表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/62

第46話 おっきいのが来る

 その夜。



【自給自足】をするために、【作業空間】に入った。



 入った瞬間。 警報音が、鳴り響いた。



 ヴィーン!


 ヴィーン!


 ヴィーン!


 ヴィーン!(以下省略)



【作業空間】が、真っ赤に染まっている。


 ぼくは、無数の『EMERGENCY』の文字に、囲まれていた。



 __な、なんだ。 何が起きた!



「警告。日本酒の残量が、3リットルになりました!」


「警告。ウィスキーの残量が、7リットルになりました!」


「警告。ラガービールの残量が、4リットルになりました!」(以下省略)



 __くっ、そういうことか!



 999リットルが、ひと桁になると、警告を発するんだな。



 女神たちに、【卵ハウスの倉庫】へのアクセス許可を出した時。


 天使が、『アラーム機能を追加しておきました』とか言っていた。



 なにが、アラームだよ。


 とんでもなく仰々しい警報じゃないか。



 それにしても、お酒類の減りが速い。


 ある程度、予想していたから、種類も追加したのに。



 ちなみに、追加した種類は、コレ。


『ラガービール』、『バーボン』、『ウォッカ』、『ブランデー』、『梅酒』。


 まあ、高校生でも、ふつうに思いつくライナップだね。



 ほかにも、かなり減っているものがあった。


『塩』、『胡椒』、『砂糖』、『小麦粉』などだ。



 エルフとドワーフが、大量に取り出したらしい。


 理由はわからないけど、とにかく、大量に追加しておいた。



 最初は、999キロも、999リットルも使い切れないと思ってた。


 でも、意外とあっさり消費されてしまった。


 もちろん、『ドライイースト』なんかは、相変わらずだけど。




【作業空間】から出ると、夕食になった。


 夕食は、ソフィアとアネットが用意してくれた。


 といっても、できた料理を並べるだけだ。



 料理は、ドワーフのおばさんたちが作ってくれる。


 そして、それを【卵ハウスの倉庫】に、【収納】しておいてくれるんだ。


 最近は、エルフたちも、コレに加わった。


 だから、自分たちで作る必要は、ほとんどない。




 夕食は、ゴーレム馬車の二階で食べている。



 実は、侯爵領には、有名な湖があった。


『光の湖』って、呼ばれているらしい。


 じっさい、光が、湖底から空に向かって放射されている。


 エメラルド・グリーンの光だ。


 なかなか幻想的な風景なので、湖畔に馬車を停めたんだ。


【結界】で守られてるから、安心だし。



 今夜は、【卵ハウス】に戻らないで、ここで寝る予定。


 ぼくは、【自給自足】のために、いったん【帰還】してきたけど。





 夕食も終えて、夜も更けてきた頃。



「なんだか、ようやく旅らしくなったね」


「たしかに、そうかもしれませんね」



 ソフィアたちの声が、聞こえてきた。




 すでに、照明も落として横になっている。


 ソフィアたちは、一階。


 ぼくは、二階だ。


 湖全体が輝いているから、すこしも暗くはない。




「そういえば、ちびちゃんたち、どこへ言ったんだろうね」


「ええ。 まだ、戻ってませんね」



 夕食後、出かけたきり、まだ帰ってきていない。


 昼間ずっと寝ていたからね。


 眠くないのかもしれない。



 すでに、二階の幌も閉じている。


 でも、ちびたちが、夜中に帰ってきても、なかに入れないことはない。


 ちびたちの専用の出入り口が、あるからだ。


 御者台の上。 張り出した屋根の軒下だ。


 馬車を土足厳禁に改造した時に、作ってくれたらしい。




 ゴーレム馬車に御者はいらない。


 でも、街なかを走る時は、御者がいないと困る。


 暴走馬車と勘違いされるからだ。


 そのための、カモフラージュ用御者台があるんだ。


 ぼくは、面倒なので、馬車で街に入るつもりはないけど。



「きゅっきゅ!」


「がるう……」



 ちびたちが戻ってきた。


 二匹とも、あわててるみたいだ。


 どうしたのかな?



 __なになに。



 なにか、おっきいのが来るって?



 ちびたちは、そのまま、窓際に貼り付いた。


 そして、恐る恐る外を見ている。




 その時だった。




「超巨大な質量の生物が、湖底より浮上中!


 魔導砲、発射準備に入ります。


 魔力充填、11割、12割、13割……」



 いきなり、ゴーレム馬の背中がパカリと開いた。


 そして、細身の大砲が姿を現した。


 すでに、発射口には、光が灯っている。



「きゅっきゅっ!」



 __なになに。 



 絶対に、撃っちゃダメだって?


 ヴァイスも、ぶんぶん、うなずいている。



 ぼくは、すぐに、中断を命じた。


 別に、魔導砲でなくても、対処はできるはず。



 発射口の光が、次第に消えていく。




 すると。




 湖の水面が、ぐんぐん盛り上がってきた。


 まるで、湖の中心に、水の山ができたようだ。



 何かが、湖底から上がってきたんだ。




 さっぶーーーーーーーーーーーーーーーーん!




 表面張力の限界なのか。


 巨大な水の山は破れ、周囲を波打った。



 湖面の上には、大きなふたつの光が残っていた。


 それは、エメラルドグリーンの光を宿した、巨大な瞳だった。



 長い長いまつ毛を、パシパシしながら、こちらをじっと見つめている。



「うーん。 やっぱり、懐かしい気配がするわね。


 それで、久しぶりに、上がってみたんだけど……。


 この気配って、【古代竜】ちゃんと、【フェンリル】ちゃんよね。


 せっかく、会いに来てあげたのに、どうして隠れてるのかしら?」



 湖の底にいたんだから、水竜だろう。


 湖面から、巨大な頭部だけを出して、こっちを睨んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