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第11話 的中と収集

 

「丸腰で、オーガとやり合おうとするなんて……」


 少女はジロリと、ぼくをにらんだ。


「……いくら【結界】があるとはいえ、無謀すぎます」



 あの原始人は、オーガっていうんだ。


 やっぱり、アニメとは違うんだな。


 リアル系の3Dゲームなら、似てたのか?



「いちおうたずねますが……」


 少女は、真剣な声で言った。


 美少女だから、迫力がある。


「……どうして、こんな森の奥にいたのですか?」



 なるほど。ここは、森の奥なんだ。


 むしろ、クレーターから、森に入ったばかりだったんだけど。



「向こうの大きなクレーターから来たからだ」


 クレーターの方向を指差した。



「……クレーター? ああ、隕石孔のことですね。


 でも、どうして、そんなところにいたのですか?」


「さあな。目が覚めたら、クレーターの底にいた。


 おおかた、女神が、あそこを選んだんだろう」



「女神さまが……ですか?」


 少女は、眉をひそめた。


「まさかとは思いますが、あなたは、使徒さまなのですか?」



「使徒? いや、違うと思うぞ」


 そんなことを言われた覚えはない。



「……正直に言って、あなたのことばが信じられません」


 少女は、疑わしそうに、ぼくを見た。



「なぜ、お前に信じてもらう必要がある?


 いちおう助けてもらったようだから、バカ正直に答えたまでだ。


 信じる信じないは、お前の自由だ。好きにすればいい」



「……そ、それはそうですね。


 不躾ぶしつけなことを言いました。申し訳ありませんでした」


 あっさり謝罪してきた。


 意外と、素直な性格なのか?



「じゃあ、今度はオレが尋ねたい。


 街は、どっちだ? 方角だけでいいから教えてくれ」


「街……ですか。いちばん近いのは、ドワーフの里ですが……」


「じゃあ、そこでいい。どっちへ行けばいいんだ?」


「こちらへしばらく歩くことになりますけど……。


 でも、ドワーフは閉鎖的です。


 あなたが、いきなり訪ねても、里に入れてもらえないと思います」


「それじゃあ、意味がないな。では、街道はどっちだ?


 街道沿いを行けば、そのうち、オレを入れてくれる街もあるだろう」


「街道も同じ方角です。


 ドワーフの里に向かう途中にありますから」


「そうか。では、行ってみる。世話になった」


 運良く、街道への方角がわかった。


 あとは、ひたすら歩けばいい。


 ぼくは、すたすたと歩きはじめた。



「ま、待ってください!」


 エルフに呼び止められた。


「さきほどのおびに、街道まで案内します」



「お詫び?」


 ぼくは、首を傾げた。



不躾ぶしつけなことを…、言ってしまいましたから…」


「そんなことか。気にするな」


 どうでもいいよ、そんなこと。



「で、では、街道まで一緒に行きましょう。だめ……でしょうか?」


 上目遣いの美少女が、ぼくを見上げている。


「か、勝手にすればいい」


 ちょっと、負けた気がした。




 とはいえ、今は、美少女にかまけている場合じゃない。


 また、いつ『敵』が現れるかわからない。


 もちろん、虫じゃないほうの『敵』だ。



 ぼくは、【加護の画面】を開いた。


【結界】を変更するためだ。


 球体のままだと、また、吹っ飛ばされる。



 __これだ。



【ぴったりフィットモード】を選んだ。


【結界】が、体のかたちに沿って変形した。


 全身タイツを着込んだような感じだ。


 これなら、動きやすい。


 ちゃんとかわせれば、そこから反撃できる。



「ステータス画面を、見ていたのですか?


 ずいぶん、細かい操作をしていたようですけれど……」


 美少女が、興味深そうに近づいてきた。



「ああ、【結界】を少しいじったんだ。


 オーガの時は、うまくいかなかったからな」


「【結界】をいじった? そんなことができるのですか?」


「できる……が、詳しいことは、オレにもよくわからない。


 そもそも、【結界】自体、初めて使ったからな」


「そうだったのですね。わかりました」


 いちおう、納得したのだろうか。


 聞いてもダメだと思ったのかもしれないけど。



 __さてと。



 今度は、歩きながら石を拾った。


 そして、ローブのポケットに入れておいた。


【的中の加護】を【ON】にしてるからな。


 その効果を見てみたい。



 さっきのオーガにも、まず、石をぶつけるべきだった。


 カッとなりすぎたかな?



