002 - こんなにいたいなんてきいてない! -
・・・
「落ち着きましたか?勇者様」
僕の身体を改造した主任エンジニアだという男が話しかけてきた。
ちなみにこの男もなかなかのムキムキマッチョだ、僕はまだ怒りと戸惑いでおかしくなりそうだがそれでは話が進まないので持てる理性を総動員して答えた。
「うん・・・落ち着いたから拘束を解いてよ、僕の身体がどうなっているのか確認させて欲しい」
「まだ出力を1000分の1に下げていますので立ち上がる事は不可能です、ローブを取りますね」
ばさっ・・・
「姿見を勇者様の前に・・・」
エンジニアの指示で部下と思われる作業服の男達が奥から大きな鏡を持ってきた。
「なっ・・・なんじゃこりゃぁ!」
まず視線を下に向けると僕の胸が見えた、見慣れた大きさのささやかな膨らみ・・・その下にはシートベルトくらいの太さの金属帯が腰を車椅子に拘束していた。
太ももやお腹は特におかしな所が無い、だが膝から下は・・・よく見えないから姿見で確認すると明らかに機械だ、関節部分がメカメカしい。
それに踵の部分がハイヒールっぽい、こんな靴履いた事ないから足首がコキッってなりそうだ。
車椅子に拘束された腕も肘から先が機械だった、鋭い爪の生えた鎧のような形で男の子が喜びそうなデザインだ、腕と脚以外は全体が黒いボディスーツのようなサラサラの生地でぴったりと覆われ身体の線がはっきり出ていてとてもエロい。
「この爪だと食事するのに不便だ・・・」
僕は凶悪な爪の生えた指をガチャガチャいわせてスチール・カーンと名乗るエンジニアを見た。
「お食事は必要ありません、動力源は胸の中に入っている2個の魔石で片側だけでもこの世界の時間で10年は連続稼働が保証されており、指先の部分や皮膚の表面は感度センサーを備えていて生身の時と同じ感覚を・・・」
よく分からないけれど食費がかからない身体になってしまったようだ・・・。
「手と脚の見た目がいかつくて嫌だ」
「オプションで生身と同様の腕と脚を取り揃えております、非戦闘時には工具一つで簡単に取り替えが可能で人工皮膚を構成するナノマシンが自動的に表皮を継ぎ目無く整えて・・・」
出たよ謎技術!、ナノマシンって何だよ?。
「この服も嫌だ、胸やお尻の形がはっきり分かって恥ずかしい・・・」
おい!、今僕の胸に視線を向けて憐れむような表情しなかったか?。
「勇者様の身体の表面を覆っているのは人工皮膚でして、耐刃耐熱はもちろん耐衝撃にも非常に強く・・・」
「待って、これが皮膚?、じゃぁ僕は今沢山の人が見てる前で全裸なの?」
何で目を逸らすんだよ!。
「我が国の法律では全身の9割以上に機械化改造を受けた者は外見で判別出来るよう極力衣服は身に付けない決まりとなって・・・いえ!、特別に勇者様は上から羽織る簡易的な衣服を直ちに準備するよう手配を・・・」
この恥ずかしい姿で外を歩くのか!、冗談じゃないぞ!、僕がそう叫ぼうとしたらスチールさんが察してくれたのか服が用意される事になった。
「僕の目の色が赤い、元は黒かった筈だけど・・・」
「召喚により勇者様の肉体的な疾患部分は全て健康な状態となりましたが魔王と戦い勝利を確実なものとする為にあえて全身の殆どを機械に置き換えております、もちろん眼球に関しても最高性能の義眼で最大500倍のズーム機能が・・・」
「・・・結局僕の身体で生身の部分ってどこよ!」
「頭部・・・脳と脊髄の他は全て強化金属の骨格と人工筋肉、人工血液、人工皮膚で出来ております、これらは最高性能の軍用部品を使用して・・・」
「それほぼ全部機械って事だよね!、僕を召喚する必要なくない?」
「いえ、勇者様の脳と脊髄が重要なのです、これまでの研究ではこの2つを移植する事によって勇者様の能力が全て受け継がれ・・・」
過去に勇者を解剖した事あるみたいな言い方だな!・・・怖くなってきたし聞かなかった事にしよう。
「顔も少し雰囲気が違ってる・・・っていうか僕こんな美少女じゃなかったよね?」
「機械のボディは勇者様の生身の肉体を正確にスキャンして作られておりまして、お顔の造形もほとんど変えておりません、ただ・・・申し上げにくいのですが配置が少し崩れておりましたので正しい位置に微調整する事により一層見栄え良く・・・」
「配置が崩れてて悪かったな!」
