしまった。
「貴女は、何故僕を助けたの?」
心奏は思わず問いかけてしまった。
だが・・・もう一つ世界の自分は、ゆっくりと語り始めた。
「何故かって?それはね...貴方には、歩んで欲しくないの…。あんな...絶望と憎悪に塗れた世界を…。救いたくても、救えなかった大切な友人を失って欲しくない。だからこそ、貴方の力が必要なの。歪みにゆがんだ絶望と憎悪に塗れた世界を創らせない為にね。」
そして、それ以上は語る事無くもう一つ世界の自分は、会話を切ってしまった。
果たして、心奏はもう一つ世界の自分が言っていた“”歪みにゆがんだ絶望と憎悪に塗れた世界“”の誕生を阻止する事ができるのであろうか。
そして、彼女の言っていた“”歪みにゆがんだ絶望と憎悪に塗れた世界“”というのは一体・・・
心奏は、ひとつの事件をきっかけに、謎の人物から狙われる様になってしまう。
そして、心奏自身は、稀有な存在として扱われていくことになるのであった。




