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虹の向こうにあなたがいる  作者: 広之新
第2部 現実世界編
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第68話 対決

 カートは「グラビティウス」を発動しようとしていた。この狭い部屋では逃れることはできないだろう。するとなぜかダイは身構えもせず、腕を下して無防備の状態になった。まるで挑発するかのように・・・。カートは眉間にしわを寄せた。


「何のつもりだ? こけおどしならやめろ! 無駄なことだ。俺の魔法は重力系。結界を張っても上から重力がのしかかるぞ!」

「やってみなければわからないだろう」


 ダイはカートを見据えながらそう言った。


「そうか。それほど俺の『グラビティウス』を食らいたいのだな。よかろう! おまえには強力に技を発動してやる! グラビティウス!」


 ダイが押しつぶされる・・・はずだったが、何も起こらない。ダイは平然としている。


「そんなはずは・・・、グラビティウス!」


 だがやはり何も起こらない。全く魔法が発動しないのだ。カートは「ありえない」と動揺していたが、すぐにその理由がわかったようだ。


「ふふん。魔法無効装置を使ったな。味な真似を・・・」


 ダイはこの部屋に入った時、魔法無効装置をセットしたのだ。それはミオから受け取ったあの小さな箱だ。それでこの部屋では魔法が使えなくなる。ミオがこの世界に来るにあたり、カートの重力魔法対策に父のダイタク署長から託されたものだった。


「カート! これでお前の魔法は使えない!」

「それはおまえも同じだ。どうやって俺を倒すつもりだ?」


 するとダイは拳を握りしめて身構えた。


「この拳で叩きのめすのみ!」

「フフフ。それは面白い。だがな。俺は監察警官だ。武術はお手の物だ。貴様のようなヤワな保安警察官が敵うと思うのか?」

「やってみなければわからない!」

「そうか! それなら試してやる!」


 カートが向かってきた。その動きはカンフーに近い。蹴りや突き、体をフルに使って連続攻撃をかけてくる。ダイもそれを防御してパンチやキックを放っていった。

 戦いは五分と五分・・・お互いに譲らない。カートは下がって距離を開け、息を整えた。


「なかなかやるな。俺の攻撃を受け止めるとは。だがずっとこうはいかんぞ」

「それはおまえもだ!」


 カートはまた攻撃を加えてきた。だが戦っているうちにダイはカートの動きが見えてきた。それで胸に一発をきめることができた。


「ううっ!」


 カートは声を漏らしてまた距離を取った。


「おのれ!」

「お前の動きは見切った。もうお前に勝ち目はない!」


 ダイは指さしてそう告げた。だがカートはニヤリと笑った。


「果たしてそうかな!」


 カートはまたダイに襲い掛かって来た。だがどの攻撃もダイに止められている。このままダイが押し切る・・・・ということにはならなかった。カートが口に含んでいた毒霧をダイの顔に吹きかけたのだ。


「うわっ!」


 ダイは慌てて後ろに下がった。目に入ったようで何も見えなくなっている。


「俺の隠し技だ。おまえの視覚を奪った。もう俺の動きが見えないだろう」


 カートのパンチがダイの顔面に炸裂する。


「ううっ!」


 ダイは声を漏らしたが何とかこらえ、両手を伸ばしてカートの動きを探った。だがカートは背後から蹴りや突きをきめていく。


「どうだ! このままなぶり殺してやる!」

「うううっ」


 カートの攻撃にダイは一方的にやられていた。


(このままではやられる。なんとか・・・)


 今は構えを小さくして防御に徹するしかない。背後を取られないように壁を背にして、相手の気配を感じて左右に動く。ダイは攻撃を受けながらもこの状況を打開する方法を冷静に考えていた。だがカートの攻撃に押されていき、部屋の隅に追い込まれた。


