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48.ここにきて急にチョロイン化したね……

 

「なあ、白兎。こっちの性能が高くて価格が高いパーツと性能そこそこ、値段もそこそこなパーツ。どちらが良いと思う?」


 家電量販店にて、俺は翠姉ちゃんの買い物に付き合っている。彼女はパソコン用のパーツを2つ持って比べている。


「服屋で聞くような台詞を家電量販店で聞くことになるとは。……何を求めているかにもよるかな。あと懐事情」


「あまり余裕は無いのぅ。バイトがあるとはいえ、大学生は金がかかるんじゃ」


「それならコスパ重視で良いんじゃないか?」


「ではそこそこパーツにするかのう」


 そんなやり取りをしつつ、俺は残りの二人の様子を見る。二人とも機械いじりにはあまり興味は無い様で、ガンプ◯コーナーで時間を潰していた。二人揃ってオタクトークに花を咲かせている。


 ……あの二人、俺が絡まなければ相性自体は良いのでは? なんなら俺達4人ともガノタだし。共通の趣味話題があると人は割とあっさりと仲良くなれるものだ。


 あれ……? この構図、どこかで見た事があると思ったらオタサーの姫の逆パターン……? 俺はサークルクラッシャーだった……?


 ***


 翠姉ちゃんのパーツを購入し、俺達はモール内のファストフードでドリンクを頼み、フードコートで一息ついている。休日とはいえ、まだ夕方なので、席の確保は簡単に出来た。


「さて、叔母上の買い物も終わった所で、私の買い物も手伝ってほしいんだが」


 クリームソーダを飲みながら、姫様が口を開く。


「何じゃ? 今日白兎とイチャイチャする権利があるのは儂じゃぞ」


 ハイライトの消えた目で、翠姉ちゃんが口を開いた。相変わらずのくすんだアメジストを思わせるその瞳は、美しくも恐ろしい。


「それは重々承知の上だが、まあ、聞いてくれ。昨日の夕方に話しただろ。星辰が揃う日のは次の十五夜。それまでにNSクロスロードの自爆コマンドを完成させないといけない。それに必要なものを、今買ってしまおうと思ってね。せっかくだから付き合ってくれないかい?」


 そう言った姫様は一枚のメモを取り出した。


「どれどれ」


 俺は早速、そのメモに目を通した。


 メモには以下のものが書かれていた。


 ・ぬいぐるみ

 ・米

 ・赤い糸

 ・包丁

 ・塩

 ・コップ


「「「…………」」」


「ま、全部ここで揃うだろう」


「「「いやいやいや」」」


 俺、愛狗姉、翠姉ちゃんは声を揃えて困惑の色を露わにした。


「何、これ……? ボケてるのか?」


「これってアレだよね。一人でかくれんぼする時に用意するものだよね」


「あれか? 儂と愛狗ちゃんを呪ってやるぞって意思表示か?」


「まあまあ、落ち着き給え」


 メモに書いてあるのは有名な都市伝説を実行するのに必要なものだった。ツッコミ待ちと取られても仕方ない。


「儀式のやり方だが……星辰の揃う夜、直近だと十五夜だな。その午前3時に、あらかじめ中の綿を抜いたぬいぐるみに、米を入れ、赤い糸で穴を縫い合わせる。名前も事前につけておく。ああ、米と一緒に、儀式に参加する人数分の爪を入れるのも忘れずにね」


「……話しを聞けば聞くほど、すっごく一人かくれんぼなんだが」


「儀式なんだから似る事だってあるだろ。収斂進化ってやつだよ」


 釈然としないものを覚えつつ、俺達は話しの続きを聞く。


「そしてNSクロスロードの咲いている範囲の外にある池で、そのぬいぐるみに包丁を突き刺し「あなたが狩人の番、邪悪な花を狩るべし」と言って池にぬいぐるみを沈める」


「ここにきて、急に豪快になったのぅ……」


「邪悪な生物兵器相手なんだから、それくらいの豪胆さは必要さ。そうすると、大体1、2時間くらいでNSクロスロードは全滅する。最後にぬいぐるみを引き上げて、塩水をかけて洗浄し、焼却処分(お焚きあげ)すれば完了……のはず」


「「「……はず?」」」


「私だって実際にやった事はないから、正直、どこまでこれが効くかは未知数なんだよ」


「もしも効かなかったら……?」


「おとなしく、地道に除草剤をまくしかないだろうね」


 冗談めかして語る姫様。冗談じゃない。凶悪な生命力と繁殖力を持つ生物兵器相手に除草剤なんて効くものか。


「他に方法は無いの?」


「あるかもしれないが、これが私が唯一覚えているやり方さ。一番手軽でもある」


 俺達は、姫様の言葉に顔を見合わせた。こんな都市伝説もどきのやり方で上手くいくのだろうか……。とはいえ、他に方法もないのも事実だ。


「……分かったよ。姫様の賭けに乗ろうじゃないか」


「信じるのかえ? こんな適当な方法」


「収斂進化っても、あまりにもまんまだしねぇ……」


 猜疑心に染まっている愛狗姉と翠姉ちゃん。だが、俺は姫様を信じる事にする。


「駄目で元々、やってみようじゃないか。どちらにせよ、藁にもすがらなければいけない現状だ。すがれるものにはすがってみようよ」


 それを聞いて、2人もしぶしぶ頷いた。感激した様に姫様は笑みを浮かべた。そのまま、姫様は俺達に交互に抱き着いた。


「流石私のご主人様と恋のライバル達! 話が分かるぅ!!」


「ちょっ!? いきなり馴れ馴れしい!」


「なんじゃこやつ……この前まで敵愾心剥き出しだったのにのぅ」


「……一種のチョロイン気質も持ち合わせているんだろう。まぁ、とりあえず、買い物を済ませてしまおうか」


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