012 - (最終話)ぼくはいせかいにしょうかんされた! -
・・・あれから異世界の時間で5年が過ぎた。
結局僕は日本では行方不明という設定にして警察に捜索願いを出して貰った、おそらく将来的には長期行方不明で死亡扱いになるだろう。
もちろん時々日本のお家に来てアニメを見たり漫画を読んだりという生活もしている・・・実家で居候する為の資金は向こうの金貨だ、金貨一枚が日本円で40万円になった、両親にも生活費として渡したし兄さんも欲しそうにしていたから少しあげた。
両親と兄さん、それから親友の華羅葉ちゃんを異世界に招待して王都ゼーレやオルカの街を観光したり・・・僕の三拠点生活はとても充実している。
華羅葉ちゃんは大学を卒業して地元企業に就職した、趣味で僕をモデルにしたお話を書き、小説投稿サイトで公開したらなんと特別賞なるものを貰い今度書籍化するそうだ。
兄さんはお母さんの実家のラーメン店を継いだ、おじいちゃんが始めた生姜入りラーメンのお店「子供がまだ食ってる途中で生姜!」は最近「喰らうログ」や食べ歩き動画で紹介されて行列が絶えない。
「いらっしゃいませー」
「お嬢ちゃん美人だねー、今度おじさんと・・・」
「ごめんなさい、僕もう結婚してるんだぁ」
「ままー」「ままー」
僕はお客に愛想を振り撒く銀目黒髪の双子ちゃんを横目で見ながらおじさんに答える。
「えぇ・・・その若さで・・・お子さんいくつ?」
「今年・・・5歳だった・・・かな?」
「うん!ゆい5しゃい!」
「れい!、5ちゃいだ、ゆいしょあるおるねんけの・・・」
「はいはい、分かったから2人とも奥で遊んでてねー」
僕は秋冬限定で兄さんのお店を手伝っている、夏はダメだ、厚着してたら変な目で見られるから・・・でも上から服を着込める秋や冬なら大丈夫だ。
双子ちゃん達は時々会いに来る僕にやたらと懐いてくれた、ダニー様からも溺愛されて元気に育っている、試しに日本語を教えるとすぐに覚えてしまった・・・うちの子達天才か!。
最初は日本に異世界人を連れて来て大丈夫か不安だったがスチールさん達と協力してローズマリー王国の先進技術を使い改めて検証して貰った、結果は地球と異世界の環境は全く同じ、調査に来たスチールさんは日本の街並みを興味深そうに観察していた。
国王の話だと過去の勇者達も自分の故郷に異世界で出来た家族や友人を連れて行った実績があるらしい。
うちのラーメンはアンジェちゃんにも好評だ、一度食べさせたらハマってしまって会うたびに次はいつ連れて行ってくれるのかと迫られて困っている、最近はようやく義母離れも出来たようで、次期領主としてのお勉強を頑張っているようだ。
ダニー様とも定期的に交流がある、王家主催のパーティには一緒に出席するし子供達の事もよく話し合っている、最近は外見に憂いと渋味が更に増してとてもダンディだ・・・執事さんの話だと僕を意識しているらしいのだが恋人という感じにはなっていない不思議な関係が続いている。
国王陛下は周囲の反対を押し切りミィちゃんに行った検証実験の内容を公開した、未成年の少女を使った非人道的な実験は全て国王である自分の命令で行ったものでありアルミィ・カーン嬢も国を救った勇者チームのメンバーである・・・そう公表して王位を退こうとした。
一部の団体が騒いだものの、勇者の活躍の影に隠れた少女の物語は国民を感動させ署名運動が勃発、遂には国王の退位発言を撤回させる結果となった・・・よかったね国王。
僕の平穏な毎日は続いている、目立つのが苦手な勇者殿の強い希望だからと僕が街を歩いていても誰も英雄扱いして騒がない。
王都の中心には僕の大きな石像が建っているし皆の視線は感じるのだけど普通に外で買い物が出来る今の扱いは結構居心地がいい・・・。
ある日ミィちゃんと王都のショッピングモールでお買い物をした時そこで不穏なものを見つけてしまった、「リィ〜勇者伝〜」という豪華な装丁の本だ、この世界でも今は電子書籍的な物が普及しているが贅沢品として紙の本は富裕層に一定の需要がある。
中を少し読ませて貰って驚いた、王城でダニー様と僕が出会い激しい恋をするという事実とは異なる内容だった。
スチールさんに聞くと最近は素人やプロ作家問わず勇者の二次創作や恋愛ものが流行っているらしい、慌てて小説投稿サイト的なもの「カクノヂャ・ヨムノヂャ」を見ると大量に僕関連の小説や漫画が投稿されていた・・・。
一番凄かったのは魔王に捕まった僕があんな事やこんな事をされるという成人指定の小説だ、悔しい事に文章が上手いし最後まで一気に読ませるほど面白い、魔王と共に闇堕ち勇者が世界を滅ぼす展開も熱かった、作者へ感想が書けるようだったので送ってみた。
今の僕の生活拠点はローズマリー王国の辺境、オルカの街、ここで不定期営業の雑貨店を開いてのんびり暮らしている、商品は日本の通販で買ったちょっと珍しいものや可愛いもの、特に人気なのは有名キャラクターのぬいぐるみだ、棚には⚪︎ラックマや⚪︎いかわ、⚪︎みっこぐらし、⚪︎れぱんだが詰め込まれている。
