第28話 烏天狗の面の人物VS心奏【かなで】
20XX年。全国の高校において、能力解放という科目が選択できるようになり、五人に一人という割合で能力を使えるものが現れるようになったのだが…
その能力自体を悪用し心奏たちが住む世界をひっくり返そうとする組織が現れる。
そして、その組織に立ち向かう心に誓い決心した。心奏と心湊とその仲間たちとの世界平和と存亡を賭けた大きな戦いが今、幕を開けようとしていた。
心奏たち一行は、私立蕾学園を出発して敵の本拠地である極地へ向けて、心奏の叔父に当たる人物である泊雅樹の操縦するヘリコプターで向かっていた。
私立蕾学園から敵の本拠地がある極地までは、ヘリコプターで約四時間も掛かる。
その間、心奏たちはヘリコプターの中で心身ともに休息を取る為、仮眠室でゆっくりと休んでいた。
心奏の叔父に当たる泊雅樹の所有しているヘリコプターは、軍用機でもある為機内は民間のヘリコプターよりも広く設計されており尚且つ、仮眠室まで付いているという超絶優秀なヘリコプターなのである。
だが、心奏だけは操縦室に残り雅樹の会話相手になり、途中何箇所かで着陸して休憩時間を挟みその間に心奏が休息を取るという流れで、目的地の約半分まで進んで来たのだ。
何故、ヘリコプター移動になったのかと言うと、心奏以外に飛行能力を扱える者が居ないといったごく単純な理由だ。
そして、休憩時間を挟みながら移動する事、約七時間。
心奏たちは敵の本拠地である極地の少し手前まで来ることが出来た。
だがしかし、此処から先は幾ら軍用機でも攻撃を受ければひとたまりもない危険区域になる為、雅樹に心奏が早い段階から訳を話しており、雅樹は少し離れた町で待機する流れとなった。
「遂に、来てしまった…。烏丸の本拠地の近くまで・・・」
心奏は、おもむろに呟いてしまう。
だが、姉のカトレアがビシッと心奏の肩に一喝を入れて心奏の緊張感を和らげる。
「もう。"かな"らしくないわね。やるんでしょ?頂上決戦を」
「勿論。言ったからには、実行なきゃいけない。それに、これ以上現実世界に実害を出したくないからこそ、全身全霊で挑むよ。」
心奏の決意の現れを邪魔するかの様に、心奏たちに向けて不意打ちの攻撃が仕掛けられるのだが・・・
勿論の事、心奏は未来視でその結果を見抜いており、咄嗟の判断で皆が攻撃を回避して怪我一つすることなく済んだ。
そして心奏は、攻撃のされた方角に向けて軽く挨拶代わりに、近くに転がっていた石ころをおもむろに拾い上げた心奏は、腕を鞭の様に使い超高速で石ころを攻撃のされた方角へ投球すると、何かに当たったのか爆発が起こった。
爆発による煙がはれると、そこには烏天狗の面を着けた謎の人物が立っていた。
「ほう。中々に乱雑な挨拶だな。御堂心奏よ。待っていたぞ貴様が此処まで来るのをな!」
烏天狗の面を着けた人物が、心奏に向かい話し掛けるのだが・・・
既にその間に心奏は、烏天狗の面を着けた人物の至近距離まで高速移動しており、烏天狗の面を着けた人物が心奏を視界に捉えて認識した時には、心奏の放った攻撃を真っ正面から諸に喰らい後方へ吹き飛ばされてしまう。
「そちらから不意打ちを仕掛けて来たんだ。これは、そのお返しだ。」
心奏は不敵な笑みを浮かべて烏天狗の面を着けた人物に向けて言い放つ。
だが・・・烏天狗の面を着けた人物は、何かしたのかという雰囲気を醸し出してぽきぽきと関節を鳴らして心奏の方に視線を向けた。
「成程。お相子様ってやつかい?さぁ御堂心奏よ。我のウォーミングアップの手伝いをして貰おうか!」
「そう来るのね。なんでこうも強さばかりを求める奴って"ウォーミングアップを手伝え"って言うのかな?それくらい自分でやっておいて欲しいよ。まぁでも、僕の力の試し処にもなりそうだからやるか…。」
心奏はあまりウォーミングアップには、乗り気ではないものの自身の力を試すべく烏天狗の面を着けた人物の言い分を受け入れる事に・・・
その間に姉のカトレアたちは、心奏の邪魔にならない様に離れた場所に避難しており、遠目から心奏と烏天狗の面を着けた人物の戦いを観戦することになった。
「では、貴様の方から来い!御堂心奏よ。我のボスである烏丸様の力量に適しているか、我が計測してやろう!」
烏天狗の面を着けた人物が、心奏向かい挑発行為を仕向けると、心奏はゆっくりと目を閉じて精神統一を始めた。
だが、この行動を少し気に入らなかったのか、烏天狗の面を着けた人物が、心奏に向かい攻撃を仕掛けるが・・・
心奏は攻撃が自身の目の前まで来るまで微動だにせず、心奏の顔に烏天狗の面を着けた人物が、殴り込みを入れようと振りかざすが、心奏は目を開ける事なくいとも簡単に止めてしまう。
