第7話 ピーンポーン!
翌朝。
鍋で、お湯を沸かして、カップ麺を食べた。
今日は、カップうどん。天ぷら入りだ。
昨日は、ラーメンだったけど。
やっぱり、胡椒と一味唐辛子が欲しい。
あとで、作れるか試してみよう。
同じ鍋で、食後のコーヒーも沸かした。
やっぱり、レギュラーコーヒーの味だった。
それも、いつも飲んでいた味だ。
まだ、食卓テーブルがないからな。
床に、そのまま置いて食べている。
__なんだか、日本にいるみたいな気がする。
新築マンションにでも、引っ越した感じだ。
荷解きをする前って、こんな感じだろう。
異世界なのに、こうして、落ち着いて朝を迎えられた。
ほんとうに、女神には感謝しかないな。
ぼくは、正座して、女神に祈った。
___ありがとう。かわいい女神たち。
ピーンポーン!
ええっ! チャイム? そんなものあったか?
ぼくは、戸惑った。
や、やっぱり玄関なのか?
でも、玄関に、ドアはないはず。
ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン!
ちょっと、待って。
とにかく、玄関だ。 玄関に行ってみよう。
階段を駆け下りた。
玄関には、天使がいた。
比喩じゃなくて。
運送屋さんっぽいコスプレだけど、なぜかミニスカート。
頭の上では、輪っかが光ってるし。
背中には、白くて大きな翼もあった。
なにより、女神レベルの美少女だ。
「シュウ・カンザキさんにお届けものです」
「オレに?」
「ここに、ハンコ……は、ないでしょうから、サインしてください」
お届け伝票のようなものを、天使は、差し出した。
羽ペンと一緒に。
言われるままにサイン。
「これでいいか? …そうだ、ちょっと待っていてくれ」
サインしたあと、ぼくは、二階に駆け上がった。
そして、カップ麺と割り箸を抱えて戻った。
「これを持っていくといい」
女神からの、いただきものだが。
「いいんですか! じつは、食べてみたかったんですよ」
よろこんでくれた。ほっとした。
飲み物もあげたいけど、容器がないからな。
__ああ、そうだ。いいこと思いついた。
「女神から、【自給自足】ってスキルをもらってな。
これから、いろいろと作るつもりだ。
そっちにも、おすそ分けしたいんだが、どうすればいい?」
【自給自足】できるのは、女神のお陰。
何が作れるか、まだまだ未知数だ。
でも、せめて、作ったものくらいは、還元したい。
「……なるほど。それは、うれしいお話です。
シュウさまの元の世界のものを作るんですよね。
めずらしいものばかりなので、きっと、みんな喜びます。
さっそく、女神さまたちと相談してみますね。
次回までには、ちゃんとしたお返事ができると思います」
「ああ、よろしく頼む」
999キロと、999リットルを消費するためにも。
「…それじゃあ、ありがとうございました!」
ペコリと頭を下げると、天使は消えた。
ドアはないからね。
転移したんだろうけど。
天界にもどったのかな?
二階に戻って、届いたダンボールを開いた。
__なんだ、コレ?
ちっちゃいベストが入っていた。
__ああ。【古代竜】の赤ちゃん用か。
背中に、火を吹く竜の絵がある。
卵から孵ったら、着せてやれってことだな。
__あとは、何が入ってるんだろう。
おおっ! これは、ぼくの服だ。
チュロックっていうの?
ゼ◯ダ伝説のリ◯クが着てるみたいなやつ。
色は、紺だけど。
それに、紺のズボン。
これは、リ◯クと違って、ふつうにズボンだ。
よかった。 ももひきっぽいのは、ちょっと…。
紺の下着も入っていた。
紐で縛るタイプだけど。
それと、紺の靴下に、紺のブーツ。
あと、紺のローブ。
最後に、紺のリュックか。
__紺ばっかり? 誰の趣味だろう。
でも、助かったよ。
今は、学校の制服のままなんだ。
せめて、制服くらいは、大事に残しておきたい。
身につけていたもの以外は、何も持って来られなかったから。
さっそくお着替えだ。
制服や靴など一式を【日本の品用タブ】に入れておいた。
あと、スマホや腕時計、財布、ハンカチ、ポケットティッシュなんかも。
もちろん、【時間停止】の設定だ。
これで、日本から持ち込めたものが、ずっと守られる。
でも、食料と同じなんだな。
【自給自足】で作れない間は、ちゃんと用意してくれる。
__ほんとうに、ありがとう。かわいい女神たち。
また、正座して、祈った。
もう、チャイムは、鳴らなかったけど。