第4話 古代龍の卵
まず、外の状況を確認しよう。
ぼくは、【卵ハウスの管理画面】を開いた。
こういう操作は、リュートリアルで予習済みだ。
__あった! 【壁を透過】だ。
アイコンになってて、これ自体がスイッチだ。
押すと、周囲の壁が、たちまち透明になった。
まるで、ガラスのドームのようだ。
ここは、三階。
【卵ハウス】のてっぺんだから、天井はドーム状だ。
__おおっ!
これは、びっくり。
周囲は、黒褐色の地面だけ。
それも、長い長い坂になってる。
それも、360度ぐるりと。
__これって、クレータだよな。
【卵ハウス】は、巨大なクレーターの底にいるらしい。
広さは、見当もつかない。
ドーム球場なんか、いくつ入るかわからない。
それに、深い。
高層マンションくらい、すっぽり入るんじゃないか。
でも、これなら、外に出ても大丈夫そうだ。
火山の火口とか、海底とかじゃないのだから。
ぼくは、一階の玄関に移動した。
ドアのない、壁だけの玄関だ。
【卵ハウスの管理画面】で、【外出】を選択。
実際に、外に出てみるんだ。
【卵ハウス】には、窓も出入り口もない。
だから、出入りには【空間転移】を使う。
【空間転移】を、ふだん遣いするんだ。
さすが、剣と魔法の世界。
マジで、すごいと思う。
一瞬で、目の前の光景が変わる。
【卵ハウス】のすぐ近くに【転移】した。
__相変わらず、でっかいなあ。
思わず、見上げてしまった。
黒褐色のクレーターの底にあるから、ひときわ大きく見える。
__ん?
【卵ハウス】の下のあたりが、うっすら光ってる。
なんだろう? 黒い砂を被っているけど…。
__これって、卵?
ラグビーボールくらいの大きさの卵だった。
ほのかに赤く、明滅してる。
__もしかして、生きてる?
昔読んだ童話なら、大きなオムレツにするシロモノだ。
でも、生きてるなら、焼鳥ってとこだろうか。
__あれ?
急に、激しく点滅しだしたぞ。
どうしたんだろう?
焼き鳥なんて思ったからか。
いや、むしろ、オムレツのほう?
悪いことしたな。
何の気なしに、触れてみた。
__うっ!
思わず、膝をついた。
なんだろう。これは…。
お腹のあたりから、ごっそりもっていかれたような。
__もしかして
ぼくは、魔力を吸い取られている? この卵に?
卵の光が、だんだん強くなってきた。
なんとなく、手を離してはいけない気がする。
卵じゃなかったら、蹴飛ばしてるんだけど。
…………
…………
どのくらい経ったのかな。
吸い取られる感覚が消えた。
光の明滅も止んでしまったし。
もしかして、死んだのかな?
ちょっと、かわいそう…。
ぴこん!
とつぜん、画面が出現した。
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【古代竜】の卵が、シュウ・カシワギの眷属になりました。
すでに、十分な魔力を得たので、まもなく孵化します。
楽しみに待ちましょう。
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【はい・いいえ】がないってことは、もう決まったってこと?
つい、魔力を与えてしまったからだろうか。
__うーん。まあ、いいや。
動物は、嫌いじゃないからな。
とくに、赤ちゃんは、かわいい。
まあ、ぼっちでいるよりいいかもしれない。
きっと、ひとりじゃさびしいだろうって、女神がくれたのかも。
__ありがとう。かわいい女神たち。
でも、【古代竜】の赤ちゃんって、かわいいのか?