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虹の向こうにあなたがいる  作者: 広之新
第2部 現実世界編
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第53話 命散る

 ハンパとミオの前に現れたのはカートとゼックだった。ナツカの読み通り、先ほどのググトたちはおとりだっだ。だがその後に出てくるのがカートだとまでは想像できなかった。ミオは「はあっ!」と息を吐いて緊張を解いている。


「ハンパさん!」

「ミオは班長に連絡して! 僕らは班長が来るまで時間を稼ぐ!」

「相手は2人です。何とかできそうです!」


 ハンパが制止す間もなく、ミオはカートたちに向かって走り出した。


「まずい! 班長! 班長! 応答してください!」


 ハンパは通信機で連絡をとりながら、ミオの後を追った。


 一方、カートたちは2人の保安警察官が向かって来ているのに気付いていた。


「ゼック! 蹴散らせ!」

「はっ!」


 ゼックが前に出ていき、ミオの前に立ちふさがった。


「おとなしく縛につきなさい!」

「ん? あの時の娘か。そうか、保安警察官になったのか?」


 ザックは秘密調査員65号であり、かつてミオを拉致したことがあった。


「あなたね! あの時の借りを返してやる! ライトニングショット!」


 ミオが雷撃を放ったがゼックは


「アースウォール!」


 で地面から土壁を出して防ぐ。そしてその壁に飛び上がると、


「ストーンスロー!」


 の魔法で石つぶてを飛ばした。ミオはとっさのことで防御魔法を発動できない。彼女に多数の石が向かってきた。


「プラントネット!」


 地面からツルが伸びてきてミオの前に網を作った。それが飛んできた石を防いだ。


「大丈夫ですか!」


 ハンパが追い付いて来て、魔法の技でミオを助けたのだ。


「もう一人いたのか? ん? おまえも見たことがあるぞ」

「おまえは! やはりあれもカートの仕業だったのだな」

「ふふん。それがどうした? そこをどけ! カート様がお通りになる! おとなしくすれば命だけは助けてやる」


 ゼックは2人を前にしてもまだ余裕綽々だった。


「なにを!」


 ミオはすぐに攻撃しようとしたが。ハンパが止めた。


「ダメです! 落ち着いて!」

「でも・・・」

「奴も元監察警官。侮れません」

「じゃあ、このまま道を開けろとでも?」

「いえ! 僕に考えがあります。それは・・・」


 ハンパはミオに小声で指示を与えていた。


「何をごちゃごちゃ言っている! どかないようならこちらから行くぞ! ストーンスロー!」


 ゼックは石つぶてを飛ばしてきた。2人が左右に分かれてそれを避けた。


「サンダーフォール!」


 ミオが魔法でゼックの周囲に雷を落とした。土煙が立って視界が奪われる。


「小癪な真似を! ストーンスロー!」


 ゼックは四方八方に石つぶてを放った。こうすれば当たらずとも、そばに寄って攻撃できないであろうことを・・・。だが土煙が晴れると周囲には人影はない。


「恐れをなして逃げたか!」


 ゼックはカートの方に戻ろうと後ろを向いた。すると右の地面からハンパが現れた。


「プラントロープ!」


 地面からツルが伸びてきてゼックに絡みついた。


「何だと!」


 そのツルはゼックの動きを封じた。すると左の地面からミオが姿を現した。


「ライトニングショット!」


 近距離からの雷撃は防ぎようがない。ゼックは雷にしびれて動けなくなった。


「やった!」


 ミオは声を上げて喜んだ。ハンパもほっとして息を吐いた。だがすぐに気を引き締めた。カートが近づいてきたのだ。


「相変わらず使えない奴だ・・・」


 カートはぶつぶつ言って歩いている。まるでハンパやミオが目に入っていないように・・・。


「待って! ここは通さないわ!」


 ミオが大声を上げた。


「俺の行く手を阻止しようというのか! おもしろい! かかってこい!」

「じゃあ、行くわよ!」


 ミオが前に出ようとしたのをハンパが止めた。


「やめるんだ! 相手はカートだ!」

「じゃあ、このまま見逃せっていうですか! そんなことはできません!」


 ミオは振り切って前に出た。


「ライトニングショット!」


 ミオは雷撃を何発もお見舞いするが、防御魔法を使うカートに傷一つ付けられない。


「生意気な女め! グラビティウス!」


 カートが右手を出した。するとミオの体に重力がのしかかり、彼女はうつぶせに倒された。


「ミオ!」


 ハンパが叫んだ。ミオは強い力で上から抑えられて身動きできない。


「このまま押しつぶしてやる!」

「ああ!」


 ミオは悲鳴を上げた。このままでは彼女の命が危ない・・・。


「ミオを放せ!」


 ハンパがカートに挑みかかっていった。


「リーフカッター!」


 植物の刃がカートを切り裂こうとする。だが


「グラビティーウエーブ!」


 を放って、その刃を破壊していく。だがハンパは攻撃の手を緩めない


「プラントロープ!」


 地面からツルが現れ、それがカートに向かって行った。それが何度もカートを打ち付ける。だが防御魔法で効果が少ない。


「プラントナイフ!」


 ハンパは接近戦に持ち込もうとした。防御魔法の内側に入り、鋭いナイフを突き立てようと・・・。カートはプラントロープをはね返すのに気が取られている。ハンパは思った通りにカートに接近できた。そして右手を振り上げて鋭いナイフで切りつけようとした。


