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6.転校生

 大学に向かう翠おば……姉ちゃんと別れて、学校に到着した時には、すでにクラスメートのうち多くが到着していた。


 こころなしか、皆、ざわめきたっている気がする。


「なんだよ、皆、随分浮き足立ってるじゃないか。今日は何かイベントがあったか?」


 俺は、自分の席に座ると、前に座る男子生徒に声をかけた。ちなみに愛狗姉とはクラスは同じだが、少し席が離れている。


「おはよう、白兎。面白い事になりそうだぜ」


 男子生徒の名前は、鉄鼠譲二(てっそ じょうじ)。俺の友人の一人である。顔は強面系で一見、やくざものにさえ見える。空手部に所属してるのもあって、身体の方もかなり筋肉質だ。


 だが、外見に反して、性格は名前通り、ネズミの様にかなり小心者でビビりである。臆病な彼の性格と、俺の性格が相反しなかったのか、仲は良く、よく気の置けない会話をする仲だ。


「今日、転校生が来るんだと」


「珍しいな。高校で転校って」


「試験とか、色々面倒らしいな。それで、なんでもその転校生、女の子らしくてな」


「それで、特に男子連中が色めき立っている、と」


 納得した。そりゃあ、クラスの空気もざわつくだろう。


「……怖い子じゃないと良いな。スケバンみたいなのが来たらどうしよう」


「鉄鼠、相変わらず君はビビりだな。外見だけなら完全にスジモンなのに。こういっちゃあ失礼だが、初めて鉄鼠を見た転校生の方がビビると思うぞ」


「性格だ。そう簡単に変えられるもんじゃない。空手部に入ったのだって、この性格を少しでも矯正出来れば、と、思ったんだがなぁ……」


「ま、世の中何でもかんでも思い通りにはいかないぞって事さ」


 俺は、少し興味が湧いて、他の男子連中にも声をかけて、情報を集めてみた。愛狗姉がこちらを眺めているので、女子生徒には声はかけない。流石に、俺も命は惜しい。


 なんでも、親の仕事の影響で、この飛輝鐘市に引っ越してきたそうで、まぁ、よくある話である。まだ、誰もその姿は見ていないそうだ。


 なので、その転校生が美人か不美人かで、トトカルチョをやる、との事だったので俺は美人の方に賭けておいた。賭博といっても負けた方が勝った方に、ジュースを奢るという可愛いものである。


 ***


 そのうち、ホームルーム開始を告げる鐘が鳴る。


「皆のもの、おはよう!」


 鐘の音と同時に担任の先生が入って来た。鎌鼬香子(かまいたち きょうこ)先生。最近採用されたという若い先生で、専門は日本史と世界史。後ろでまとめた黒髪が美しい美人である。授業も面白いので男女問わず人気はあるが、同時に声がかなり特徴的で、変な訛りもあり、声量自体も大きいので、話していると変な感覚になってくるという、変わった人である。ちなみに、街で遭遇した奴曰く、私服のセンスも絶妙にダサかったそうで、どちらかというと、変人に分類出来る。


 その鎌鼬先生が、開口一番、早速例の転校生の話題を切り出して来た。


「噂に聞いている奴もいるだろうが、今日からこのクラスに転校生が入る。皆、仲良くする様に……早速だが、紹介する。入ってくれ」


 鎌鼬先生の声に応えて、教室の扉が開いた。そのまま、1人の女子生徒が、クラスの中に入ってくる。


「~♪」


 俺は思わず、口笛を吹いた。


 入って来た女子生徒は、これぞ美少女といった出で立ちであったから。クラスメートの連中も、歓声を浴びせるどころか、静まり返っている。人間、真に美しい物を見た時には、感嘆の声をあげるよりも、呆然とするものらしい。


「今日からこの学校に転校してきた、大邦浜(おおくにはま)かぐやです。よろしくお願いします」

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