第6話 カップ麺
天界にいた時、女神は願いを聞いてくれた。
一度目は、女神を怒らせて、殺された。
でも、女神たちは、再び、願いをたずねてくれた。
だから、ぼくは、女神に、ひとつだけ頼んだ。
『衣食住を保証してほしい』と。
衣・食・住だから、三つか? 今思えば。
女神たちは、すぐに、願いをかなえてくれた。
まず、『住』に関しては、【卵ハウス】を作ってくれた。
外見こそアレだけど、内部は、和風住宅。
もちろん、実家がモデルだ。
女神は、リクエストどおりに作ってくれた。
次に、『食』と『衣』。
こっちは、わざわざ【自給自足】というスキルを作ってくれた。
ユニークスキルってやつだ。
でも、スキルだから、習熟度が必要になる。
要するに、レベル上げが必要なんだ。
話によると、高レベルになれば、何でも作れるようになるらしい。
それこそ、『コース料理』でも『宇宙服』でも。
でも、その前に餓死してしまう。
レベル上げには、かなりの時間がかかるらしいから。
だから、それまでは、女神が食料を用意してくれたらしい。
なんだかんだと、面倒見のいい女神だった。
ぼくは、悪い癖のせいで、傲慢な言い方しかできないけど。
心の中では、あのかわいい女神たちに、とても感謝しているんだ。
今回、初めて【自給自足】で作ったものは、三種類。
① 塩 ② ココア ③ コーヒー だ。
女神の言うとおりだった。
【自給自足】スキルでは、《《すぐには》》自給自足できない。
辛抱強く、レベルをあげてゆくしかない。
長い目でみよう。長い目で。
ぼくは、二階に降りた。
二階には、対面キッチンがある。
__これか。
女神が、言っていた食料。
たしかに、日本の食べ物だ。
キッチンに、所狭しと積み上げてある。
箱に入ったカップ麺が。
たぶん、すごい数だと思う。
これなら、ケチケチ食べなくも大丈夫そうだ。
それに、乾パンなんかよりはずっといい。
次に、キッチンを見回してみた。
みごとに完備している。
蛇口は、ちゃんと、水と湯でふたつある。
コンロはもちろん、オーブンまである。
調理台もけっこう広い。
__問題は、調理器具と食器か。
調理器具は、鍋ひとつだけ。
食器は、カップと深皿が、ひとつずつ。
そして、フォークとスプーンが、一本ずつ。
あとは、割り箸の束が、たくさん。
いずれは、【自給自足】で作れると思う。
でも、どう考えても、間に合わない。
どこかで手に入れないとな。
__うーん。けっこうおいしい。
カップ麺のチョイスは悪くない。
ラーメン各種に、そば、うどん、そうめん、やきそばなどいろいろ。
有名どころは、そろってるし、不気味なのはない。
さいきん、妙なカップ麺が増えてきたからな。
そういうのがないのは、助かる。
__かわいい女神たち。ありがとう。
でも、三食ともカップ麺はつらいな。
麺類は大好きだけど、ほかのものも食べたい。
どこかで手に入れないと。
食べ終わった後は、キッチンの整理だ。
カップ麺の箱だらけで、キッチンが狭い。
箱から取り出して、【卵ハウスの倉庫】に入れておこう。
ぼくは、【卵ハウスの管理画面】を開いた。
ちゃんと、チュートリアルで予習済みだ。
__あった。 【倉庫】だ。
クリックして、【倉庫の管理画面】を開いた。
すでに、タブがふたつある。
ひとつは、 【資材用】。
もうひとつは、【自給自足用】だ。
【自給自足用】には、【時間停止】が設定されていた。
__まさに、『至れり尽くせり』だ。
操作も、パソコンそっくりでわかりやすい。
ぼくは、タブを増やして、【カップ麺用】と名付けた。
もちろん、日本語だ。
ちょっと考えてから、【時間停止】にした。
カップ麺だって、『賞味期限』があるから。
【卵ハウスの倉庫】は、【空間収納】。
いつでもどこでも使えるって話だった。
【収納】の操作も簡単。
念じるだけで、【魔法陣】が出現。
見ただけで、【魔法陣】に吸い込まれてゆく。
空き箱も、そのまま【収納】した。
食べ終わったカップも。
使用済みの割り箸も。
なんとなく、もったいなくて。
明日でも外に出て、食料を探してみよう。
カップ麺があるから、必死で探さなくてもいい。
余裕を持って探せるのは、精神的に楽だ。
なんにせよ。追い詰められるってつらいから。
かわいい女神たちのお陰だな。