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虹の向こうにあなたがいる  作者: 広之新
第2部 現実世界編
55/69

第55話 再会

 早朝からダイタク署長に電話がかかって来た。


「大変だ。ダイタク!」


 相手はシマーノ本部長だった。その様子から一大事が起こったのがわかる。


「いきなり慌ててどうしたんだ?」

「ダイが辞表を残していなくなった。もしかしたら向こうの世界に・・・」


 恐れていた事態が起こったのだ。決して許されないことをダイが・・・。ダイタク署長はできるだけ冷静になってこう返事をしておいた。


「わかった。もしかしてまだこの辺にいるかもしれないから部下に探させる」


 電話を切った後、ダイタク署長は我慢ができなくなって声を上げた。


「あの馬鹿が! 早まった真似を!」


 軽率なことはするなとあれほど口を酸っぱくして言っていたのに、ダイは行ってしまった。だがダイタク署長はダイの気持ちが痛いほどわかっていた。だからこそ止めたかったのだが・・・。彼は第1分署に電話をかけた。 


「アスカ・ダイ管理官が行方不明になった。今日の任務のない第4班と第5班に直ちに捜索させろ。特に三下高原を徹底的に。第3班には知らせるな・・・」


 電話で指示を与えた後、ダイタク署長はヤーク病院に向かった。そこにはミオが入院している。もしかしてダイが顔を出していないか確認するために・・・。

 ノックして病室に入るとそこにダイはいなかった。


「どうしたの? こんな時間に」


 ミオが不思議そうに尋ねた。ダイのことは知らせまいとダイタク署長は下手な嘘をついた。


「いや、お前の顔が急に見たいと思って・・・」

「何かあったのね。言ってよ!」


 ミオには何かあったと見抜かれてしまった。


「い、いや、何も・・・」

「もしかして管理官が? そうなんでしょう」

「いやいや、ダイは・・・」


 ダイタク署長が困っていると病室がノックされた。これで話を逸らすことができるとダイタク署長はわざわざ立ち上がってドアを開けた。するとそこにはナツカとローク、ラオンが立っていた。


「どうしたんだ?」

「署長。お話があります」

「まあ、いいが・・・まず中に入れ」


 ダイタク署長は3人を中に入れた。


「一体、どうしたんだ? こんなところまで押しかけてきて、私に話とは?」


 するとナツカが話し出した。


「管理官がいなくなったと聞きました。辞表を出して・・・。きっと管理官は向こうの世界に行かれたのです。カートを捕まえるため。そして沙羅さんを救うために・・・」


 もう3人の耳に入っていたのだ。 


「私たちを向こうの世界に行かせてください! 」

「お願いです。管理官の助けとなりたいのです!」

「たとえ署長の許可をいただけなくても我々は行く決意をしています!」


 3人は口々にそう言った。


「お前たちまで・・・。それがどういうことかわかっているのか?」

「はい。もしかしたら帰ってこられないかもしれません。それでもいいのです」


 3人の決意は固そうでダイタク署長は困っていた。するとミオが身を起こして言った。


「パパ、いえ、署長。私からもお願いします。ナツカさんたちを向こうの世界に行かせてあげてください。カートは多くの仲間とともに向こうの世界に渡ったのです。さすがに管理官一人では・・・」

「しかしミオ・・・」

「沙羅さんがいなくなってもダイさんの心の中にはまだ彼女がいるんです。私が入り込めないほど・・・。ダイさんは必死なんです。きっと自分の身を犠牲にしても沙羅さんを救おうと思うでしょう。ダイさんを助けてください!」


 そう言われてダイタク署長は「はあっ」と息を吐いた。


「仕方のない奴らだ。こんなにそろいもそろってバカどもがいるとは・・・」

「署長!」

「わかった。責任は私が持つ! 必ずダイを連れて戻ってこい! ロイ教授が次元の穴を閉じるのを何としても延期させておくから」

「署長! ありがとうございます!」


 ナツカたちは頭を下げた。こうしてナツカとローク、ラオンが向こうの世界に飛ぶことになった。


 ◇

 ―現実世界―


 大ホールではファッションショーが盛大に行われていた。華麗な服を身にまとったモデルがステージを闊歩する。SARAブランドが生まれ変わったことを発表するため、この場が設けられたのだ。