 __きた!



 まだ、少ししか歩いていないのに、また魔物だ。


 ぼくは、美少女をかばうように前に出た。


 いくら強くても、かわいい女の子だからな。


 肝心の美少女のほうは、戸惑ってるみたいだけど。



 ガルルルッ!


 グルルッ!



 狼っぽい魔物だ。


 四足のままでも、ぼくよりも大きい。


 五匹、いや六匹かな。


 まだ、ほかにも隠れてるかもしれない。



 やっぱり、『異世界補正』があるんだろうか。


 ぜんぜん、怖くないんだ。不思議なことに。



 相手は集団。


 まず、遠距離攻撃で数を減らすのが、基本だ。


 倒せないまでも、動きを封じないと。


 ゲームと同じはずだ。



 遠距離攻撃といっても、石をぶつけるだけ。


 でも、ぼくは、肩にはちょっと自身があるんだ。



 __狙うなら、頭か。



 脳を破壊できれば、図体ずうたいが大きくても、倒せるかもしれない。


 とにかく、目だけでもつぶしてやろう。



 __まず、一匹目。



 狼が、ぼくたちを取り囲もうとしてるうちに攻撃だ。



 びゅんっ!



 ばしっ!



 いっしゅんで、狼の頭が吹き飛んだ。


 首なし狼は、そのまま歩きつづけて、まもなく、どさりと倒れた。



 たしかに、肩には自信があった。


 でも、これは、想定外だ。


 どうして、小石で、あのデカい頭が吹き飛ぶんだ?


 女神が注意してた『パワーアップ』のせい?



 __まあ、いいか。



 とにかく、いまは、敵を倒さないと。



 ぼくは、片っ端から石を投げた。


【的中の加護】と、『パワーアップ』のお陰だろうか。


 次々と、魔物の頭が吹っ飛んだ。



 六匹目を、倒した頃だろうか。


 どこからか、遠吠えが聞こえてきた。


 すると、魔物たちは、あっという間に、逃げてしまった。


 あとには、首なし魔物の死体が、六体残っていた。



 __どうしたもんかな? コレ。



 ラノベだと、集めて火をつけるとか。埋めるとか。


 そんな感じだったろうか。


 もちろん、解体なんて論外だ。


 魚だって、さばいたことがないんだから。



 __でも、触るのヤダな。



 自分でやっといて、何だけど。


 けっこう、グロい。



【収納】なら、触らなくてもできる?


 でも、この距離じゃ無理な気がする。


 あんまり、近づきたくないな。


 頭ごとなくなってるから、目が合ったりはしないけど。



 __もしかして?



 ぼくは、また、【加護の画面】を開いた。


 そして、【収集】を【ON】にしてみた。


 意味不明だった【加護】だ。


 すると、【収集先】を指定する枠が出てきた。



 __パソコンそっくりだな。



【倉庫の管理画面】を開いて、【倒した魔物タブ】を作った。


 そして、そこを、【収集先】にしてみた。



 六体の死体が、ぱっと消えた。



【倒した魔物タブ】には、死体が六つ。ちゃんと入っている。



 __これが【収集】か。



 自動的に『集め』て、『収納』する機能らしい。


 きっと、自分が倒した相手だけだろう。


 他人の倒したものまで集めたら、窃盗せっとうになってしまう。



 __これは、助かる。



 倒した魔物がすぐ消えるんだ。


 倒したのかどうか、すぐわかる。



 倒したと思って近づいたら、とつぜん逆襲されたとか。


 よくあるパターンだろう。 


 もちろん、アニメやゲームの話だけど。



 それに、近寄って【収納】しなくてもいい。


 ほんとうに、ありがたい【加護】だ。




 でも、どうして【卵ハウス】にまで、この【収集】があったんだろう?




 まあ、いいか。


 とにかく、いまは、女神たちに感謝だ。



 __ありがとう、かわいい女神たち!


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