第20話 心奏【かなで】に訪れた危機!
20XX年。全国の高校において、能力解放という科目が選択できるようになり、五人に一人という割合で能力を使えるものが現れるようになったのだが…
その能力自体を悪用し心奏たちが住む世界をひっくり返そうとする組織が現れる。
そして、その組織に立ち向かう心に誓い決心した。心奏と心湊とその仲間たちとの世界平和と存亡を賭けた大きな戦いが今、幕を開けようとしていた。
無事、現実世界に帰還した心奏たち三人。
だが・・・遂に、世界を牛耳ろうとする組織が、動き出した。
しかし・・・心奏は、ある重大な症状に悩まされていた。
それは・・・能力を使おうとしても、能力が使えないというものだ。
この世界・・・この物語に出てくる日本に於いては、能力を使おうとしても使えない症状を能力燃え尽き症候群と呼んでいる。
心奏は、まさにその能力燃え尽き症候群に、陥ってしまっていたのだ。
そして、その症状に陥ってから約二日間が過ぎた日の事であった。
この日は、心奏とその幼馴染である三雲マリンと友人の千歳輝夜で、私立蕾学園に用事で訪れていた。
三人は、学園地下にある会議室でとある話し合いをしていた。
「ねぇ、"かなちゃん"。最近、体調大丈夫?つい先日に、あっちに行った時に能力使えてなかったから何かありそうな予感が、するんだけど…。」
幼馴染である三雲マリンが、心奏が能力を使えなかった事象に於いて、体調不良によるものが原因として能力を使用することが出来なかったと予見した。
だが・・・心奏は、その日の事を事細かに記憶を思い出していた。
しかし・・・全くと言って体調不良というワードが当てはまらない程に、健康体であったのだ。
「いや、あの日は全然体調不良とかそんな感じな事なかったよ。むしろ通常通りって感覚だった。」
心奏は、その日の記憶を家を出る前まで遡っても体調不良というワードが、当てはまる事象は無かったと記憶していた。
そこへ二人の友人である千歳輝夜が、あるワードを提唱した。
「もしかしたら・・・心奏さん。能力燃え尽き症候群に陥ってしまったのではありませんか?それも極めて重いタイプのものに…。」
輝夜が言うには、能力燃え尽き症候群は、能力を高頻度で多用して尚且つ、その能力使用時間が長ければ長い程にその症状に陥りやすいというこの世界では、当たり前になってきたものなのだが・・・
心奏に至っては、能力を全くと言って使用出来なくなる程に重症である為、大抵は体調不良等の身体的症状として現れるはずのものが、一切現れてないという事実がある。
それが三人を悩ませる大きな種であった。
本来であれば、心奏は体調不良に陥って数日間は身体能力が、通常時の三割程度に落ち込み回復させる為には、二週間もの時間を要する極めて重い症状なのだが・・・
今現在の心奏には、全くと言ってその症状が現れていないという事実が、あったのだが・・・
その状態もそう長くは続くこともなく話し合いを進めて約三時間後の事であった。
休憩を挟もうと幼馴染である三雲マリンが提案して、それに伴って心奏も少々休憩を取ろうとした瞬間であった。
「とりあえず、一時間は休憩取ろう。流石に、僕も疲れたよ…。」
心奏は、一時間休憩を取ろうと提案して椅子から立ち上がろうとした瞬間、急に視界がグルグルと渦巻き状に回転したかと思うと、床に倒れこんでしまう。
すると、何か込み上げてくるモノを感じて咄嗟に手で口をおさえたのだが・・・
間に合わずその場に吐いてしまう。
そして、心奏の異変に気が付いた二人が心奏の元へ駆け寄るのだが・・・
「えっ・・・"かなちゃん"大丈夫?って、やばいわ。"ちーちゃん"、"かなちゃん"が・・・」
真っ先に駆け寄った幼馴染の三雲マリンは、倒れている心奏を横目に心奏の吐瀉物が、単なる吐瀉物ではなく完全なる血であると確認した。
すると、心奏が全く動じない事を確認した千歳輝夜は、冷静に脳内で情報処理して、すぐさま会議室にあった内線電話を使って、保健室にいる月夜見先生を呼び出す。
「もしもし、月夜見先生!大変です。心奏さんが、地下の会議室で倒れて大量に吐血して体に動きが見られないです。至急、地下の会議室へ来てください。」
千歳輝夜が内線電話を掛けてから約一分後、保健室に居た月夜見先生が駆けつけて心奏の様子を確認して即座に、二人に指示を出して二人は、会議室のロッカーに入っていた担架を用意して、心奏を担架に乗せて、学園の保健室まで運び保健室のベットに寝かせた。
その間に、月夜見先生は会議室の後始末を行ってから保健室へ高速移動して、心奏の状態を確認して事前に用意してあった輸血パックで、心奏に輸血を始めて失った分の血液の補給をする事に・・・
