第26話 加速する不安と苦しみの茨。
20XX年。全国の高校において、能力解放という科目が選択できるようになり、五人に一人という割合で能力を使えるものが現れるようになったのだが…
その能力自体を悪用し心奏たちが住む世界をひっくり返そうとする組織が現れる。
そして、その組織に立ち向かう心に誓い決心した。心奏と心湊とその仲間たちとの世界平和と存亡を賭けた大きな戦いが今、幕を開けようとしていた。
【前略】神恋島へ急行して、父の神翔と真相の照らし合わせを行い、二人が辿り着いた真実の一致を確信。
その足で急ぎ私立蕾学園へ折り返す事となった心奏。
その心奏と共に、父の神翔も同じく私立蕾学園へ向かうのであった。
だがしかし、道中にとある異変を感じ取り”不安”の二文字が脳内を駆け巡る。
「ねぇ、父さん。普段からこの海域って霧深いの?」
心奏の思いのよらぬ言葉に、ピタリと空中停止してしまう父の神翔。
頭の中に?を浮かべながら、辺りの様子を伺う父の神翔は、神妙な面持ちになり今朝方に見た天気予報を思い返すのだが・・・
「いや…今日は、海上濃霧警報はおろか注意報すらも発表されていないぞ。”かな”。」
父の神翔の言葉で、心奏の脳内を一筋の光と共に、とあるビジョンが流れる。
その心奏の脳内を駆け巡ったビジョンは、今現在心奏とその父の神翔が居る海域で発生している予報にない濃霧の正体であった。
流れてきたビジョンをそのまま言葉にして父の神翔へ伝えようと心奏は、言葉を発するのだが・・・
「ねぇ、父さん。今、脳内再生された映像を観たんだけど・・・あれっ?父さん何処に居るの?」
なんと、心奏とその父の神翔がピタリと移動を止めて、空中停止をして僅か五分間に、今度は父の神翔が心奏の前から跡形もなく消え去ってしまっていたのだ。
勿論の事、海上濃霧が発生している為、互いに姿を認識は出来てはいないが、テレパシーで情報共有を行い互いの位置を把握していた中で、起きてしまった父の神翔の突然の失踪。
一瞬、心奏はパニック状態になりかけたのだが、周りを濃霧に包まれた状態で現在位置に留まるわけにもいかない為、心奏は再び私立蕾学園の方向へ急行するのであった。
だが、後にこの予報には無かった突然の海上濃霧の正体が、まさかのモノだと認識するのであったのだ。
心奏が、神恋島を出発してから約二時間が過ぎた頃、遅れながらも心奏は無事に私立蕾学園へ到着して足早に、地下の会議室に向かい現状報告を行うのだが・・・
妹の心湊に続き父の神翔が謎の失踪を遂げた為、地下の会議室に集まっていた幼馴染の三雲マリンと友人である千歳輝夜と養護教諭の月夜見先生は、言葉を失い地下の会議室には、重苦しい空気が張り詰めてしまっていた。
僅か一日足らずで、二人もの人間が姿を消してしまう事が発生してしまい今後の対応をどの様に、進行すれば良いかと心の整理が付かない状況下に、陥ってしまった。
明くる日、心奏たちは再び地下の会議室へ集まっていた。
多少なりとも心の整理を付ける為に、二日間の休息を取り心奏を除いた残りの三人は心にゆとりを持って進行を進められる様になっていた。
だが・・・心奏は、身内二人も自分の前から姿を消してしまっている為に、普段の睡眠時間の半分程度しか眠ることが出来ず居た。
幼馴染の三雲マリンは、心奏に会った瞬間から普段の心奏ではないと察知しており、心奏の好物の物を用意して心奏の事を人一倍に、心配して地下の会議室で話し合いを進めている間や途中で何度か休憩時間を取っている間も、心奏の隣で心奏に寄り添い心奏の心のケアは勿論の事、眠気に襲われて意識朦朧としている心奏を介抱して膝枕をしてあげる等といった行動を取っていた。
そして、この日は私立蕾学園に宿泊して良いとの許可が出ている為、集まった皆が買い出しや炊事等の作業を分担して行い、夏休み以来の学園にお泊りをするというイベントでストレス軽減を図ったのだ。
勿論の事、私立蕾学園のセキュリティは神恋島のセキュリティレベルにまでアップデートしているが、万が一の事があってはいけないと考えて、代わる代わるで誰かが起きて学園内をパトロールするという行動を取っていた。
警備巡回ロボットを普段の倍の数起動させた上で、カトレアも学園に泊まり込んで、自身の従える魑魅魍魎や妖怪たちにも協力を仰ぎ、世界の要人の住まう住居や軍の施設のセキュリティレベルの遥か上行く規模で私立蕾学園をガードしていた。
心奏はようやくまともな休息を取れる状況になった事で、安心して眠ることが出来たのだが・・・
― 心奏の夢の中 ―
「心奏?私の姿が見えますか?」
深くフードを被った謎の女性が、話しかけてくる。
そして、謎の女性は夢の中で心奏に触れると、心奏は白く眩い光に包まれた。
その姿はまるで・・・天使。
いや、天使よりも上の存在である熾天使の様な姿の心奏が、白く眩い光の中から姿を現す。
「この能力は・・・」
夢の中の心奏が呟く。
すると謎の女性は、ゆっくりとした口調で語りだす。
「それは、心奏。あなた自身に秘められた力なのよ。あたしは、あなたに恐るべきアイツを倒して欲しいのです。あなたは強い。そう・・・誰よりも強いの。だからこそ、あたしはあなたを護ります。いずれ、あなたと出会う日が来るわ。そう...あなたの生きる世界でね。」
― 現実世界 ―
そして、再び眩い光に包まれたと思った瞬間、夢が覚めて見覚えのある天井が視界に入る。
「何だったんだ?あの夢は・・・でも、悪くない夢だ。僕は、護るべき存在がいる限り何処までも強くなれる。これでようやく自分自身を苦しめていた茨から開放される。」
心奏は、独り言の様に呟き、雲一つない綺麗に晴れた空を見上げて、差し込む朝日を浴びるのであった。
こうして、心奏は精神的にも健康を取り戻して、自分自身を苦しめていた茨から開放されて、今現在起きている事案に対しても、怒りという感情ではなく前向きな気持ちで、全身全霊で立ち向かうと決心したのであった。
果たして、心奏は無事に妹の心湊を助け出すことができるのであろうか。
そして、父の神翔の行方や如何に・・・
心奏は、ひとつの事件をきっかけに、謎の人物から狙われる様になってしまう。
そして、心奏自身は、稀有な存在として扱われていくことになるのであった。




