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虹の向こうにあなたがいる  作者: 広之新
第2部 現実世界編
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第64話 秘密のデータ

 その隠れ家は町のはずれの一軒家で、魔法で遮蔽されて外からわからないようになっていた。


「ちょうど空き家だったんです。うまい具合に家具もすべてそろっています」


 ナツカが説明した。


「この世界はいいですね。電化製品という便利な物があるんですね。魔法を使わなくても何でもできる」

「テレビなんて面白過ぎる。中毒になりそうです」


 ロークとラオンはこちらの世界に染まってきているようだ。


「それにネット。様々な情報が得られました。それでこの世界について詳しくなりましたよ。管理官よりずっと!」


 ラオンは自慢げに言った。


「確かにそうだな。俺はむやみやたらにカートと沙羅を探していた。君たちが来てくれて心強い」

「そうでしょう。だから管理官には俺たちが必要なんです!」


 ラオンはうれしそうだった。


「それよりどうやってカートを追い詰めるか・・・そこが問題です」


 ナツカは厳しい顔をしていた。色々調べた彼女でもその手はまだ見つかっていない。


「うむ。そうだな。カートの弱いこところを突くしかない」

「それは?」

「カートはこの世界に逃げるためだけに来たんじゃない。もちろん沙羅への復讐だけでもない。別の目的があると思うんだ。そこがキーじゃないかな」


 ダイは腕組みしながら言った。それを聞いてロークは思い当たることがあった。


「調べたところ、レインボーと呼ばれるドラッグはまだ出回っています。カートたちが関与しているのは間違いないと思うのですが・・・」

「そうか。カートたちはこの世界でもドラッグを製造しようとしているかもしれない。今ある密売ルートを利用して。それでこの世界でも大きな力を得ようとしているのかも」


 そうなればこの世界はまた大きな被害を受ける。絶対に阻止しなければならない。


「その手がかりがあればいいのだけど・・・」


 ナツカの言葉に沙羅は思い当たった。沙羅はポケットからロケットを出した。


「もしかしてこのロケット。これがカートのアキレス腱じゃないかしら! 雄一さんがカートに渡そうとしていたから」

「このロケット? でも中に何も入ってなかっただろう」


 そのロケットについては以前、ダイも調べたことがあった。これは元々、ユリの物であり、カートの元から逃げる時に沙羅の兄の直樹に渡されたのだ。


「もっと調べてみる」


 沙羅はロケットのふたを開けて、中の「魔法の種」を取り出した。もう振ってみても何も出てこない。


「やはり何もないか・・・」


 しかし沙羅はあきらめずにロケットをこねくり回していた。すると手が滑って床に落としてしまった。


「あっ! どうしよう・・・」


 ロケットは真っ二つに割れてしまった。大事な思い出の品なのに・・・。ダイがそれを見て声を上げた。


「これは!」

「ごめんなさい。ダイ。これはあなたにとっても大事な物なのに・・・。どこかに修理に出すわ」

「いや、そうじゃない!」


 ダイは壊れたロケットを拾い上げた。その中に赤色の小さな破片が混じっていた。ダイはそれだけつまみ上げて目を近づけてみた。


「何なの?」

「もしかしたらデータが入っているかも。ユリは逃げる時に直樹に渡した。それはこのデータを役立ててもらうためだったのかもしれない」


 だがそれは異世界のマイクロチップのようなものだ。どうやってデータを引き出すのか・・・沙羅は興味津々に見ていた。


「端末があればいいのだが・・・」

「管理官。こちらの世界のものでもなんとかなると思います」

「よし。それなら・・・」


 ダイは沙羅の方を見た。


「わかったわ! 頼んでみる」


 沙羅はスマホで電話をかけた。


 ◇


 ここは麻薬捜査部のある建物の玄関。そこで大城取締官と上野取締官は人を待っていた。レインボーの捜査に重要な資料が見つかったと連絡を受けたからだ。


「主任。本当に異世界なんてあるのですか? お話を伺いましたがまだ信じられなくて」

「私も半信半疑だ。だがそう考えないと辻褄が合わない。今日持ってくる資料にもそれと関係しているかもしれない」


 2人がそう話していると、セダンの乗用車とワゴン車が到着した。セダンからは森野刑事と東山刑事が降りてきた。2人は正面ドアから入って行く。


「お待ちしていました」

「すいません。いきなりのことで・・・。署の方でやると頭がおかしいと言われるので」

「かまいません。いえ、ぜひともそれを見せていただきたくて。まずは奥に」

「ではワゴン車にいる方たちも一緒に」


 森野刑事の言い方からは同僚ではないように大城取締官には聞こえた。


「どなたですか?」

「我々の仲間です。でも驚かないでください」

「えっ! それはどういうことですか?」

「まあまあ。来たらわかります」


 少しして5人がワゴン車から降りてきた。大城取締官は彼らを観察した。一人は斉藤沙羅、斉藤直樹取締官の妹であり、写真で見たことがある。後の4人は・・・服装はラフなシャツとズボン、特に変わったところはない。その物腰から警察関係者みたいだが、どこの部署か見当がつかない。公安でも雰囲気がかなり違う。腕っぷしが強そうにも見えるので、もしかしたら軍関係者か・・・そんな風に思った。


