第29話 崩れ行く思い出と始まる終焉へのカウントダウン!
20XX年。全国の高校において、能力解放という科目が選択できるようになり、五人に一人という割合で能力を使えるものが現れるようになったのだが…
その能力自体を悪用し心奏たちが住む世界をひっくり返そうとする組織が現れる。
そして、その組織に立ち向かう心に誓い決心した。心奏と心湊とその仲間たちとの世界平和と存亡を賭けた大きな戦いが今、幕を開けようとしていた。
心奏は、烏天狗の面を着けた人物と対峙したのだが・・・
その人物の正体がまさかの実の父の神翔であったのだ。
しかし...心奏にはある思惑がありその思惑通りに、父の神翔に行動をして貰っていたのだ。
それは、神翔が心奏と共に私立蕾学園へ向かう途中まで遡る。
心奏は、父の神翔にテレパシーである情報を伝えていたのだが・・・
その内容は、敢えて敵の支配下に堕ちて内部情報を盗み見るという、大胆不敵でとても危険が伴う作戦だ。
勿論の事、父の神翔は心奏からこの作戦を聞かされた時、あまりの衝撃的なものだと理解して一度は、断念しようと内心では思っていたのだが、妹の心湊を攫われてしまっている以上、他の人に犠牲なってもらう訳にはならないと決心して、自らの身を一度烏丸の支配下置くという作戦を決行したのだ。
そして、極地であるこの地で敵という体で、心奏相手取り軽い親子の戦いを繰り広げた。
だがしかし、二人の能力の成長があまりにも、規格外過ぎた為に、業と技の衝突でとても強い地震並みの衝撃を発生させてしまうというイレギュラーが起きてしまった。
そんな親子の戦いから少しばかりの時間が流れ、心奏たちは目的地でもある烏丸の本拠地の目の前までやって来ていた。
烏丸の本拠地である建物は、物凄く大きく私立蕾学園とほぼ同じ敷地面積を有している。
すると、心奏たちが来たのが烏丸に伝わったのか、施錠してある大きな門が動き音を立てて動き、心奏たちは敷地内へ一歩踏み入ると、挨拶代わりに配下を数名召喚されてしまう。
「此奴らも、烏天狗の面を被っているのか・・・」
心奏が思わず心の声を漏らしてしまうのだが、姉のカトレアが心奏の肩をポンと叩き一言。
「此処は、私がやる。」
姉のカトレアは、軽くだけ力を解放して戦闘態勢を取る。
烏丸の配下と思しき数名の人物は、姉のカトレアを取り囲み逃げ道を塞ぐのだが・・・
その様な子供騙しの技は、姉のカトレアにとってはただ単に、怒りの炎を燃やす為の燃料と化してしまう。
そして次の瞬間には、腹を抑えて痛がる烏丸の配下と思しき人物の姿があった。
姉のカトレアは、目にも止まらぬ速さで烏丸の配下の人物の鳩尾に、重い一撃を入れていた。
「何?この程度の力量で、私に挑もうなんて百年早いわ!」
姉のカトレアの叫び声と共に、衝撃波が発生して烏丸の配下と思しき人物たちを巻き込み館の壁面まで吹き飛ばしてしまう。
勿論の事、衝撃波は館の窓ガラスをガタガタと揺らして、館の一部の窓ガラスを割ってしまうのだが・・・
窓ガラスの割れた音で、反応したのか館の方から心奏たちに向けて放たれた言葉が聴こえてくる。
「何奴だ?やつがれの住まいし館に傷を付けた愚か者は…。」
その場に居た皆が、声が聴こえてきた方向に視線を向けるとそこには・・・
烏天狗の面を被った明らかに見かけから解る高圧的なオーラを纏った人物が、姿を現す。
心奏は、誰よりも先にその人物に向かい質問を投げかけていた。
「貴方が・・・僕たちのお爺様であり御堂家の十三代目当主…。御堂烏丸...いや、御堂烏天狗丸。」
高圧的なオーラに軽く冷や汗をかいた心奏が語り掛ける。