 集まった観客はその素晴らしさに熱狂していた。そしてショーの最後には惜しみない拍手を贈っていた。


「社長! 大成功ですね! これでSARAブランドは生き返りました!」


 山中は興奮していた。沙羅は大きくうなずいた。


「まあ、そうね。これでSARAブランドは立ち直るわ!」


 彼女には自信があった。自分のプラン通りにすればきっとうまくいくと・・・。それが実現しようとしている。


「これから記者会見よ! 気合を入れなくちゃ!」


 そう言って歩く沙羅の先に人影があった。


「沙羅さん! おめでとう! 素晴らしかったよ!」


 それは大きなバラの花束を抱えた野村雄一だった。


「雄一さん! 来てくれたの?」

「ああ。君が無事に帰ってきたのを聞いていたのだが、すぐに外国から戻れなくてね。とにかくよかった」


 雄一は沙羅に花束を渡した。彼は彼女にとってボーイフレンドという存在だった。兄の直樹の親友だったらしいが、落ち込んだ時期の彼女を献身的に支えてくれたのだ。


「お祝いをしたいよ」

「今日はだめなの。社長になったら勝手にできなくて・・・」

「それなら明日ならどうかな? いつものところで」

「ええ、多分、大丈夫」

「じゃあ、後で連絡するよ!」


 雄一はキザに右手を振っていた。沙羅も手を振って記者会見場に向かった。


(明日は雄一さんとデートか・・・。久しぶりね)


 沙羅の頭の中にはダイの姿が浮かんでいたが、それを無理に振り払った。


(この世界には雄一さんがいる。これでいいのよ。新たな恋をすればきっと忘れられる・・・)


 沙羅は自分にそう言い聞かせていた。


 ◇


 次の日の夜、沙羅は雄一とホテルの展望ラウンジで会うことになった。仕事を終えた沙羅が店に入ると雄一はすでに来ていた。


「待った?」

「いや、今来たところだよ」


 それはいつものお決まりの挨拶だった。2人はかつてのようにカクテルで乾杯した。


「SARAブランド復活、おめでとう!」

「ありがとう!」


 グラスを合わせてカクテルを流し込む。快い口当たりと軽い酔いが体を回る。雄一は沙羅がいなくなった時のことはあえて聞こうともせず、様々な楽し気な話題を振って話しかけてくる。沙羅もそれに合わせて饒舌に話していた。

 大人の会話を楽しむ恋人の2人・・・周囲にはそう見えていただろう。だが沙羅の中には冷めた目で見ているもうひとりの自分がいた。


(雄一さんはぽっかり空いた心の隙間を埋めてくれるのかしら・・・)


 ふと窓の空を見れば星が見える。異世界のようなきらめくほどの輝きはない。だがその弱弱しい光でさえもダイと見た夜空を思い出させていた。


(ダイはどうしているかしら・・・)


 沙羅はぼんやり夜空を見ていた。


「沙羅さん! どうかした?」


 雄一の呼ぶ声でふと我に返った。


「あっ! ごめんなさい。ぼんやりしていて・・・」

「疲れているんだろう。今日はこれでお開きにしよう。送っていくよ」

「いいの。ちょっと夜風に当たって帰りたいから・・・」


 沙羅はそう断って一人で外に出た。空にはやはりぼんやりした星がいくつか見えるだけだった。


「異世界の空は素晴らしかった。ここではこんな星しか見えない」


 沙羅は歩いていた。異世界のことを思い出しながら・・・。


(みんなどうしているかしら。ナツカさんたちは・・・毎日、パトロールしてググトと戦っているのかしら。ミオさんは仕事にもう慣れたかな。それにニシミさん。相変わらず近所の奥さんと井戸端会議を長々としているよね。ダイは・・・)


 ぼうっと歩いていると人通りの少ないところまで来てしまった。するとあの連続殺人事件のことが思い出された。


(あれはググトの仕業よ! この世界にググトが来ている。城北署の森野刑事に電話したけど、長期の休暇でいなかったし・・・誰に言えばいいの? あんな恐ろしい化け物に対処するのは保安警察官しかできないのに・・・)


 不安になってくると、後ろから誰かがついてきているように思えた。気のせいかと思ってみたが、耳を澄ますと確かに足音が聞こえる。


(つけられている? もしかしたらググトかも・・・)


 そう思った沙羅は走り出した。ググトに遭遇したときは逃げるのが一番・・・それは身についていた。だがその足音も同じようについてくる。


(まずい! 誰か、いないの?)


 すると前方からカップルが歩いてくるのが見えた。沙羅はとにかく誰かと会えたことでほっとして走るのをやめた。だがカップルが近づいて来て彼女は違和感を覚えた。それは・・・カップルが不気味なほどに無表情だったのだ。


「ググト!」


 そう声を上げた時にはカップルは触手を伸ばしていた。


「ここにいたか! 早速いただきます!」


 沙羅は反対方向に逃げようとしたが、慌ててしまって石につまずいて転んでしまった。2体のググトが沙羅に迫ってくる。


(もうだめ・・・・)


 沙羅は死を覚悟した。ググトの触手が沙羅をとらえようとした瞬間、何かの力が彼女の横を通り過ぎて1体のググトを吹っ飛ばしていた。


(魔法の技だわ! もしかしたら・・・)


 沙羅は振り返った。


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