表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/62

第37話 大きなお友達

 おっさんの話は終わった。



 なんだかんだと言っても、実害はなかったからな。


 ただ、騎士団と魔道士団が、たいへんだっただけで。



 それに引き換え。



 ぼくは、グリフォンを倒したし。


 おっさんは、首なしグリフォンを、偉いひとに献上できる。



 結局、おっさんには、利益のほうが大きかったわけだ。


 だから、ただ愚痴を聞かされたようなもんだよ。 迷惑な。



 最後は、ソフィアの無自覚な爆弾発言で、終わった。



「これからは、私が、ずっとシュウと一緒にいます。


 だから、安心してください」



 アネットもおっさんも、びっくりして何も言えなくなっていた。





 アネットの実家を出た後、屋台に戻ってみた。


「こんな日は、もう、商売にならならからねえ」


 店をたたもうとしていた。



 グリフォン騒動の直後だ。


 串焼きを食べに来る勇者は、いないかもしれない。



 火を落とす直前だったので、ぜんぶ買うことにした。


 焼き上がったものから、どんどん【収納】した。


 それでも、100本ちょっとしかなかった。



 焼いてもらいながら、みんなで食べた。


【収納】するだけでは、ちびたちが納得しなかったから。




 そんなふうに、みんなで串焼きを味わっていた時だった。




 カンカンカンカンカン!




 また、激しく、鐘が打ち鳴らされた。




 音につられて、空を見上げたアネットが、ぽつりと言った。


「ねえ。 なんなの、アレ?」



 アネットの視線を追うと、その先に、赤い竜がいた。


 鳥なんかとは、間違えようがない。


 まさしく、竜だった。



 着陸体勢に入った旅客機のように、ゆっくりとこちらに下降している。



 さっきのグリフォンなんかは、比較にならない。


 ブラックワイバーンが、戦闘機なら、赤い竜は、まさに旅客機だった。


 いや。 お客さんを乗せるタイプには見えないからな。 戦略爆撃機か?



 そのへんに落ちてる石で、どうにかなる相手じゃない。


 そのくらいのことは、ぼくにも、わかった。



 __先手必勝か?



 グリフォンのときは、悠長に構えていて、遅れをとった。


 今、あの遠距離からブレスを撃たれたら、対処できる気がしない。


 本物の竜のブレスなんて、想像もつかないし……。



「氷礫!」



 一気に、脳内カウンターを、『99』まで振り切った。


 ぼくの頭上が、巨大な氷礫で埋め尽くされる。



 それが見えたのか。


 赤い竜の口もとにも、強い光が宿った。



 __スピード勝負か?



 ぼくは、【加速の加護】を、初めて【ON】にした。


 そして、【氷礫】に、ありったけの魔力を込めた。


 あとは、決着がつくまで、撃ち合うだけだ。




 その時だった。




「きゅーーーーっ!」 


 雛竜が、ぼくの顔に、いきなり貼り付いた。


 いっしゅんで、視界がさえぎられる。



 __こ、こらっ! 見えないじゃないか!



 雛竜を、顔からがそうとしたら、ソフィアが叫んだ。



「シュウ! 撃ってはいけません! すぐに解除してください!


【火竜】は、敵ではありません。


 そして、おそらくですが、【古代竜《この子》】たちのお友達です!」



 __え? 



 敵じゃないの? それに……



 __お友達?



 雛竜は、ぼくのおでこを、ガシガシつついている。


 けっこう、怒ってる?


 いや。 必死で止めようとしてるのか。


 ちび狼まで、ぼくの足に噛み付いていた。



 __でも。



 お友達って、どういうこと?



 ちびたちのお友達と言えば、妖精とか、子蜘蛛だろう?



 __聞いてないよ。



 あんな、おっきなお友達がいるなんて。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