第67話 大逆転
ダイたちに腹をすかせたググトの一群が襲いかかろうとしていた。魔法は使えず、拘束魔法で身動きさえままならない。
(もはや、これまでか・・・)
ダイがあきらめかけた時、いきなりバチバチと電気がショートする音が響き、照明が明滅して落ちた。辺りが暗闇に包まれた。
「何事だ!」
カートがわめき、元監察警官たちが右往左往した。ググトたちも急に何も見えなくなって困惑している。
「非常電源だ! 早くしろ!」
カートが叫んだ。すると元監察警官の一人がスイッチを切り替えた。それで薄暗い電灯だけがついた。大広間がぼんやりと明るくなる。だが何かおかしい・・・カートは違和感を覚えていたが、ググトに命令した。
「早く襲え! 餌は目の前だぞ!」
それを聞いてググトがダイたちに向かって行った。だがなぜかそれ以上、前には進めない。途中で見えない壁に当たって阻止されているようだ。
「結界か!」
カートは辺りを見渡した。すると男が一人、大広間に侵入して多重結界を張っている。カートは見覚えのある顔に驚いて声を上げた。
「おまえは123号!」
それはリーモスが秘密調査員だったときの番号だった。彼がこの世界に飛んで助けに来たのだ。リーモスは懸命に多重結界を張ってググトとカートを閉じ込めて動けなくしていた。
だがこの大広間に侵入したのは彼だけではなかった。暗くなってすぐにダイたちのそばに密かに潜り込んだ者があった。
「ミオ! 来てくれたのか!」
「ええ。管理官。私だって第3班です。遅ればせながらも加わります」
ミオはダイたちの魔法の首輪を外して拘束魔法を解いて回った。それでダイたちは自由になった。
「おのれ!」
カートが自ら重力魔法を出そうとした。しかし特別に厚く張られたリーモスの多重結界に阻まれていた。リーモスに「グラビティウス」をかけようにも距離が離れすぎている。だからカートは多重結界を少しずつ破壊していくしかない。その間にダイたちはカートの重力魔法をを気にせずに思いっきり戦うことができる。
「行くぞ!」
「おう!」
大広間にダイたちの掛け声がこだました。リーモスがカートの前以外の多重結界をを消すと、ダイたちはググトに戦いを挑んでいった。
ミオが「ライトニングショット!」でググトをしびれさせて動けなくして、ナツカが「ウォーターブレッド!」で水の弾丸で撃ち抜く。またロークが「ファイヤーボール!」をググトにぶつけ、燃え上がらせていく。逃げようとするググトはラオンが「ロックストライカー!」の魔法でダメージを負わせ、ダイが「ソニックブレード!」の超音波の剣で斬り裂いた。
いくら数が多くても相手が保安警察官ではググトの方が分が悪い。次々に倒されて泡になって消えていった。残ったググトたちは形勢不利と見て、部屋の外に次々に逃げて行った。
「何をしている! おまえたちも戦わんか!」
カートがぼうっと見ている元監察警官に檄を飛ばした。それでやっと彼らがダイたちに襲い掛かっていった。それぞれが得意な魔法を放っていく。だが戦意が低く、バラバラの攻撃では効果が薄い。ダイたちは熟練した精鋭チームなのだ。元監察警官たちは次々に傷ついてダウンした。
壁際にいた藤堂と橋本取締官はこの状況を茫然と見ていた。あれほど優勢だったのに完全にひっくり返されてしまったと・・・。東山刑事はその隙を見逃さなかった。横にいた大城取締官と上野取締官に合図した。
「今だ!」
東山刑事は橋本取締官に飛びかかった。それと同時に大城取締官と上野取締官は藤堂に向かって行った。
「おとなしくしろ!」
だが藤堂は2人の取締官をうまくいなして大広間から逃げ出した。
「待て! 藤堂!」
その後を大城取締官と上野取締官が追っていった。一方、東山刑事は橋本取締官を床に倒して取り押さえた。
「監禁の現行犯で逮捕する!」
東山刑事は橋本取締官の右手に手錠をかけると奪われた拳銃を取り返した。だがそこで不意打ちを食らってしまい、手錠から手を放してしまった。橋本取締官は右手に手錠をぶら下げたまま逃走した。
「くそっ! 逃がさないぞ!」
東山刑事はすぐに追いかけて行った。
カートは多重結界を何とか破ろうとしていた。だが今回はリーモスが特別に厚くこしらえている。時間をかけているうちに元監察警官の大方がやられてしまった。そうなるといくらカートでも班単位の保安警察官の相手をすることは難しい。
「おのれ! おぼえていろ!」
カートは開きっぱなしになっているドアから逃げた。部下たちを見捨てて・・・。それは元監察警官と戦いを繰り広げているダイに見えた。
「まずい! カートが逃げる!」
「管理官! ここは私たちが。追ってください!」
ナツカがそう言うとダイはうなずいた。
「では頼むぞ!」
するとミオが声をかけた。
「管理官。これを持って行ってください」
と小さな箱を投げてよこした。ダイはそれを受け取ってポケットに入れた。そしてすぐにカートの後を追って行った。
◇
カートはひたすら逃げていた。
(俺だけでも逃げきれたら組織はまた作れる。そうなれば奴らに復讐してやる!)
だが振り返ると、追ってきているのがダイだけであるのがわかった。それで考えが変わった。
「せめて奴だけでも抹殺してやる!」
カートは立ち止まり、ダイの方に体を向けた。ダイも止まって身構えた。
「カート! 観念しろ! おまえにはもう逃げるところはない!」
「フフフ。俺はまだ負けたわけではない。おまえは俺には勝てない。相手になってやる! かかってこい!」
だが不用意には近づけない。カートには重力技がある。それにとらえられたら最後、もう抜け出せない。間合いを十分とって戦うしかない・・・ダイは慎重だった。
「ソニックブラスター!」
超音波波がカートに向かう。だがカートは重力の結界で跳ね返した。
「そんな遠くからでは俺に傷一つ付けられんぞ! もっと近くに来い!」
カートは挑発する。だがダイはその手には乗らず、距離を保った。
「それならこちらから行くぞ! グラビティーウエーブ!」
カートは重力波を放ちながら接近してくる。ダイはそれを避けながら後方に下がり、「グラビティウス」の射程範囲には入らないようにしていた。だが次第に追い詰められていく。やがて後ろには部屋に通じるドアがあるのみ、もう左右には逃げられない場所まで来た。
「さあ! 俺の『グラビティウス』の餌食になるがいい!」
カートはゆっくり近づいてきた。ダイは何を思ったか、背後のドアを開けてその部屋に飛び込んだ。
「フフフ。部屋に逃げたか。だが無駄だ。俺の重力魔法は狭い場所にこそ大きな力を発揮する」
カートも続いてそのドアから中に入って行った。するとダイは堂々と腕を組んで待ち受けていた。カートはニヤリと笑った。
「いよいよ死ぬ気になったか?」
「いや、倒されるのはカート! おまえだ!」
「お前に一体、なにができる。おまえは俺に勝つことができない」
「それはどうかな」
「では試してみるか」
カートは身構えて「グラビティウス」の魔法を発動しようとしていた。