 森野刑事一行は会議室に案内された。部屋に入ってイスに座ったところで早速、森野刑事が紹介した。


「斉藤沙羅さんは御存じですね。後の4人はダイさん、ナツカさん、ロークさん、ラオンさんです。驚くかもしれませんが彼ら4人は異世界の人間なんです」

「えっ! まさか! 本当ですか?」


 大城取締官は思わずそう声を漏らした。異世界の話は前もって聞いていたが、目の前にいる人たちが本当に異世界の住人とは思えなかった。


「本当です。異世界の人たちだといっても我々と変わらない」


 森野刑事はそう言ったが大城取締官は信じられなかった。横で聞いている上野取締官も同様だった。ダイは彼らが自分たちのことを疑っているのがわかった。これから協力してもらうためにはどうにかして信じてもらうしかない。それは・・・


「我々が異世界の人間だという証拠をお見せします。この世界には魔法がないはずです。しかし我々の世界では魔法は当たり前なのです。魔法をお見せします」


 ダイはそう言ってロークに火を出させたり、ナツカに水を流させたりした。だがそれでも大城取締官は首をひねるだけで何も言おうとしない。上野取締官は、


「うまい手品ですね。まったくトリックが見破れない」


 と的外れに感心するだけだった。ラオンは舌打ちして近くの窓を開けた。


「では窓の外を見てください!」


 ラオンは魔法の技を発動した。すると地面が「ドドドッ」と盛り上がり山のようになった。さすがにそれには大城取締官も上野取締官も口をあんぐり開けて呆然としていた。2人はかなりのショックを受けたようだ。ダイがラオンに小声で言った。


「やり過ぎだ」

「こうでもしないと信じてくれないでしょう」

「それもそうだが・・・。元に戻しておけよ」

「わかりました」


 ラオンは笑顔でそう答えて、地面を元に戻した。森野刑事がびっくりしている2人に話しかけた。


「さあ、これでおわかりいただけましたか?」

「え、ええ」

「では本題に。パソコンとプリンターは用意していただいているようなので始めてもらいます。ダイさん。お願いします」


 ダイはロケットから見つけた赤い破片を右手に握った。すると彼の頭に様々な資料が浮かんでくる。それを出力しなければならない。ダイは左手でパソコンに触れた。するとパソコンが動き出し、その画面に様々な資料を浮かび上がらせた。東山刑事はそれを次々にプリントアウトしていった。


「なるほど・・・」


 森野刑事から大城取締官、そして上野取締官から東山刑事へと資料が回っていく。やはりレインボーに関するものであることは確かなようだ。


「これは!」


 ダイはそこで重要な資料を見つけた。


「奴らはこの世界でも魔人草を栽培している。まだ少量ではあるがレインボーの製造をしている」


 恐れていたことがやはり行われていた。カートたちはこの世界でも同じことをしようとしている。それを聞いて大城取締官は大きくうなずいた。


「やはりそうか。その場所を押さえねばならない」

「ええ、必ず阻止しなければいけません! 我々はすぐに向かいます。あなた方にもご協力いただきたい」

「それはもちろんです。我々も準備ができたら向かいます」


 大城取締官は同意した。ダイは沙羅に尋ねた。


「場所は平良丘だ。わかるか?」

「ここから車で30分ばかりのところだわ!」


 沙羅はすぐにスマホで調べた。ダイはうなずいてナツカたちに言った。


「そこを叩けばカートには痛手のはずだ。みんな、すぐに行くぞ」

「私も行く。車の運転なら任せておいて!」


 沙羅はダイたちともにすぐに部屋を出て行ってしまった。外から急発進するワゴン車の音が聞こえる。


 あっという間のことで残された大城取締官たちはポカンとしていた。ただ森野刑事は感心していた。


「いつもながら行動が速い。やはりダイさんだな」

「あの人たちは何者なのです? 異世界で何をしているのですか?」

「同業者ですよ。彼らは異世界の保安警察官。人々の安全を守っているのです。さて、我々も行きましょうか。我々の手で処理しなければならない問題もありそうですから」


 森野刑事は腰を上げた。彼らもすぐに平良丘に向かうことにした。


 会議室は片付けられず、そのままになっていた。資料などが置きっぱなしになっている。そこに別の取締官が入って来た。その資料を見て、


「ほう!」


 と声を上げてニヤリと笑った。


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