すると、烏丸は少しの間を開けて応える。
「如何にも、やつがれは御堂烏丸...烏天狗丸だ。お主が、そこにいる馬鹿息子の子の心奏だな?良くぞ辿り着いた。それだけでも素晴らしき事かな。そして...お主がこれから計画している事もやつがれには・・・お見通しだ。だが・・・辿り着くのが遅かったな。既に、"ラグナロク"は起動済みだ!」
烏丸が話し終わると同時に、ゴゴゴゴゴと地面が揺れだして少しずつ膨大な魔力を持った者が、近付くのを肌でビリビリと感じ取る心奏。
なんと、烏丸は心奏たちが来る少し前に、未知の装置"ラグナロク"を起動していたのだ。
そして...烏丸は自身の野望を打ち明ける。
「やつがれの野望…。それは、この世界の支配だ。そして...教えてやろう。ラグナロクの正体は、孫娘・・・心湊だ!」
烏丸の打ち明けた言葉で、その場にいた神翔を除いたメンバー全員が能力を一気に解放するのだが・・・
烏丸の軽く魔力を解放した時に発生した衝撃波が、その場に居た皆を襲い心奏だけがやっとの思いで立ち上がると・・・
姉のカトレア、幼馴染の三雲マリンと友人である千歳輝夜は、館の壁面まで吹き飛ばされて解放した能力が解除されてしまっていたのだ。
「なんて力だ。あれで軽く魔力を解放しただけだと言うのか・・・」
思わず心奏がボソッと呟くと烏丸は、高笑いして手を叩き心奏へ語り掛ける。
「流石だ。我が一族の名に恥じぬ素晴らしき力。だが・・・その力もいつまで持つかな?」
烏丸の心奏への語り掛けと同時に、館の中からゆっくりと轟々と燃える炎を纏った少女・・・心湊が姿を現す。
「主様。この者たちを消し炭にするのがお望みですか?」
心湊が烏丸に問い、烏丸は声を発する事なく首を縦に振り、館の中へ戻っていくのであった。
館の扉がガチャリと閉まると心湊が、声を上げる。
「我が主様の邪魔をする者は、我が力で消し炭にしてあげる。」
既に心の底まで烏丸に支配された心湊が、自身の魔力を解放するのだが・・・
その眼には、光は宿る事なく閉ざされた闇の様に冷たく心奏を見つめていた。
「心湊!」
兄である心奏が叫ぶのだが、その名を忘れてしまったのかそれとも烏丸に支配されている為か、心奏の言葉に興味を示すことなく淡々と語りだす。
「誰?心湊?笑わせないで…。我が名はラグナロク。この世界に終焉を齎す者だ。そして...主様を唯一神にさせるのが我が使命!」
心奏を含めたその場に居た皆が、絶句して言葉を失ってしまったのだ。
ただそれ以上に、心奏は絶望の淵に立たされてしまう。
今まで紡いできた妹の心湊との思い出が、心奏の脳内を駆け巡り其の楽しかった思い出全てが音を立てて崩れ落ちるのを感覚として伝わって来た心奏は、遂に決心した。
それは・・・自らの手で、目の前に居る妹の心湊だった者を完膚なきまでに、叩きのめすと…。
「君はもう…。僕の妹を葬り去ったも同然の事をした。覚悟しろラグナロク!僕は、君を倒して烏丸の野望を打ち砕く為に、此処まで来たんだ。やるからには、全力でやってやる!」
覚悟の表れの言葉を叫び、心奏は魔力を全解放する。
心奏の魔力が上昇するにしたがい大気を揺らして、まるで数ヶ月前に起きた私立蕾学園をも巻き込んだ事案を彷彿とさせる空震が発生する。
感情が入り混じった涙を心奏の頬を伝い、地面にポツンと落ちると心奏を白く眩い光が包み込む。
果たして、心奏は妹の心湊もといラグナロクを止めることが出来るのであろうか・・・
心奏は、ひとつの事件をきっかけに、謎の人物から狙われる様になってしまう。
そして、心奏自身は、稀有な存在として扱われていくことになるのであった。




