第31話 みんなお見通し?
「うーん。 ソフィアから聞いてはいたが、なかなかだな」
「そうですね。 ワインとは思えないような軽やかさね」
どうやら、『スパークリングワイン』が気に入ったらしい。
ソフィアに言われて、コレにしたのだけれど。
ここは、【卵ハウス】の二階。
リビングで、ドワーフ製の食卓テーブルを囲んでいる。
ぼくの作るものは、すべて常温。
でも、ふたりは、息をするようにあっさりと冷やした。
「このカップは、ミスリル製でね。 魔法のとおりがいい」
「わたしたちも、ふだんは、これを使ってるのよ」
エルフの最高権威が使ってるものと同じとは。
ドワーフのじいさんに、改めて感謝しなくちゃ。
ソフィアの祖父と祖母は、見かけによらず、気さくなひとだった。
ぼくの開き直った挨拶を聞いても、気にもしなかった。
「まあ、ここでは話しにくい。 場所を変えよう」
「そうね。 そのほうがいいわ」
「シュウ。 お祖父様もお祖母様も、《《あの家》》に興味がお有りです。
おふたりを招いてはもらえませんか?」
「もちろん、かまわんぞ」
とんとん拍子に話は進んで、【卵ハウス】に【帰還】した。
ふたりは、ちゃんと玄関の上がり框で、靴を脱いでくれた。
それから、一階から三階まで、興味しんしんなようすで見物。
二階に戻って、ひと息入れていたところなんだ。
「じつは、ソフィアから話を聞いてね。
カップ麺というのを食べてみたいのだよ。
どうかね。 ごちそうしてもらえるかね?」
「お安い御用だ」
じっさい、安いし。
まあ、こっちの世界では買えないけどさ。
「ふうん。 たしかに、おいしいね。 おいしくて、面白い」
「ふふふ…。 そうね。 お湯をかけるだけなんて、まるで魔法みたいね」
「ある意味、魔法だろう。 『調理』というプロセスを省略するのだから」
「この、日本酒というのも、おいしいわ」
「あっさりしているのに、深みもある。 じつに興味深いね」
ドワーフが、泣きながら飲んでいた日本酒だ。
大蜘蛛も、お気に入りだった。
でも、カップ麺に冷酒なんて、どこの労働者だよって思う。
ソフィアたちには、ちょっと言えないけどさ。
こんなふうに、のんびり食事をしていたわけだけど。
「カップ麺だけは、シュウ君が作ったわけではないのだね」
いきなり、核心を突かれた。
「わかるのか?」
「それはそうよ。 カップ麺だけ、シュウ君の魔力が感じられないもの」
「もしかして、女神さまに貰ったのかい?」
「シュウ君の故郷の品なのかしら?」
「よくわかったな」
「とうぜんだよ。 どこもかしこも【加護】だらけじゃないか」
「よっぽど、女神さまに気に入られているのね」
「そうなのか?」
それはそれで、悪い気はしない。
女神って、みんな、かわいいから。
「この家。 君の服。 そして、たぶん、君専用の魔法あるいはスキル」
「どれもこれも、ありえないものばかりだわ。
ほかの者たちでは、そこまで気づかないでしょうけど」
「そうなのか。 もちろん、女神にはいつも感謝しているんだ。
でも、気に入られてるかどうか……。
オレは、女神を怒らせて、殺されたからな。
まあ、詳しいことは、ちょっと、言えないが……」
『パンツ見せろ』で殺されたとは、口が避けても言えない。
とくに、ソフィアの前では、絶対に……。
「 「 「ええええーーーーーーっ!」 」 」
美青年と美女と美少女が、びっくり仰天していた。