「もう逃げられまい! あきらめろ!」


 カートは勝利を確信していた。ダイは顔を守るため両腕のガードを上げた。それで腹はがら空きになった。それをカートは見逃さなかった。


「これで最後だ!」


 カートの右の突きがダイの腹に直撃してめり込んだ。ダイは「うっ」と声を漏らして口から血を吐き、体を丸めた。


「フフフ。どうだ? もう一発、お見舞いしてやろう!」


 カートは右手を戻そうとしたが、ダイがしっかり左腕で固めていた。


「なに!」

「これを待っていたんだ!」


 ダイはニヤリと笑って顔を上げた。そして同時に右手でパンチを放った。それは見事にカートの顔にヒットした。


「うぐっ!」


 カートは声を漏らしてのけぞるが、ダイはカートの右手を放さない。さらにパンチを叩きこんでいく。

 カートは離れようとするが、右手をダイの左腕で固められているためにそれはできない。何発も何発もダイのパンチを食らっていた。KOは近い。


「おまえが苦しめた人たちに代わってこの拳でお前を叩きのめす!」


 ダイはさらにパンチをカートの顔に放った。


「ぐうう・・・」


 カートが顔から血を流し、苦悶の声を上げた。


「思い知れ! これはおまえが殺したハンパの分だ!」


 ダイはパンチを腹に入れた。カートは「ぐうっ」と声を漏らして体を丸めた。


「そしてこれが沙羅の分だ!」


 ダイは思いっきり右腕を引いて渾身のパンチを放った。するとその威力でカートは後ろに転がっていった。

 ダイは自らの目にヒーリング魔法をかけた。それで少しずつ見えるようになった。カートは床に仰向けに倒れており、目を半開きにして気を失い、もう動けなくなっている。


「ふうっ!」


 ダイは息を吐いて、口から吐いた血を拭いた。体にかなりのダメージを受けている。よろよろと足を引きすりながらドアの方に少しずつ歩いて行った。


 ◇


 東山刑事たちは逃げた橋本取締官と藤堂を追った。2人は懸命に逃げている。それに藤堂が拳銃を所持しているため容易に近づけない。だがそれでもなんとか庭の片隅に追い詰めた。上野取締官が東山刑事に尋ねた。


「さあ、これからどうしましょう?」

「藤堂は拳銃を持っています。下手に近づけば危険です」

「私が説得してみる」


 大城取締官は建物の陰に身を隠しながら呼びかけた。


「橋本! 藤堂! もう逃げ場はないぞ。拳銃を捨てて出て来い!」


 藤堂はかなり動揺していた。


「おい! もうだめだ。逃げ場がない」


 横にいる橋本取締官にそう言った。


「ここで捕まったら刑務所からなかなか出て来れないぞ。何とか逃げ切るんだ。そうすれば異世界に行けるだろう? 向こうで身を隠せばいい」

「だがこうなっては・・・」

「俺に任せろ! 拳銃を貸せ!」


 そう言って橋本取締官は藤堂から拳銃を受け取った。すると何を思ったか、その拳銃の筒先を藤堂の頭に当てた。


「何をする! 冗談ならやめろ!」

「冗談なんかじゃない。おまえには人質になってもらうだけだ。さあ、立て!」


 2人は立ち上がった。橋本取締官が後ろから藤堂の頭に拳銃を当てている。その奇妙な光景に大城取締官が大声で言った。


「何の真似だ!」

「藤堂を人質に取った。拳銃を捨ててそこから離れろ! でないと藤堂を殺す!」

「馬鹿なことはやめろ!」

「俺は本気だ! さっさとしろ!」


 大城取締官たちは顔を見合わせた。


「橋本は藤堂を人質に取ったと言っている」

「何をいまさら・・・」

「しかし無下に藤堂を死なせるわけにいきません。橋本は追い詰められているから何をするかわかりません」


 3人がそう話していると、また橋本取締官が叫んだ。


「さあ、早くしないと藤堂が死ぬぞ!」


 彼は空中に「パーン!」と拳銃を撃った。早くしろと・・・。

 だが彼の背後から近づくものがあった。振り返ると無表情の2人の男だった。それがググトであることはすぐに分かった。


「ちょうどいい! おまえたち! 向こうの男を襲え! 腹が減っているのだろう?」

「ああ、腹は減っている。食い損ねたからな」


 2体の擬態したググトはじっと橋本取締官と藤堂を見ていた。その視線に橋本取締官は嫌な予感がした。


「お前たち。まさか・・・」

「もうがまんできない!」

「そんなことをしたらブツをやらないぞ。さあ、襲うのは向こうの男たちだ」

「もうブツなんてないんだろ? あるなら出せ! それならそうしてやるが・・・」


 そう言われたものの橋本取締官も藤堂もドラッグの持ち合わせなどあるわけがない。


「そうだろう? 持っていないな」


 2体のググトは触手を出して橋本取締官と藤堂に襲い掛かった。橋本取締官が拳銃を撃ったが、そんなものがググトに効くわけがない。彼らは触手にとらえられ、体を切り裂かれた。


「ぐあー!」


 叫び声が辺りに響き渡った。東山刑事たちは異変を感じて建物の陰から出てみると、橋本取締官と藤堂は2体のググトに食われていた。その残った顔は大きく目を見開いて恐怖を物語っていた。




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