これは偶然だと決めつけた烏天狗の面を着けた人物が、もう一度間髪入れずに心奏に殴り込みをするのだが・・・
その行動も読まれてしまっているかの様に、受け止められてしまい若干動揺を隠せないでいる烏天狗の面を着けた人物。
「心の瞳・・・僕が行き着いた未来視の派生形の業。」
心奏はゆっくりと目を開けて烏天狗の面を着けた人物に向けて話し掛けた。
なんと心奏は、父の神翔も母の早紀も扱える未来視の能力を自己流に使いこなして、視界から入って来る情報ではなく相手の放つオーラや微かな魔力を第六感で察知して、行動に反映させるという業を習得したのだ。
そして、心奏はゆっくりと烏天狗の面を着けた人物に近寄り不敵な笑みを浮かべて呟く。
「ウォーミングアップはもうお終い。此処からは、本気の戦いだ。」
心奏は聖少女の姿になり、烏天狗の面を着けた人物を見つめる。
あまりの心奏の冷静さに度肝抜かれた烏天狗の面を着けた人物は、頬をバシッと叩き気合いを入れてファイティングポーズを取るのだが・・・
先手を打ったのは、勿論の事心奏であった。
心奏は烏天狗の面を着けた人物に、まるで狩りをする狼の如く隙のない攻撃を仕掛ける。
「貴方は先程申し上げた。烏丸様の力量に適しているか計測すると...。そんなものは必要ない。僕は、貴方の相手をしてあげられる程、暇じゃない。一刻も早く妹を返して貰うよ!僕の大切な妹をね!」
心奏は烏天狗の面を着けた人物に向かい本心をありのままぶつけたのだが、そのことがキッカケで烏天狗の面を着けた人物は、握りこぶしに力を目一杯溜めて少しばかりの苛立ちを魅せる。
「言ってくれるじゃないか御堂心奏よ。では見せてやる我の本気を!」
烏天狗の面を着けた人物は、能力を解放して右手を大きく空に向けて伸ばして魔力を溜め始めるのだが...
心奏はその状況下でも、冷静さを欠くことなく烏天狗の面を着けた人物が放とうとしている攻撃を受け止める体制を整える。
「喰らえ!」
烏天狗の面を着けた人物が右手を振りかぶると、巨大な魔力で造られたエナジーボールを心奏目掛けて投げつけるが・・・
心奏は、軽く右手に魔力を溜めて呟く。
「炸裂!!!」
心奏の魔力を貯めた右手が、烏天狗の面を着けた人物が放ったエナジーボールに触れた瞬間、大爆発を引き起こして、周囲の地面を揺らす。
この大爆発の威力が強すぎるがあまりに、遠目から心奏の様子を見ていた姉のカトレアたちでも、まともに立っていられない程に強い揺れを引き起こして、地震に換算すると震度六強程度の揺れが起きてしまっていた。
そして、心奏は間髪入れる間もなく烏天狗の面を着けた人物の顔面に、渾身の一撃を喰らわして後方へ殴り飛ばして、卒倒させる。
少しして烏天狗の面を着けた人物が、起き上がるのだが...
心奏はまるで最初から知っているかの様に、語りだした。
「いい加減、洗脳から醒めてもいいんじゃないかな?父さん?」
起き上がった烏天狗の面を着けた人物が、心奏方を向いた瞬間、着けていた烏天狗の面が真っ二つに割れて、見えた素顔がまさかの・・・失踪を遂げた父の神翔であったのだ。
だが...心奏は動揺を見せることなく聖少女の能力を解いた。
それと同時に、父の神翔も能力を解いてふぅと大きく息を吐いて、地面に座り込み呟き親子の会話が交わされた。
「"かな"。いつ俺だと気が付いた?」
「それ聞くの?まぁいいけど。そうだな…。戦う前かな?」
「はぁ?マジで言ってんの?てかどうやって洗脳解いたんだ?」
「単純に強い衝撃かな?よくあるじゃん心まで侵食されてなければ、強い衝撃で正気に戻るやつ。それをやったまでだよ。」
心奏と神翔との親子の会話が交わされているのを遅れて知った姉のカトレアは、神翔に会うなり平手打ちをかまして、神翔の目に涙を浮かばせる程に強く叩き叫ぶ。
「何してくれてんだよ。油断して洗脳されて実子と戦う馬鹿が何処にいるんだよ!こちとらストレスが溜まりまくってイライラしてんだ。早く案内しろ!烏丸のとこにさ。」
姉のカトレアは、普段のイライラや溜まりに溜まったストレスが影響して、元ヤンの血が騒いでしまっていた。
その姉のカトレアの姿を見た父の神翔は、烏丸の居場所を指差して心奏たちに場所を伝えると、その場に土下座して、誠心誠意の謝罪をしてこの場はどうにか丸く治める事が出来たのであった。
こうして、心奏たちは烏丸の本拠地を知ることが出来たのだが、この戦いがこれから起きる想像を絶する頂上決戦になるとは、誰もが知る由もないのであった。
果たして、心奏たちは烏丸の野望から世界を護る事ができるのであろうか。
そして、想像を絶する頂上決戦とは、一体・・・
心奏は、ひとつの事件をきっかけに、謎の人物から狙われる様になってしまう。
そして、心奏自身は、稀有な存在として扱われていくことになるのであった。