その間流れた時間は・・・僅か五分だった。
「一旦は、これで大丈夫ね。嫌な予感がして用意しておいてよかったわ。まさかこんな症状でアレが現れるなんてね。お疲れ様二人とも協力してくれてありがとう。」
月夜見先生が、嫌な予感がして色々と準備を進めてくれていたお陰もあって、心奏は大事には至らず一安心な状況になったのだが・・・
輝夜は、月夜見先生が言っていたアレという言葉に、引っ掛かり思わず問いかける。
「あの、ひとついいですか?月夜見先生。先程アレと言っていましたが・・・アレとは、一体何ですか?」
月夜見先生は、少しの間を開けてからゆっくりとした口調で語り始めた。
「能力燃え尽き症候群・・・聞いたことあるよね?その症状で稀にあるのよ・・・体調不良は一切なくてある日突然、眩暈に襲われたり場合には、大量吐血したりする事がね。しかも心奏君は、眩暈も吐血もあったから恐らく、相当重篤な能力燃え尽き症候群だと思う。このレベルの症状はまだ三例しか見つかっていない極めて、稀有な症状ね。」
月夜見先生が言うに、心奏は稀有な症状で、能力燃え尽き症候群を発症してしまっていたのだ。
だが・・・月夜見先生は、もう一つある事を語りだした。
「あっ、言い忘れてたけど・・・この能力燃え尽き症候群、またの名をオーバーヒート。は、単なる魔力の使い過ぎが要因ではない。心奏君の場合...普段から無意識下で、様々なスキルと併用した結果として起こったと考えられる。例えるなら神経を極限状態になるまで尖らせた状態で、能力使用して身体的に耐え難いレベルでの負担が掛かっていて、そこへ魔力を濃く練る又は極限まで魔力を集中させるといった事をした結果・・・身体的に動作不良が起こったと言える。」
月夜見先生は、心奏に起きた能力燃え尽き症候群またの名オーバーヒートが、普段の心奏の行動からその予兆が見られ尚且つ、心奏の症状の重さから無意識下でのスキル併用と能力使用によるものだと、見抜いていた。
勿論の事、二人は月夜見先生の洞察力の高さに言葉を失っていたのだが・・・
まさかの心奏の普段の何気ない行動すらも彼女には、要注意事項として認識していたのだ。
だが・・・心奏が、能力燃え尽き症候群に陥ってしまった今現在、私立蕾学園にはまだ平穏な状態が保たれていた。
しかし...そんな平穏な日もそう長くは持つことなく。
心奏が重篤な能力燃え尽き症候群に陥ってから四日後・・・
未だに心奏は、意識不明の重体であり一応呼吸器をつけた状態で、保健室のベットで横たわったままであった。
この日は、心奏の姉であるカトレアが、用事で私立蕾学園に訪れており心奏の様子を確認する為に、保健室に来ていた。
姉のカトレアは、月夜見先生と何気ない会話を交わしていた時であった。
突然、学園にけたたましく警報が鳴り響きアナウンスが流れる。
「防衛システム欠落、防衛システム欠落。当学園内に侵入者アリ。当学園の生徒並びに教職員の方々は、速やかに地下へ避難せよ!繰り返す、速やかに地下へ避難せよ!」
あまりの出来事に姉のカトレアと月夜見先生は、少しの間思考がフリーズしてしまうが、ふと我に返り行動を起こす。
姉のカトレアは、月夜見先生を警護しながら心奏をベットと呼吸器ごと、地下の会議室へ移動して、姉のカトレアだけで、外の様子を確認へ向かった。
月夜見先生は、地下の会議室で心奏を寝かせて意識を取り戻すのを待つことに・・・
幸いなことに、学園には心奏の母の早紀と心奏、そして姉のカトレアと月夜見先生しかおらず心奏の母の早紀に至っては、偶然にも仕事部屋を地下へ移設しており難を逃れていたのだ。
妹の心湊は、父の神翔の元へ行っており無事だということが、早紀から知らされた。
そして、外へ様子を確認しに来た姉のカトレアは、ふと校庭に人の気配があるのを感じ取り校庭近くの用具倉庫に入り気配を消して、様子を伺う事にした。
「何だ?あの黒一色で身を包んだ奴らは・・・見た感じ、五十人は居るな。」
用具倉庫の小さな窓から校庭を見た姉のカトレアが、蚊の鳴く声で呟く。
校庭には、怪しく黒一色に身を包んだ者が五十人と居る事を確認した姉のカトレアは、テレパシーで月夜見先生に見た現状を伝え、再び気配を消しながら校庭の様子を確認する姉のカトレア。
突如として、警報が鳴り響いた私立蕾学園。
学園にある校庭には、怪しく黒一色に身を包んだ者総勢五十人が現れた。
果たして、怪しい動きをする五十人の正体とは一体何なのであろうか。
そして、私立蕾学園に迫る危機とは・・・
心奏は、ひとつの事件をきっかけに、謎の人物から狙われる様になってしまう。
そして、心奏自身は、稀有な存在として扱われていくことになるのであった。




