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憤怒

「どうして持ってこなかったのよ?!これじゃちゃんと死んだかどうか分からないじゃない!!!」


玲奈は自室で金切り声を上げながら怒り狂っていた。理由は送った刺客達が姉である陽子の首を持ってこなかったからだ。

死んだ証として持ってこいと命令したものの、追いかけていた時に影から落としてしまった事、その先にある増水で流れが早くなった川に落ち死体を回収することができなかった。

首の代わりに差し出されたのは陽子の血が付いた短刀だけ。

当然、玲奈が納得できる結果ではなかった。

後妻の子である陽子を最初から好かなかった。

お淑やかで美しく、村中の誰からも愛され、龍神の巫女であり、癒しの異能を持っていた陽子が羨ましかった。

玲奈が欲しいモノを全てを持っている血の繋がらない姉が許せなかったのだ。


(やっぱり私の手で殺した方がよかった?それともあのまま処刑にすればよかったのかしら?アイツの首を晒してやりたかったのに!!!)


清楚な自分を演じる為に陽子を処刑という形では殺さなかった。少しでも愛する姉を憐れむ自分を村中に見せる為にやったことが仇になってしまった。

苛立ちが頂点に達し、近くにあった花瓶を壁に叩きつけて粉々に壊した。

暴れるだけ暴れて激しく息を切らしていると襖の方から声がした。


「あの…玲奈大丈夫か?すごい音だったけど…」


声の主は夫になった和正だった。彼の声を聞いた玲奈はようやく我に返り和正の元へ急ぐ。


「和正さん!!!」

「玲奈!よかった…ずっと部屋にこもっているって聞いたから心配だったんだ」


胸に飛び込んできた玲奈を抱きしめ優しく声をかけるものの、彼女の部屋の惨状を見て思わず言葉を失ってしまった。

玲奈の怒りと悲しみが相当のものだと思い知らされた。


「和正さん?どうしたの?」

「あ、いや…玲奈が無事ならそれでいい…」

「ごめんなさい…お腹の子供のことを思ったら悔しくて…!!!お姉様のせいで私と和正さんの子供が…!!」

「玲奈…っ!!ごめん、全部僕のせいだ。僕のせいで玲奈達を危険に晒してしまったんだ。だからもう自分を責めないでくれ。玲奈は何も悪くない」

「和正さん…(危ない危ない。本性がバレるところだったわ)」


愛する和正に抱きしめられた玲奈は満足感を得る。

暴れたことで本性がバレてしまったのではないかと心配していたがうまく隠すことができた。すべてあの事件のおかげだと玲奈は微笑む。

陽子を陥れた事件が起きてからの両親と和正の溺愛は増してゆく一方。玲奈は優越感に浸り幸せを噛み締めていた。

だが、本性を見られてしまったら全てが終わり。和正からも見放されてしまうだろう。


(もしまだ生きているのなら早く死んでちょうだい。お姉様)


玲奈は早く惨めに死んでいった姉の姿を見たかった。罪人となった彼女の首を見た時こそ、幼い頃に姉から感じた劣等感から解放されるのだと信じている。


(全部私のモノ。アンタの大事なものは全部私のモノなのよお姉様)


和正に裏切られた時の絶望した陽子の姿を思い出し玲奈は笑う。

刺客が告げた結果は自分が納得いくものではなかったが、取り乱した自分を大事に慰めてくれる和正達に満足していた。

玲奈の髪に飾られた紅珊瑚の簪が追放された陽子無事を願う様に悲しげに輝いていた。






巫女としてあるまじき姿を見せる玲奈を白鷺に化けていた龍神は見逃さなかった。けれど、まだ動くことはない。今はその時ではないのだと龍神は思い留める。

鉄槌と真実を告げるのは大切な人を癒し守り抜いてからだと決意し、龍神は愛する人の元へ飛び立ってゆくのだった。

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