第5話 スキル【自給自足】
【古代竜の卵】を持って、三階に来た。
ここの床は、ふかふか。
卵を置いておくなら、ここが一番だ。
さて、こんどは、異世界定番の【ステータス】だ。
__あれ?
【ステータス画面】が、真っ白なんだけど。
ぴこん!
きゅうに、文字が浮かび上がって来たぞ。
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【表示不能】
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__【表示不能】って、どういうことだ?
なんで【ステータス】が、表示できないんだ?
もしかして、女神にいじわるされてる?
__いやいや。
そういう被害妄想はよくない。
そもそも、あの女神たち疑うなんて、恩知らずも甚だしい。
きっと、何かトラブルでも発生したんだろう。
それに、ステータスなんて、わからなくても困らない。
数値を見せられても、実感がわかないと意味がないんだから。
それよりも、問題は【スキル】だ。
なにしろ、ぼくの異世界生活が掛かってる。
こんどは、【スキル】のタブをクリックした。
こっちは、ちゃんと表示された。
【スキル】は、ふたつ。
① 【自動言語翻訳】
② 【自給自足】(ユニーク・スキル)
この【自給自足】に、ぼくの生活が掛かってるんだ。
とにかく、発動させてみよう。
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スキル【自給自足】を発動しますか?
はい いいえ
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もちろん、【はい】。
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【作業空間】を構築します…………構築完了。
【作業空間】に、移動します
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気がつくと、真っ白な空間の中にいた。
真っ白なせいか。広さがまったくわからない。
チュートリアルで、事前に聞いておいてよかった。
聞いてなかったら、パニックだった。
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【製作用魔法陣】を構築します…………構築完了。
【収納用魔法陣】を構築します…………構築完了。
【製造用魔法陣】を、【アカシックレコード】に接続。
【収納用魔法陣】を、【卵ハウス倉庫】に接続。
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あっという間に、ふたつの大きな魔法陣が出現した。
かなり高いところに、ひとつ。
足元に、もうひとつ。
どちらも、ゆっくり回転しながら、輝いている。
これぞ、剣と魔法の世界って感じだ。
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【自給自足】は、物質を製造するスキルです。
製造者の魔力(魔素)で製造しますので、資材等は不用です。
製造したい物質を、イメージしてください。
現在レベル【1】で、製造可能な物質は、以下の通り。
① 微小な個体(粉とか粒)
② きわめて低濃度の液体
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要するに、魔力だけで、モノをつくるんだな。
魔力って、元の世界の素粒子みたいなものなんだろうか。
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【魔素(魔力)メーター】を表示…………失敗しました。
再度、【魔力量(MP)】を測定…………規格上限に到達。
【総魔力量】は、測定不能です。
【魔素(魔力)メーター】は、表示不能と判断します。
【魔素(魔力)残量】は、体調の悪化等で推測してください。
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意味が、よくわからない。
でも、『上限に到達』って?
もしかして、魔力量がカンストしてるのかな。
女神が、そこまでサービスしてくれたんだろうか。
魔力量が少ないと、何も作れないから。
どっちにしても、魔力量は多いんだと思う。
__とにかくイメージしてみよう。
要するに、すごく小さい粒なら作れるはずだ。
___むむむっ!
頑張ってイメージした。
すると、目の前に、白い塊が出てきた。
やや厚みのある四角い塊。
__もうできたの? 簡単すぎない?
白くて四角い塊は、ふよふよと浮かんでいる。
じつは、コレは、『塩』。
小さい粒と聞けば、誰でも『塩』をイメージするよな。
でも、つい、スーパーで売ってる塩を思い出してしまった。
ビニールっぽい袋に入った塩だ。
袋は作れないから、中身の『塩』だけ、四角く出来たんだと思う。
袋入りの塩だから、きっと『1キロ』はあるはず。
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製造した物質を、収納しますか?
はい いいえ
*【卵ハウス倉庫】は、【空間収納】です。
時間が経過しない設定にすれば、変化・変質しません。
また、いつどこからでも、アクセス可能です。
スキル 【自給自足】 Lv_1 1/999
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【はい】を選んだ。
浮いていた塊が、下の魔法陣に吸い込まれていく。
__なるほど。
上の魔法陣が、製造用。
下の魔法陣が、収納用ってことだね。
__1/999 かあ。
999回つくらないと、レベルアップしないんだ。
驚くほど簡単に出来たけど、その分、レベルアップはシビアか。
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『塩』の製造をつづけますか?
はい いいえ
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チュートリアルでは、具合が悪くなったらやめろって言っていた。
さっきの画面にも、同じことが書いてあった。
でも、いまのところ、体調は、まったく変わらない。
これなら、まだ、やれそうだ。
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連続して製造可能です。
回数を、指定してください。
1/998回
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なるほど、『1』の数字を押して、回数を指定するのか。
__うーん。
やっぱり、最初に、限界を知っておくべきだな。
ちょっと、怖いけど。
具合が悪くなったら、すぐにやめればいいんだ。
数字が止まるまで押してみた。 『998回』だ。
…………
目の前で、白い塊が製造されては、下に吸収される。
まるで、塩の製造工場のようだ。
…………
しばらくして、【Lv_2】になった。
__おかしい。
ぜんぜん、平気だ。
とくに何かが減ったという感じもしない。
魔力が減った気がしないんだ。
__もう少し、つづけてみよう。
とにかく、限界は、早めに把握したほうがいい。
__『塩』の次は、やっぱり『砂糖』か?
でも、『塩』も『砂糖』も、今のところ使い道がない。
舐めたって、腹の足しにもならない。
せっかく作るんだから、飲んだり食べたりできるものがいい。
でも、そんな都合のいい『粒』とか『粉』なんてあるかな?
__うーん、あるといえばあるけど。
ダメもとで試してみよう。
…………
しばらくして、【Lv_3】になった。
まさか、できるとは思わなかったよ。
『ココア』を作ってみたんだ。
『ココアパウダー』じゃないよ。
砂糖とか、いろいろ入ったヤツのほう。
いろんなものが混じってるから、ダメだと思ったのに。
さすが、剣と魔法の世界。
元の世界の知識で、『無理だ』って決めつけたらダメだな。
ふたつ作ってみたけど、まだ、体調はまったく変わらない。
何かが減った感じもないんだ。
今度は、『液体』を試してみよう。
濃度が低ければいいんだよね。
__できた。
『コーヒー』が、『999リットル』だ。
イメージどおりなら、レギュラーコーヒーだ。
でも、ざんねんながら、常温。
このままでは、とても飲めない。
鍋にでも入れて、沸かすしかないな。
あとは、氷を入れてアイスか。
魔法は【氷礫】で練習しろって、女神が言ってたからね。
『氷』は、作れるはずだよ。
これで、【Lv_4】。
うまくいきすぎな気もするけど、ちょっと楽しい。
なんだか、すっきりした気がする。
ストレスが、たまっていたのかもしれないな。
けっこう、いろんなことがあったからな。
ここまでやっても、『魔力切れ』らしきものはない。
なにかが抜けた感覚はない。
__ただし。
『塩』も『ココア』も、『999キログラム』。
『コーヒー』は、『999リットル』できてしまった。
作る量が、固定されたみたいだ。
__まあ、いいや。
『大は小を兼ねる』だ。