第16話 旧友との再会、そして束の間の休日。
20XX年。全国の高校において、能力解放という科目が選択できるようになり、五人に一人という割合で能力を使えるものが現れるようになったのだが…
その能力自体を悪用し心奏たちが住む世界をひっくり返そうとする組織が現れる。
そして、その組織に立ち向かう心に誓い決心した。心奏と心湊とその仲間たちとの世界平和と存亡を賭けた大きな戦いが今、幕を開けようとしていた。
姉のカトレアの恐るべき能力を垣間見た心奏。
百鬼夜行を操る恐るべき能力で、彼女が召喚したのが餓者髑髏であった。
彼女は、召喚した餓者髑髏にある命を下していた。
それは。。。実弟の心奏とその友人である輝夜を護れというものだ。
時間を遡り・・・・時は、姉のカトレアが異次元の存在を倒すほんの少し前だ。
心奏と輝夜は、父の神翔の居る建物に避難しようと足早に行動していた。
「もう少しで到着しますよ...輝夜さん。」
息を軽く切らしながら、輝夜に語り掛ける心奏。
だが・・・その後方約百メートルをあるモノが、二人を追っていたのだ。
それが姉のカトレアが、召喚し命を下した餓者髑髏であったのだが・・・
心奏が、先にその特有の妖気なる禍々しい気配を察知して、不意に後方に目を向ける。
「えっ?が・・・餓者髑髏?てかなんで、此処にいるんだ?」
心奏の思わず呟いたその言葉に、反応した輝夜も心奏につられて後方を見てしまうのだが・・・
「きゃああああああ・・・な、なんなのよあの巨大な骸骨は…。私・・・もう無…理…。」
輝夜は、餓者髑髏をみた瞬間に、鳥肌が立ち恐怖感で血の気が引いてしまい”バタン”と、倒れてしまう。
勿論の事、心奏は輝夜がこう言った妖の類が苦手だと今更ながらに、実感してしまい少々戸惑っていたのだ。
そんなところへ姉のカトレアが召喚した餓者髑髏が、近付くや否や心奏を見て餓者髑髏が思わず呟いてしまう。
「おや?君は確か・・・姐言へり”心奏”かい?我がさまを見るとも恐れぬその心力・・・流石は、姐の弟…。」
餓者髑髏は、心奏を見るなり心奏が、只者ではないと見破り称賛するのだが・・・
ふと思い出した様に、餓者髑髏は心奏に向かい姉のカトレアが命じた事を呟く。
「失敬。姐に命ぜられしためしを忘れかけたりき。君ら二人を護れと命受け、参りしぞ。取り急ぎ我が右手に乗りたまへ。」
ゆっくりと右手を差し伸べてきた餓者髑髏は、心奏が自身の右手に乗ったのを確認してから父の神翔の居る建物に向けて動き出した。
餓者髑髏は、心奏と輝夜が落ちないように細心の注意を図って大急ぎで、避難先へ向かった。
約五分後…。心奏と輝夜は、餓者髑髏に手助けの甲斐があり、無事に父の神翔の居る建物に到着して、二階の窓から建物内を見ると…。
そこには、父の神翔の姿があり父の神翔は、餓者髑髏の右手に乗る心奏と輝夜を見た瞬間・・・
背中に冷や汗をかきながら恐怖に、おびえた表情を浮かべ言葉をこぼしてしまう。
「か・・・かな?なんで、ががが…餓者髑髏に乗ってここまで戻って来たんだ?お、俺怖いの無理無理無理。今、窓開けるから早く餓者髑髏から降りて此方に来なさい。」
父の神翔は、恐怖で震える手で窓を開けると。。。
餓者髑髏は、開いた窓に向けて右手を差し伸べ心奏と輝夜が落ちないように、建物内へ心奏と輝夜を降ろすと、スッと右手を引き建物と少し距離を取る。
心奏は、餓者髑髏に向かい笑顔で話しかけるのだが・・・
「ありがとうございます。餓者髑髏さん。助かりました。」
心奏の後ろに隠れる様に、輝夜と父の神翔がガタガタと震えているというカオスな状況に、なってしまうのだが・・・
餓者髑髏は、あまりにも心奏がたくましく見えてしまい感動のあまりに、骸骨なのに涙声で呟いてしまう。
「お主の逞しさに・・・我は、泣きぬるぞ。よくぞ、ここまで大きになられ・・・我は、お主が齢五歳のほどに、一度会ひたてまつれるぞ。お主は、忘れにていらるるやと思へど・・・その時もお主は我がさまに恐れおののく事なく今と同じ眼差しに、まもれるをこの無き眼覚えたり。」
心奏は、餓者髑髏が一度会っていて尚且つ、心奏が五歳の時にも同様に、優しくたくましい眼差しで餓者髑髏と何やらかの会話を交わした様なのだが・・・
心奏は、あまりにも昔の記憶故か断片的にしか思い出せずにいたのであった。
そうこうしているうちに、姉のカトレアが異次元の存在との戦いに決着が着いたのを知った餓者髑髏は、姉のカトレアを迎えに動き出すのであった。
餓者髑髏が一旦去り少ししてから、輝夜と父の神翔が心奏の後ろからようやく顔を出しほっとした表情で同時に、思っていたことを呟いてしまう。