「なめるな! 小僧!」


 ハンパの右手はカートの左手にがっちりつかまれていた。


「そんなことで俺がれると思ったのか! グラビティーウエーブ!」


 カートは近距離で右手で重力波を放った。


「ぐはっ!」


 その衝撃でハンパは口から血を吐いた。


「逆らうものはこうだ。見せしめにしてやる!」


 カートは何発も重力波をハンパの腹に放った。そのたびに肉が崩れるような音がして内臓はズタズタになった。ハンパは力なくその場に倒れた。


「今度はおまえの番だ!」


 カートはうつぶせに倒れているミオを見た。魔法が解除されたが、先ほどまでの重力の圧迫のダメージで動くことができない。ミオは死を覚悟した。

 するとその時、虹の光が現れた。ワームホールが開いたのだ。


「命拾いしたな!」


 カートはミオを放っておいて虹の光に向かおうとした。


「ま、待て!」


 ミオは右手を伸ばして叫んだ。彼女にできるのはそれだけだった。


「ダイに伝えとけ! お前の女を真っ先に殺す! それを阻止したいのなら向こうの世界に来い! いつでも相手してやるとな!」


 カートはそう言い捨てて虹の光に消えていった。


 ◇


 カートが現れたことをダイはまもなく知った。第3班のハンパからカート出現の連絡があったと、ナツカが通信機で元管理事務所に報告してきたのだ。


「カートが!」


 ダイはいても立ってもいられず、すぐに飛び出していった。ダイタク署長が止めるのも聞かずに・・・。


(どうか僕が行くまで皆無事でいてくれ!)


 祈るような気持でダイは現場までひたすら走った。だがそこで彼が見たものは・・・


 ナツカがハンパの亡骸を抱きしめて泣いていた。普段冷静な彼女は人目もはばからず大声を上げて・・・。


「どうして・・・どうしてよ! ハンパ! こんなことならもっと鍛えたのに! 勘弁してくださいっていうまで・・・うわあ・・・」


 ハンパは口から血を流して苦しげな顔をしていた。かなりカートに痛めつけられて殺されたように見えた。

 そしてミオは傷だらけになって倒れており、ロークとラオンにヒーリング魔法をかけている。だがまだ意識は戻らない。


 ダイはその光景を前にして愕然としていた。もし自分が現場に出ていたらこんなことにならなかった。ハンパが死ななくてもよかったのではないか・・・彼は後悔と自責の念にとらわれていた。


「管理官! ミオが意識を取り戻しました!」


 ラオンが大声を上げた。ロークとラオンががんばった甲斐もあって、ミオは目を覚ましたのだ。ダイははっとして駆け寄った。


「ミオ! しっかりしろ!」

「か、管理官。カートが向こうの世界に・・・。カートは沙羅さんを殺すと言っていました・・・」

「沙羅を!」


 ダイは思わず声を漏らした。カートが執拗に沙羅の命を狙っている・・・。


「さ、沙羅さんが危ない。沙羅さんを助けて・・・」


 傷ついたミオは懸命に伝えようとしていた。


「もういい。しゃべるな。後はなんとかする」


 それを聞いたミオは安心したのか、また気を失った。


 ◇

 ー現実世界ー


 カートは無事に現実世界にたどり着いた。そこは夜の三下山だった。


「こんなところか・・・」


 カートはライトをつけて辺りを見渡した。そこは鬱蒼とした山の中だった。そこに光りに導かれて、保安警察官の手から逃れて来た元監察警官とググトが集まって来た。


「全部でこれだけか?」

「はっ! やはり奴らの妨害は甚だしく・・・」

「まあ、よい。これだけいればなんとかなろう。ところで迎えは?」


 そう話していると遠くからまた別の光が見えてきた。カートはライトを大きく回して位置を知らせる。


「お待たせしました」


 そこには2人来ていた。目付きが鋭く、彼らも元監察警官のようだった。


「カート様。お待ちしていました」

「ドゴス。ギース。ご苦労! こちらはうまくいっているか?」

「はい。ボスは今日は取引に出ています」

「うむ」

「まずは我らのアジトにお迎えいたします。どうぞ」


 すると人間に擬態しているググトが騒ぎ出した。


「そうか。わかった。こいつらは街に放て! 食事をしたいそうだ」

「わかりました。そうします」


 カートたちは三下山を下り、大型のワゴン車に乗せられてアジトに向かって行った。一方、ググトたちはその途中で放されたのだ。それで腹をすかせたググトが街をうろつくことになった。月がなく、雲で星が隠れたその夜、暗闇の中で街は血に染まろうとしていた。




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