目が覚めたら、女神に踏まれていた！？

第9話 加護

　明日から、森に入る。

　正直言って、森は怖い。

　何が怖かって…。

　それは、とうぜん、『虫』だ。

　＿＿あれは、ぜったいダメ。

　まず、小さいのがダメ。

　気がつくと、目の前にいたりする。

　ほとんど、気配が感じられない。

　＿＿ううっ。

　思い出しただけでも、ぞっとする。

　ぼくだって、『益虫』の存在くらい知っている。

　でも、ぼくの眼の前で、ボランティアしてくれるわけじゃない。

　だから、単なる知識にすぎないんだ。

　リアルの蜘蛛を見て、『益虫』と思えるひとってすごいと思う。

　いや、きっと、うまれつき蜘蛛が好きなひとなんだろう。

　＿＿森は、虫の巣窟だよ。

　キレイな蝶や、かわいいてんとう虫だけじゃない。

　おぞましい虫もたくさんいるだろう。

　いや、蝶やてんとう虫だって、うじゃうじゃいれば恐ろしい。

　ぼくは、キャンプなんて大嫌いだった。

　虫がいるから。

　アウトドアライフなんて、何の冗談かと思う。

　そんなに、虫と仲良くなりたいんだろうか？

　ぼくは、忘れていた。

　異世界は、剣と魔法と《《虫》》の世界だったんだ。

　＿＿虫除けスプレーとか、作れないかな。

　せめて、虫除けの網とか。

　でも、【自給自足】じゃ、粉や水しかつくれないし。

　虫よけの魔法ってないんだろうか？

　でも、ぼくは、【氷礫】以外は使うなって言われてる。

【氷礫】が、パチンコ玉サイズになるまで、他の魔法は使うなって。

　＿＿魔法がダメなら、【加護】か？

【卵ハウス】は、『惑星が割れても大丈夫』仕様。

【不壊の加護】が、かけられているからだ。

　そういえば、女神は、『【加護】もたくさん掛けてある』って言っていた。

　ほかに、どんな【加護】が掛けられてるんだろう。

　そういえば、【卵ハウス】の【加護】を調べたことってなかったな。

　ぼくは、あらためて、【卵ハウスの管理画面】を開いてみた。

　＿＿えーと。

　たしかに、【加護】というタブもあるな。

　ちょっと見てみるか。

【加護のタブ】を開くと、ずらりと項目がならんだ。

　①　不壊　

　②　不倒　

　③　快適　

　④　浄化

　⑤　的中

　⑥　加速

　⑦　反射

　⑧　収集

　⑨　結界

　女神の言うとおりだ。

　たくさんあった。

『②　不倒』とか、納得だね。

　倒れたら、大変だもの。　

【卵ハウス】の中が、ぐちゃぐちゃになるよ。

　でも、奇妙なのもある。

　まず、『⑤　的中』。

　いったい、【卵ハウス】が、何に命中するっていうんだろう。

　なにかの比喩なんだろうか？

　それに、『⑥　加速』。

【卵ハウス】が、『加速』するの？　ありえないよね。

　やっぱり、これも比喩かな？

　さらに、『⑦　反射』と『⑧　収集』。

　いったい、何を『反射』して、何を『収集』するんだろう。

　これも、まったく【卵ハウス】と関係ないよね。

　これも、比喩だとすると、比喩だらけなんだけど。

　とにかく、【卵ハウスの加護】は、謎だらけだな。

　＿＿あれ、もしかして。

　ぼくは、【ステータス画面】を開いてみた。

　タブは、たしか、三つあったはずだ。

　あの時は、【スキル】しか見ていなかったけど…。

　①　【ステータス】

　②　【スキル】

　③　【加護】

　＿＿あった。【加護】だ。

【加護】のタブをクリックしてみる。

　①　不壊　

　②　------

　③　快適　

　④　浄化

　⑤　的中

　⑥　加速

　⑦　反射

　⑧　収集

　⑨　結界

　＿＿なるほどね。

【卵ハウス】と同じ【加護】が、並んでる。

　女神が、チュートリアルで言っていたんだ。

『シュウと【卵ハウス】は、一心同体だ』って。

　なんで、家と一心同体なんだろうって思ったけど。

　こういう意味だったんだ。

　でも、こっちは、『②　不倒』が空白になってる。

　そりゃ、そうか。

　こんなのがあったら、寝られない。

　横になれないんだからさ。

　他のも、たしかに思い当たることがある。

『③　快適』だ。

　外へ出た時、暑いとか寒いって思ったことがない。

【卵ハウス】のなかと同じ。

『適温適湿』って感じだった。

　きっと、これのお陰だったんだ。

　そして、『④　浄化』

　服が、汚れていたことがないんだ。

　それに、体も、汚れていたことがない。

　もちろん、汚れるようなことをしてないのもあるけど。

　たぶん、これが働いていたんだ。

　①　不壊　③　快適　④　浄化　

　この三つは、常時発動してるらしい。

　日常生活でも絶えず、女神に守られていたんだ。

　ほんとうに感謝しかないな。

『⑤　的中』以降は、【ON・OFF】がある。

　任意で発動する【加護】らしい。

　いまは、ぜんぶ、【OFF】になっていた。

　＿＿うーん。

『⑤　的中』って、要するに、命中率が上がるんだろう。

　石を投げるのって、立派な攻撃手段だと思う。

　ぼくは、肩には自信があるんだ。

　それに、魔法。

【氷礫《アイスバレット》】を練習しろって、女神に言われてる。

　つまり、【氷礫《アイスバレット》】は、撃てるってことだ。

　＿＿よし。　これは【ON】にしておこう。

『⑥　加速』は、そのままの意味だろう。

　でも、コレってさ。

　アニメなんかだと、勢いがつきすぎて、壁に激突するやつだ。

　ネタ系っぽいから、今は、やめておこう。

『⑦　反射』は、まったくわからないから、保留。

『⑧　収集』も、さらにわからないから、保留だ。

　＿＿見つけた！　『⑨　結界』だ。

　まさに、虫除けだ！

　もちろん【ON】だ。

　＿＿あれ？　さらに、項目がでてきた。

【球体モード・ぴったりフィットモード】？

　まあ、【球体モード】でいいか。

　＿＿まだ、項目が出てきたぞ。

【密閉モード】の【ON・OFF】だ。

　もしかして、【結界】の外に出られなくなるのか？

　こんなもの、いつ使うんだ？

　＿＿まあ、いいや。

　いまは、とにかく【球体モード】だけ【ON】だ。

　＿＿おおっ！　なんかうっすら青い球体に包まれたぞ。

　ああ…。いかにも守られてるって感じだ。

　これで、もう、虫なんて怖くないぞ。

　＿＿ありがとう、かわいい女神たち！