61.お助けNPC枠
「内戦続くブラックバニア、停戦の見通し立たず」
「使いつぶされる少年少女兵。独裁国家の闇」
「『木っ端王子』に率いられた学徒兵部隊が、『エース』になる狂気。大人達は逃げた」
そんな気の滅入る文言が、スマホのニュースサイトに並んでいた。
俺、吉弔谷白兎は、その画面をぼんやりと見つめながらため息をつく。
「……俺達も大変な状況ではあるが、世界にはもっと地獄みたいな場所がある。下には下がいるな」
「どうしたの、藪から棒に」
やや怪訝そうに顔をしかめたのは愛狗姉。
いつも通りのゆるいテンションで、俺の横を歩いていた。
「いや、なに。俺達の話が5ヶ月近く放置されてた理由を確認してただけさ。最近のアホ作者が別の世界の話書くのに夢中になってたからな。これがその世界の話。俺らはその裏で熟成されてたわけよ」
「メタいなぁ」
「ま、それだけ旨味が増してるってことだ」
俺はスマホをスリープにすると、ポケットに放り込んだ。
時刻は夕方。9月中旬らしく生暖かい風が吹いている。
目的地は、学校の近くにある旧飛輝鐘神社。
母さん経由でアポを取った助っ人と落ち合う場所だ。
「ブラックバニア? たまにニュースで聞くくらいだけど……」
横で尋ねてきたのは姫様――かぐや。
「地球の裏側にある、資源も地政学的価値もロクにないド田舎国家。だけど無能な政府と、それ以下の野盗同然な反政府軍がずっと泥沼の内戦やってるんだ。子供兵にAK47持たせて突撃させるような地獄絵図だよ」
「……その中に、私達と同年代くらいの子も?」
「たくさんいるらしい。俺らがこうして夕焼けに染まった道を歩いてる間にも、誰かの人生が引き金一つで終わってる。……せめて平和への願いくらいは祈ってやろう」
俺はそんな風に言いつつ、神社の階段を登りはじめた。
かぐやと愛狗姉も黙ってついてくる。
旧飛輝鐘神社はその名の通り、かつてこの土地の守り神として信仰されていたが、今はアクセスの良い場所に新社が移されたため、訪れる人も少ない。
廃社ではないが、いわゆる寂れた神社というやつだ。
「しかし、なんでまたこんな場所で会おうって話になるんだろうね」
「ん……神社で落ち合うって、なんか意味深だよな」
「祀られてる神様がそっち系だったりして」
愛狗姉と姫様が軽口を交わすが、俺の脳裏にも嫌な予感がよぎっていた。
実際、俺の家系――というか母さんや翠姉ちゃん――はヤバい系の神様と関係があるし、何なら俺自身も触手に育てられた過去がある。
階段を登りきると、そこには夕陽に照らされた広い境内があった。
ぽつんと建つ社と、それを守る一対の狛犬。
人の気配はない。ただ、なぜか狛犬の影が濃く、妙にこちらを睨んでいるように見えた。
「……なあ、気のせいかもしれないけどさ」
「何、白ちゃん?」
「あの狛犬、なんか……動いたよな」
その瞬間だった。
狛犬の陰から、ぬっと滑り出すように現れる一人の人影。
そしてその背後に、ぴったりと寄り添う3人のメイドさん。
「……え、今朝の……!?」
驚いたように呟いたのは愛狗姉。俺もすぐに思い出した。
今朝、校門前で女子生徒たちに黄色い歓声を浴びていたアイドルのような男子──
金色の瞳。腰まで届く紺色のロングヘア。中性的な美貌。
「待たせたね。吉弔谷白兎くん……だよね?」
整った顔に穏やかな笑みをたたえて、彼は言った。
「私は管狐晴嵐。君のお母さんに言われて、少し話があるんだ。あと、こちらが俺の可愛いメイドたち──。狐火サラ、狐火フェルト、二頭犬風炉俺のハーレムであり、心の支えであり、生活の全てだよ」
まるで当然のように三人の美少女メイドを従え、狛犬の陰から現れたその姿は──
どこからどう見てもキャラが濃さそうな助っ人であった。
そして、俺は直感した。
「ああ、この人、間違いなく味方サイドだけど…… 間違いなくまともじゃない」
と。
ブラックバニア内戦については拙作『美少女学徒兵100人の指揮官になった俺、全員からめちゃくちゃ愛される~ハーレムっていうか俺のファンクラブだこれ!?〜』を参照のこと(ダイマ)