生身の時には行けなかった旅行も好きになった、時々お店を閉めて色々な場所を訪れこの国を知り尽くそうと頑張っている、もちろん日本でも沢山の場所に行った、同行者はアンジェちゃんやミィちゃん、華羅葉ちゃんだ。
僕を含めた異世界組は戸籍やパスポート、身分証明書が無いから職質されないかいつもドキドキだ。
バタン・・・
「今日もいい天気だねー、お店の前を掃除して開店準備・・・っと」
「リィお姉ちゃん、通販の注文が3件入ってたよー」
「ありがとうミィちゃん、後で確認しておくね」
最近またスチールさんのお仕事が忙しくなって・・・ミィちゃんが寂しそうだったからオルカの街の僕のお店でしばらく一緒に生活する事になった、大都会で生まれ育ったミィちゃんには田舎での生活は新鮮だったようで毎日がとても楽しそうだ。
ミィちゃんは今年で12歳、お店を手伝うと言ってくれたのだけどまだ一人では任せられない、僕が居る時に少し手伝って貰っている・・・っていうかこんな辺境の雑貨店に大勢お客が詰め掛ける事も無いから基本的に人手は足りている。
ピピッ・・・
「あ、着信だ・・・指名依頼?」
「・・・えーと、オルカの隣街の山奥で翼竜の目撃情報あり、周辺に金級のハンター不在のため討伐を依頼・・・か」
隣街のハンターギルドからの依頼・・・ハンターというのは魔物を狩ったり住民からの依頼をこなしたりしてお金を稼ぐ商売だ、僕も登録したのだけど謎の力が働いていきなり金級に昇格してしまった、おそらくあの国王の仕業だろう。
翼竜・・・魔物の素材は貴重な資源でもあるが騎士団が動くと過剰戦力になる、かと言って一般市民が対応するには危険・・・。
だからハンター達に駆除と素材回収の依頼が出る、地球の案件で例えるなら熊や猪が出たから猟師さんに頼もう・・・みたいなノリだ。
国王は僕が辺境に引き篭っているのを武力の無駄遣いだと嘆いていた、どうにかして王国騎士団に入れようと動いているようだが僕は血生臭い権力闘争や人付き合いが苦手だから今も逃げ回っている。
「さて、隣の街まで列車で半日、飛んだ方が早いかなぁ・・・」
僕はお店の扉に「臨時休業」の札をかけ徒歩数分の所にある東門に向かう。
「ミィちゃん、お昼過ぎまでには終わると思うからお留守番お願いねー」
「うん!、分かったー」
じゃんぷっ!
しゅおぉぉぉ・・・
「おや、勇者・・・じゃなかった、リィちゃんお出かけかい?」
僕に声を掛けたのは顔見知りの女性騎士様、街の出入り口である門を守る為に交代で勤務している。
「あ、リリアお姉さん、ちょっとハンターのお仕事が入ったの!」
「気をつけてねー」
「はーい」
しゅおぉぉぉ・・・
おぉぉぉ・・・
ぉぉぉ・・・
ぉぉ・・・
・・・
僕はある日突然異世界に召喚された、でも今は幸せ・・・かな?。
理衣さんは異世界に召喚されましたぁ!。
〜病弱な僕だけが魔王を倒せるらしい〜(完)
(柚亜紫翼からのお知らせ)
「〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜」250話突破記念、「理衣さんは異世界に召喚されましたぁ!。〜病弱な僕だけが魔王を倒せるらしい〜」をお読みいただきありがとうございました。
鋭い人なら気付いているかもしれませんが、〜リーゼロッテさん〜の主人公、田中理世さんの初期案を元にしてこのお話は作られています。
当初、リーゼロッテさんのお話を書き始める前に異世界「転生」にするか、異世界「転移」にするか迷った事がありまして・・・伊達覇理衣さんは異世界「転移」版の田中理世さんです。
なのでお話の内容がリーゼロッテさんやスペースシエルさんとよく似ているし、今後リーゼロッテさんのお話の中に登場するネタも入っています。
結局、異世界転移にすると考えていたお話を上手く全部盛り込む事ができないと判断して田中理世さんにはテロリストの手によって死んで貰いました。
このお話を書くにあたって目標とした事は「出来るだけ短く、1話3000−4000文字程度」「10話完結を目標に」です、リーゼロッテさんが250話10万文字時超えの長いお話なのでこちらはサクッと読み終わる作品にしたいと思っていました。
まだまだ書こうと思えば続けられるのですが、それだとリーゼロッテさんの執筆に支障が出てしまうのでこの辺で一旦完結とします。
このお話を楽しんで貰えたなら嬉しいです。
あと、〜リーゼロッテさん〜の方はまだまだ続きますので応援よろしくです。
読んでいただきありがとうございます。
諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
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