第10話 既視感の正体
20XX年。全国の高校において、能力解放という科目が選択できるようになり、五人に一人という割合で能力を使えるものが現れるようになったのだが…
その能力自体を悪用し心奏たちが住む世界をひっくり返そうとする組織が現れる。
そして、その組織に立ち向かう心に誓い決心した。心奏と心湊とその仲間たちとの世界平和と存亡を賭けた大きな戦いが今、幕を開けようとしていた。
名も無き島に出現した時空を繋ぎし扉【ポータル】。
そこへ吸い込まれてしまった二人。
気が付くと、何処か既視感を覚える光景が目の前に広がっていた。
そして、二人は情報収集をしようと行動を起こそうとした瞬間、何処か遠くから何やらかの獣の聲が聞こえてきた。
だが...二人のいる場所が分からない限り、この場所から抜け出すことができないと薄々感じてしまう。
そんな時、輝夜が思わぬ発見をした。
「心奏さん。ちょっとこれを見てください。」
輝夜の声を聞いた心奏が、輝夜の見ている方向を見るとそこには・・・
[常盤市、常盤公園]
二人の目の前には、見覚えのある住所が示された看板があったのだ。
常盤市は、心奏が生まれ育った街であり尚且つ、私立蕾学園があるのも常盤市である。
その為、二人は常盤市に飛ばされたのだと認識するのだが・・・
辺りを見渡してとある異変に気が付いてしまった心奏が、驚愕のあまり思わず声を上げてしまう。
「何故だ?人の気配が全く…感じない。それに、この常盤公園の近くには沢山の高層ビルが立ち並んでるに、其れの何処もが使われなくなってから数年は、経過している様な雰囲気がある。」
なんと、心奏が感じた異変というのが・・・
人の気配が全く感じられないという事と高層ビルのテナントらしき場所が、どう見ても使用されなくなってから数年は経っているであろうという廃れた光景を目にしてしまう。
それによって心奏が思考を巡らせて行き着いた結果が・・・
この今、二人の居る常盤市は人々が居なくなり数年経過した世界線だというのだ。
勿論の事、心奏は輝夜にその事実を隠すことなく伝えることにした。
「輝夜さん。恐らく合っていると思う僕の見解なんですけど・・・この今、僕たちが居るのが常盤市で間違えはないのですが、人々が消えてから数年時が過ぎてしまっている世界線。つまり、パラレルワールドに来てしまったのだと思います。」
心奏は、この常盤市がパラレルワールドであり人々が消えてしまった世界線だと輝夜に、包み隠さずに話すと輝夜は衝撃のあまり声を失ってしまう。
違う世界線に来てしまったと受け入れ難い感情が、輝夜を襲ってしまうが・・・
輝夜は、おもむろに自身のかけている眼鏡を外して目を閉じて周りの気配を探り始める。
すると、ハッとした表情を浮かべ無言で、心奏の右手を引っ張り常盤公園を出て目の前にある道路に飛び出してしまう。
いきなりの事に、声を上げそうになる心奏に向かい先に声を出してしまう輝夜。
「いきなり引っ張ってごめんなさい。私が今何となく気配を探り目を閉じた瞬間に、何か獣らしきものの気配を感じたのと同時に、何処かのビルの屋上に"黒い靄の状態の存在"が現れて、そして近くにある巨大な看板が下に落ちていく様子が、見えてしまったんです。」
息継ぎを忘れてしまう程、驚愕の映像が目を閉じた瞬間に見えたと言う輝夜。
そんな輝夜の様子を見た心奏は、まさかとあるものが確信ついた瞬間であった。
二人が居る場所から約百メートル離れた場所にある高層ビルの上に、明らかに黒い何かが居ることに気が付き二人がその高層ビルの近くに向かい走りだした。
「何か屋上に黒いものが居る・・・まさかアレか、輝夜さんが見たという光景は…。」
走りながら独り言の様に呟く心奏。
そして、少しずつ例の高層ビルに近付くと獣らしき正体が明らかになるのであった。
それは・・・例の高層ビルの三棟前まで来た時であった。
「あれは・・・熊?でもなんでこんな街中に熊がいるんだ?だけど何か様子が変だな。」
なんと、輝夜が言っていた獣らしき正体が野生の熊でありしかも、小熊だというのだ。
更に、様子がおかしいと心奏が言葉を漏らしたまさにその瞬間であった。
突然、“”パヒュン“”という音が響き渡ったかと思いきや、子熊が居る目の前のビルの屋上にある看板が落ちて来ているのだ。
だが・・・上から看板が落ちて来ていることに全くと言って、反応を示さない子熊の様子を見た心奏は、声よりも先に自身の身体が動いていたのだ。
子熊の近くまで来ると心奏は、子熊が怪我をして動けないという事を瞬時に見抜いて、即座に子熊を抱え上げて一歩進もうとした瞬間、不意に上を見上げた心奏は絶句してしまう。
心奏の頭上僅か十メートルまでの高さにまで、看板が落ちて来ている事に・・・
その瞬間、心奏の視界はスローモーションになり、絶体絶命の境地に立たされてしまうのだが・・・
「咲け!妖刀村雨! 秘技…時雨。」
音を置き去りに輝夜が、自身の魔力を具現化させて生み出した妖刀村雨を引き抜き、一発の斬撃を落ちてきている看板に向かって飛ばして、看板を真っ二つに切ってしまうのであった。
そして、真っ二つなった看板が心奏に向かって倒れこむ寸前に、輝夜が心奏を抱きかかえて数十メートル先まで音を置き去りにして移動した次の瞬間には、辺りに轟音が響き渡り心奏のスローモーションになっていた視界が元の状態に戻る。
「えっ?輝夜さん?」
あまりの早業に語彙力がなくなりかけた心奏が、思わず言葉を漏らした。
輝夜は、心奏が認識できない速度で、しかも息切れもせずに早業をやってのけたのだが...
心奏が、抱えている子熊の様子が気になり声を掛ける輝夜。
「あの。心奏さん。その抱きかかえている子熊早く手当てしてあげないと。」
輝夜は、心奏が抱きかかえている子熊に手当てしてあげてと語り掛けて、その言葉を聞いた心奏はすぐに子熊に治癒魔法を施すことに・・・
そして、二分後・・・
治癒魔法を施された子熊は、目を見開きビックリして子熊がパニック状態になるのだが・・・
心奏が、子熊の頭を優しく撫でると落ち着きを取り戻して心奏に子熊は抱きついてしまう。
その光景を見た二人は、安堵の表情を浮かべるのであったのだが・・・
その裏側では、少しずつあるものが迫ってきているのだが・・・
その状況に二人が気が付くのはもう少し先の事であった。
果たして、二人に迫るあるものというのは一体何を指しているのであろうか・・・
心奏は、ひとつの事件をきっかけに、謎の人物から狙われる様になってしまう。
そして、心奏自身は、稀有な存在として扱われていくことになるのであった。




