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第32話 いつでも物々交換

 ふたりは、大爆笑。


 ソフィアは、青くなっていた。



「たぶん、女神さまに、とんでもないことでも言ったのだろう?」


「それも、その口調でね」


「なんと言ったのかは、君の名誉のために聞かないでおくよ」


「きっと、ソフィアには聞かれたくないでしょうしね」



 しばらく、腹を抱えて笑っていた。


 ぼくは、ただ、それを見ているしかなかった。




 ひとしきり笑い終えると、本題に入った。



「今日はね。 じつは、頼みがあって来たんだよ」


「私たちエルフとも、交易……いえ、物々交換してほしいのよ。


 ドワーフたちと同じようにね」


「もちろん、かまわんが……」


 容器はあるんだろうか?



「せっかく収納魔法が使えるんだ。 そのまま貰うよ」


「どうやって?」


「簡単さ。 今から、私の【収納魔法陣】を出すからね。


 シュウ君は、それに、干渉してくれればいいんだ。


 君のほうが、たぶん、上位だと思うからね」


「そんなに信用して大丈夫か?」


「女神に、これほど気に入られてるのよ。 疑う理由はないわね」



 ぼくは、そんなに立派な人間じゃないんだけどな。


 でも、ソフィアの祖父母だもの。


 ぜったいに、裏切るようなまねはしない。



 かめのような、実体のある物を媒体にしないからだろう。


 あっという間に移動できた。 しかも、大量に。


 今のところは、ドワーフと同じものを渡した。



「このまま、つなぎ続けることはできるのか?」


 ちょっと、尋ねてみた。


「もちろん、できるよ。 でも、いいのかい?


 いつでも、君の【収納】から引き出せることになるよ」


「ああ、それでかまわん。 むしろ、その方が手間がかからない」



「 「……………」 」



 祖父と祖母が、黙り込んだ。


『手間がかからない』という言い方が悪かったのかな?



「そこまで信用してもらえるとは思わなかったよ」


「出ししみはしないってことね。 ちょっと、驚いちゃったわ」


「我々、エルフは、君の信頼を裏切ることは、絶対にない」


「そうね。 それだけは、ここで誓っておくわ」



 不愉快に思ったわけじゃないらしい。


 ちょっと、ほっとした。



 そのせいだろうか。


「でも、これは便利だな。 ドワーフとも、コレができればいいのに…」


 つい、ぽつりとらしてしまった。



「できるよ。 シュウ君が、それでいいなら。


 シュウ君の【収納】の座標は、わかったからね。


 ドワーフの族長のところへ行って、つないで来てあげようか?」


「いいのか?」


「もちろんよ。 彼らとは、族長同士。 とっても仲がいいのよ。


 それに、シュウ君の【収納】とつながれば、彼らも、きっと助かるわ」



 簡単に言ってるけど、ハイ・エルフにしか出来ない奥義わざらしい。


 さすがは、魔法の申し子だね。




 ちなみに、エルフからは。


『衣類』や『寝具類』。 そして、『魔道具』がもらえるそうだ。



 もちろん、これは『商売』じゃない。


 単なる『物々交換』だ。



 いずれは【自給自足】で、作れるようになるとは思う。


 でも、そんなの。 いつになるか、わからない。


 それまでは、信頼できるひとを頼るしかない。



 ドワーフだけじゃなく、エルフとも物々交換できる。


 ほんとうに、ありがたいことだった。


 すべては、ソフィアに出会えたからだ。


 ソフィアには、感謝しかないな。




「実は、我々エルフも、辛い物に目がなくてね。


『胡椒』のために、『魔道具』を買い叩かれていたんだよ。


 これでもう、不利な交易をせずに済む。


 シュウ君には、ほんとうに、感謝してるよ」


「いや。 知っての通り、女神に貰ったちからだ。


 感謝するなら、女神にしてくれ」




 まもなく、ソフィアの祖父母は、【転移魔法】で帰っていった。


 そうなんだよ。


 こんなに早く、ソフィアと再会できたのも、【転移魔法】のお陰だ。




「ぼくたち『ハイ・エルフ』は、長生きでね」


「それで、あちこち旅行したのよ。


 もちろん、魔物討伐のかたわらね。


 旅行先には、必ず、【転移魔法陣】を設置したわ。


 そうすれば、また、いつでも行けるでしょ」




 この辺境領の街にも、【転移魔法陣】を置いてあるらしい。


 それを使って、ソフィアを送りがてら、ぼくに会いに来たんだ。



「しばらく、ソフィアを預かってちょうだいね。


『戦姫』の役を解かれたでしょう。


 縁談の申込みが、うるさくて困っていたのよ。


 いったい、ハイ・エルフの姫を何だと思ってるのかしら。


 ハイ・エルフの婚姻に、気軽に関わらないで欲しいわ」


「ソフィアを守ると思って、頼むよ。


 ソフィアもそのつもりで、あんな三文芝居をしたんだろうから。


 ああ。 もちろん、永久に預かってもらってもいいからね。


 息子たち夫婦も、たぶん、そう思っているだろうから」


「……三文芝居は、ひどいです。 お祖父様。


 でも、ありがとうございます」




 ぼくに、断る理由はない。


 むしろ、大歓迎だ。


 なんといっても、『現地人』がいると心強い。



 それに、なにより、ソフィアはかわいいからね。


 貰えるっていうなら、貰っちゃうよ?



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