それに自由に造形出来るなら何で貧乳のまま・・・いや、元の体型は嫌いじゃなかったから下手に巨乳にされても邪魔になるだけか・・・。
改めて姿見を確認する、身体の大きさや顔の雰囲気は確かに僕なのだが背中には大きな翼があった・・・まるで悪魔みたいに黒くて禍々しい、これは金属製かな?・・・羽根の先が鋭い刃物みたいで触れたら切れそうだ。
うぃぃぃん・・・
ばさっ・・・ばさっ・・・
「その翼も着脱可能でして、非戦闘時は取り外して・・・」
スチールさんが僕の考えている事を察したのか先に答えてくれた。
「それで、国王陛下・・・」
「な・・・なんだろうか勇者殿」
すっかり怯えてるなぁ・・・でももう一つ確認しておきたい重要な事がある。
「僕が貴方達の言う事を聞かないで暴れた時に抑える為の対策はしてるよね、例えばボタン一つで苦痛を与えたり・・・」
そう、僕と自称国王は初対面だ、僕の性格を知らないだろうし危害を加えない保証は無い、だから僅か数メートルの距離で向き合うなんて危険な事をするのなら何かしてる筈だ。
また目が泳いでるし!・・・この自称国王考えてる事が表情に出過ぎだろ・・・見た感じ悪人じゃなさそうだけど・・・。
「私がお答えします、勇者様を信じていない訳では無いのですが安全の為、身体に保護装置を取り付けさせて頂いています」
スチールさんが答えた、思った通りだ・・・。
「何を付けているの?、もし僕が今ここで暴れたらどうなるのかな?、僕痛いの嫌いなんだけど」
「王族が魔力を浴びせると全身に耐え難い苦痛を与えます、さらに強い魔力を加えると脳の機能が停止し死亡します」
「・・・そう」
ごごごごご・・・
「ま・・・待て勇者殿、私達はそのような非人道的な事をする気は全くない、だが何かの誤解があって国民に刃を向けた時には召喚を命じた私が責任を持って止めなければならない、だから・・・その・・・」
そんな事だろうと思ったよ、でもここで突っ込ませて貰うと人の身体を勝手に機械にするのは非人道的じゃないのか?。
「やってみて・・・」
「勇者殿・・・何を言って・・・」
「僕だって意味もなく暴れたり何もしてない人を殺すような事はしないよ、でもどれくらい痛いのか知りたいし、一度体験してどうなるのか知っておかないと怖い」
「いや・・・だが・・・」
自称国王本気で悩んでるよ、基本的に良い人・・・なんだろうけど大国の指導者には向かない性格だよね。
「いいから早く!」
「分かった・・・だが痛いと思うぞ」
自称国王が僕に手を翳した、わずかに手のひらが光る・・・これが魔力?。
そう思った瞬間僕の全身を引き裂くような激しい痛みが襲った。
「ぎゃぁぁぁ!、痛ったぁぁい!」
僕はあまりの痛みで思わず車椅子から立ちあがろうとして頭からこけた、これはダメだ!、絶対に耐えられない。
「わぁぁぁん!、もう無理っ!お願いやめて痛いよぅ!」
自称国王が翳している手を引っ込めた、魔力の放出が止まったようだ。
「はぁっ・・・はぁっ・・・ぐすっ・・・ひっく」
機械の身体になったのに何故か涙と鼻水が出てるし・・・。
「強い刺激を受けると生身の人間と同じように涙や鼻水が出るように設計されております」
スチールさんがハンカチで僕の顔を拭きながら何か言ってるけれどそれどころじゃない・・・こんなに痛いなんて聞いてない!。
「うぅっ・・・痛い・・・」
「大丈夫か?」
車椅子ごとこけた僕を起こそうと自称国王自ら駆け寄ってきた、普通は臣下にやらせるだろう、こいつ本当にいい人だわ。
「うぐっ・・・大丈夫・・・これじゃぁ命令には逆らえないね・・・まるで奴隷だ・・・」
「私は勇者殿を力で無理に従わせるような事は絶対にしない、お互い信頼関係を築きたいのだ、私利私欲でこのような力を使う事はしないと誓う」
「人の身体を勝手に改造しておいて信頼関係も何も無いよね・・・絶っ対に許さないから・・・」
「うぐっ・・・」
また自称国王が涙目になったからこの辺でやめておこうか。
読んでいただきありがとうございます。
諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
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