第1話 心奏(かなで)のもうひとつの世界。序章
20XX年。全国の高校において、能力解放という科目が選択できるようになり、五人に一人という割合で能力を使えるものが現れるようになったのだが…
その能力自体を悪用し心奏たちが住む世界をひっくり返そうとする組織が現れる。
そして、その組織に立ち向かう心に誓い決心した。心奏と心湊とその仲間たちとの世界平和と存亡を賭けた大きな戦いが今、幕を開けようとしていた。
ここは・・・心奏の居るもう一つの世界線。
今日も今日とて、主人公である御堂心奏は、妹である心湊と一緒に私立蕾学園に通学していた。
そして。。。今日は妹の心湊がこの私立蕾学園に入学してから、丁度半年。
普段通りに、兄妹仲良く通学していてまるで傍から見れば…。
もはや、カップルにしか見えないくらいに距離感がバグっている二人。
そんな二人の物語が今始まろうとしていた。
そして、学園に着くや否や心奏の幼馴染の三雲マリンに軽くちょっかいを出されてしまう心奏。
「もう!この光景は見慣れたでしょうが…。僕たちは、カップルではありません。只々、仲が良い兄妹です。」
毎日の様に、これでもかとちょっかいを出してくるマリンにカップルではないとバッサリ言い切る心奏。
だが...マリンは、そんなバッサリとカップルではないと言い切った心奏に対して、少し嫉妬の眼差しで見つめては不服申し立てるのであった。
「だってだってだって。あなた達幾ら兄妹とは言えどもなんか距離感が滅茶苦茶バグってるよ。ぶっちゃけ、もう恋仲ですって言われても違和感が仕事しないってレベルなのが腹立つ~。」
頬を膨らませて“”今怒りでプンプンです。“”と訴えてくる幼馴染のマリン。
しかし...そんないつも通りのトークを三人で繰り広げていると学園の方から、突如として"ドーン"という爆発音が響き渡ってくる。
‴えっ?‴と突然の爆発音に対して、三人同時に反応して声を漏らしてしまう。
するとその直後に学園から緊急事態発生のアラート音が、けたたましく鳴り響き周囲は[何が起きたんだ?]とパニック状態に陥ってしまっていた。
「まずいなこれは...。」
心の中で呟いたであろう声が口をついて出てしまった心奏。
学園に通う生徒がパニックに陥り逃げ惑う中、心奏はある行動をとる。
「心湊!マリン!二人には悪いけど...僕は、爆発音が聞こえてきた方へ行ってくるよ。だから、二人は先に避難してて!」
妹の心湊と幼馴染のマリンに簡潔に自分の行き先を伝えた心奏は、ひとりで爆発音が聞こえてきたであろう方向へ駆けていくのであった。
心奏が走り去ってしまってから数秒後、幼馴染のマリンと妹の心湊は私立蕾学園の地下にある有事の際に使用するシェルターへ避難する事に。。。
― 私立蕾学園 校庭 ―
心奏は、爆発音の大きさから恐ろしく校庭から聞こえてきたのだろうという仮説を立てた上で、ひとり学園の丁度真裏に位置する校庭へやってきた。
「あの音の大きさからして此処のはずだが・・・特に変わった様子はないな。」
校庭に到着した心奏は、校庭を見回して変わったところはないかと自分の目で確かめて特に変化はないと思い自分も地下へ避難しようと脳内で思考を巡らせた…。
まさにその時だった・・・
何かの気配を察知した心奏が軽く未来視をして、五秒後の様子を脳内ビジョンで再生して即座に行動に移す。
「其処か!!」
何者かによる攻撃を未来視で見て的確に反撃をお見舞いする心奏。
何者かは、心奏に向かってレーザー光線で攻撃をするのだが・・・
その時点で心奏に先を読まれていて更に、心奏に向けて放ったレーザー攻撃を心奏にいとも簡単に弾かれてしまう。
そして、弾かれてしまったレーザー攻撃は空中爆発を起こした反動で校庭の砂を巻き上げてしまい煙幕の様に心奏の視界を塞いでしまうが...
心奏はその様な状況下になってもなお至って冷静に、風下の方へ身体を向けて煙幕の様になった砂煙から自身を護りながら攻撃を打ってきたであろう位置を逸早く特定して何者かを追いかけようとしたのだが・・・
「流石にもう。。。気配はないか。逃げ足の早い侵入者だ。この事を早く心湊に伝えなければ・・・」
思わず一人ボソッと事柄を呟いた心奏は、妹の心湊と幼馴染のマリンが避難している地下へ向かうのであった。
ー私立蕾学園 地下 ー
ここは、私立蕾学園の地下五十メートルの位置にある有事の際に使用できる地下シェルター。
広さは、学園にある体育館が三個入る程に広く作られていて更には、壁も頑丈であり核弾頭の爆風を喰らっても傷ひとつ付かない耐久性を持っている+特殊な換気設備もあり常に空気清浄されている。
そして、約二千人が一ヶ月程避難生活を送れる様に防災グッズ等が用意されていて、尚且つ外界との通信も出来るように特殊な無線機と発電機を備えストレスフリーで端末のデータ通信を行えるようになっている。
そんな地下シェルターに学園に通う生徒が避難して身を寄せ合っていた。
そこへ心奏が到着するや否や妹の心湊と幼馴染のマリン…。
そして、私立蕾学園の養護教諭である月夜見先生と心奏と心湊の母親であり当学園の校長でもあり理事長も兼任で務める御堂早紀が心奏の元に駆け寄って来たのだ。
「心奏君。何か情報は掴めたのかい?」
養護教諭の月夜見先生が、心奏に開口一番で問いかける。
「いえ...これと言っていい情報はないです。侵入者の特徴すら掴めてない状況です。」
心奏は、自身が身をもって感じた事や体験したことを事細かに伝えた。
そして、母である早紀は心奏に対して質問はしなかったのだが、心奏の様子からある程度情報を読み取っていたのであった。
こうして、学園を巻き込んだ今回の事件を皮切りに心奏は、謎の人物に狙われるということになるのであった。
だがしかし・・・心奏だけでなく妹の心湊にも狙いの飛び火が起きるとは、この時の面々には想像すらつかないのであった。。。
果たして心奏は、学園に侵入した人物を特定して私立蕾学園を巻き込んだ第一の事件を解決することができるのであろうか・・・
心奏は、ひとつの事件をきっかけに、謎の人物から狙われる様になってしまう。
そして、心奏自身は、稀有な存在として扱われていくことになるのであった。