『あ~怖かった。』
心奏は、二人が同時に、同じ文言を呟いた事で思わず悟ってしまい心の中で、""嗚呼、この二人は同じ様なモノがダメなのね“”と呟いてしまう。
すると、窓の外に餓者髑髏が現れて先程同様、右手に姉のカトレアを乗せてやって来た。
そして、姉のカトレアは窓から建物に入り餓者髑髏を空間上に召喚した魔法陣のところまで誘導して、手を振り餓者髑髏に別れを告げていたのであった。
それからは、慌ただしく事の展開を話したり今後の事を交えた会議を行ったりして、ふと気が付けば七月も終わりを告げようとしていた。
心奏と妹の心湊は、学園が夏休み期間に入ったという事もあり、課題や夏休み明けのテストに向けての自主勉を学園の空き教室を利用して行っていた。
勿論の事、母の早紀に学園でお泊まり等の許可を得た上で、幼馴染の三雲マリンも交えて仲良く楽しく、夏休みを謳歌していたそんなとある一日の事であった。
一足先に心奏は、与えられた課題とテストの範囲内の勉強に区切りが付き、休憩がてら街に出掛けていた。
ー 常盤市 中心部 ―
心奏は、気分転換の為に喫茶店に立ち寄り趣向品の珈琲を嗜んだ後に、欲しい服があるのを思い出した心奏は、とある行きつけの服屋に向かうのだが・・・
「あれ?もしかして、"かな"?久しぶりじゃん。俺だよ覚えている?」
心奏は、急に声をかけられてしまい振り向くとそこには・・・
心奏の小学生時代から中学生時代まで、同じ学校であり同じ学級の仲であった旧友の水瀬レンが居たのだ。
心奏は、記憶を遡り思い出を回想して思わず、一粒の涙を流してしまう。
それもそのはず・・・心奏の旧友水瀬レンは中学卒業後は、心奏たちとは違う高校へ進学したのだが・・・そこで起きた不慮の事故で命を落としたものだと思っていたからである。
もう二度と会うことができないと思っていた旧友水瀬レンに、今こうして再会出来た事に感動し遂に、レンの前で泣き出してしまう心奏。
再会いきなり目の前で心奏に泣かれてしまったレンは、そっと心奏を抱きしめて語り掛けた。
「ちょっ…"かな"?俺、何か悪いことしたか?確かに不慮の事故に遭って、生死の狭間を彷徨ったけど・・・今こうして生きてるじゃん。前みたいには、頻繫に会う事は出来ないけど俺はいつまでも、"かな"の友達だ。」
レンは優しく語り掛けたつもりであったのだが。。。心奏にとっては、レンは亡き友という印象が付いてしまっていたが故に、実際に目の前に現れ話しかけられた事で、溜めにためていた感情が爆発してしまったのであった。
そして、ひとしきりに泣いた心奏は、レンにお手洗いに行くと告げて行きつけの服屋の前で待つように言って、その場を後にしたのであった。
心奏は、お手洗いに着くと鏡の前で、ふと自分の顔を見て折角、お出かけの為にして来たお化粧が崩れていることに気が付き、大急ぎでお化粧直しをしてレンの待つ場所へ向かうのであった。
「ごめん。遅れた。」
心奏は、レンに一言謝罪を述べてから、レンと共に行きつけの服屋へ入って行き・・・
一時間程で買い物を済ませた心奏は、レンと映画館へ足を運んでそこでゆっくりと話題の映画を鑑賞して時刻は、夕方五時半を回ろうとしていた。
「ごめんね。今日は、色々と付き合って貰って・・・。」
心奏は、レンに約六時間位ではあったけど、買い物やらに付き合ってくれた事に感謝して言葉を述べた。
すると、レンは心奏の頭を軽く撫でてから改めて、心奏の目を見て真剣な表情で語り掛けた。
「こちらこそ楽しかったよ。"かな"。やっぱり昔から変わらないな"かな"は・・・。"かな"は"かな"らしいよ。また近いうちに会うことになりそうな気がする。その時は、今日の埋め合わせとしてゲーセン行こうぜ!んじゃ、またな。」
レンは、まるで彼女に語り掛ける様な口調で、心奏に別れの挨拶を告げ去っていったのであった。
こうして、もう二度と会うことができないと思っていた、旧友水瀬レンに会えた心奏。
だが・・・この感動の再会の裏では、着々と世界支配に向けて動く謎の組織が、常盤市に迫っているのだと知る由もないのであった。
それがまさか・・・心奏の心情を大きく変化させてしまう程のものになるとは、この時の心奏は勿論の事、妹の心湊や輝夜にすら想像の範疇にないのであった。
果たして、常盤市に迫っている謎の組織とは、一体何を指しているのであろうか・・・
心奏は、ひとつの事件をきっかけに、謎の人物から狙われる様になってしまう。
そして、心奏自身は、稀有な存在として扱われていくことになるのであった。




