49.弱気な姫君
最近多忙だったのと、体調崩したりしたのもあって久ぶりですが、再開します。
というわけで買い物が終わった。そこまで珍しいものでは無いし、あっさりと買いそろえる事が出来た。
現在はショッピングモールから我が家に帰宅したところだ。何だかんだで、もう夕食の時間である。ショッピングモールに行くと時間が溶ける。
「……そろそろ夕食だね。よし、ここは俺が夕食を作ってあげよう」
「「「やめて!!」」」
皆疲れただろうし、俺が夕食を作ろうとしたら何故か全力で拒否された。善意でやってやろうとしているのに、何故だ……。結局、夕食は翠姉ちゃんが作る事になった。いや、翠姉ちゃんの料理も美味しいから良いんだけどさ。昔、親父たちが研究が忙しくて帰れなかった時は、俺達きょうだいの為に、よくうちに来て作ってくれてたし。
「……で、姫様はいつ帰るの? そろそろ暗くなるけど」
「帰らないよ。私は」
「え」
「帰らないよ。今日明日はここに泊めさせてもらう」
あっさりと言った姫様に俺は困惑した。
だが、よくよく考えて見ると、彼女のものと思われる大きなリュックサックが玄関に置いてあった様な。
「今日明日私の家に馬鹿親父が来るからね。母さんがどこかに泊まって来なさいって」
「それはそれは……」
俺は彼女の実父、霊道同一の事を思い出した。色々な愛人の元を歩き回っているのだろう。今回は、彼女の母の所に来たという所か。
「ま、その分の宿泊費はもらっているからね」
「うちに泊まっていけば、その分が儲けになるって?」
「そういう事」
いたずらっぽく笑う姫様。小悪魔的で可愛らしい。
「はは。良い性格してらぁ」
「あの二人には、私生児って事で色々苦労させられたからね。これ位の復讐は許されるだろう」
「で、私生児として苦労させられた割に、こんなハーレム云々言ってる奴の恋人になりたいって言ってるんだから、姫様も大概変な人だよ」
「別に私はハーレムを認めるなんて言ってないし……」
「そんなつれない事言うな。4人で酒池肉林といこうよ」
「だいぶ最低な事言ってる自覚あるかい? 前世のシドならこんな事言わなかったんだが……」
「そりゃ、俺とそのシドって人は別人格だし」
「………」
姫様は、俺の言葉にしんみりとした顔になった。
「……そうだな。君に、私との記憶は無いんだったな。分かっていた事とはいえ、少し寂しいな」
姫様は、そのまま俺の顔を見つめてくる。
「シド……いや、白兎。今までの事、迷惑だったかな。冷静に考えると、突然やってきた転校生に前世がどうのこうの言われて、変な儀式に巻き込まれるの、だいぶ迷惑だと思うんだよね」
「何さ。急に殊勝な雰囲気になって」
しんみりとした空気になる姫様。
「うん! すっごい迷惑! 私の白ちゃんから手を引いてくれると嬉しいなぁ」
「そうじゃそうじゃ」
「外野、うっさい」
しっとりとした空気を無視して、ここぞとばかりに挑発してくる愛狗姉と翠姉ちゃんに敵意を向けつつ、姫様はシリアスな雰囲気のまま聞いてくる。
「どうかな? 白兎は今の状況、迷惑だったりするかい? 返答によっては私は君から手を引くが」
「ん……仮にもう関わるのをやめてくれと言われて、本当に諦めきれるの? 前世から追っている因縁の相手を」
「………………返答次第だと余計病むかも」
ハイライトの消えた瞳を前に、俺は少し何を言うか迷いつつも、口を開く。
「まぁ、迷惑か迷惑で無いかといったら、突然訳わからない状況に巻き込まれたのは困惑してはいるけど。嫌いでは無いよ、今の状況も」
そう言って、俺は姫様にできるだけ妖艶な笑みを作って微笑みかける。
「オカルトは嫌いじゃないし、こんな可愛い女の子に好意を向けられて悪い気はしないさ」
「……良い性格してるよ、今のシドは」
「白兎として、16年は生きてるからね。そりゃ、性格も少しは変わるだろう」
「まぁ、良いさ。迷惑でないなら、引き続き私は君を狙い続ける事にする」
「それでこそ姫様だ」
そう、爽やかに言ってのける。まだ出会って1週間と経っていないが、何となく、10年来の付き合いの様な感覚を感じるのは、案外、本当に前世からの仲だからかもしれないと思う。




