34.武力介入……?
「なんだぁ? てめぇ」
「通りすがりの因幡の白兎さ。……女の子相手に寄ってたかって、ダサいって言うんじゃないの? そういうの」
俺は不良たちへ、そう諭すように言う。
だが、彼らはそれを無視して威圧してくる。
「はっ! お嬢ちゃん、怪我したく無ければ下がってな!」
「その可愛い顔に一発食らわせてやろうか? あぁ!」
まぁそりゃそうだろう。話して分かれば犬養毅は殺されていない。初めから、こちらも素直に聞いてくれるとは思っていない。
「やれるもんならやってみるか? 昨日、ヒクイドリを鎮圧したのは実は俺でね。喧嘩には自信があるんだ」
あくまで俺は挑発する様に、不敵な笑みを浮かべつつ、指を組み合わせて鳴らす。無論、ハッタリである。昨日ヒクイドリを戦闘不能にしたのは、姫様の電撃だ。
だが、巷では、尾ひれがついて、奴をノックアウトしたのは俺という事になっているらしい。昨日、警察でもそう証言したし、なんなら鉄鼠から、通信アプリの『線』で、そんな噂が立っているという話も来ていたのだ。
まぁ、魔法で云々よりはまだ現実的だし、一見少女にも見える美青年が、狂った不良を鎮圧したという話は、弁慶と義経の五条橋での一騎打ちを彷彿とさせて、絵面も良い。この話が広まるのは早いだろう。
その噂を、目の前の不良達が聞いたという事に、俺は賭けた。弱いもの相手に、せこいカツアゲをする様な性根の不良なら、そんな強敵とは戦いを回避しようとするはず……。
それでも向かってくる様だったら、一発目は向こうに殴らせて、姫様にまた狙撃してもらおう。
「なっ……あのヒクイドリをやったやつ!?」
「馬鹿な! ハッタリに決まっている!」
「だが……噂通りの白髪の長髪に、赤い瞳の絶世の美人だ……まさかこんな所に!」
案の定、不良たちに動揺が走る。それを見逃さず、俺は更に言葉を続ける。
「俺だって、朝っぱらから喧嘩なんてしたくない。どうだい? 彼女の物を返して、解放して、二度と関わらなければ、俺もこれ以上はお前達には関わらない。悪い話じゃないと思うぞ……一応言っておくが、お前たちの顔、覚えたからな?……さぁ、どうする? 俺は気が短いんだ」
全身で殺気を出しつつ、そう説得する。俺が出せる殺気なんて、それこそ子兎位のものだが、ハッタリのお陰でそれは何倍にも増加している。
しばらく睨み合っていた俺達だが、最終的には向こうが折れた。しぶしぶ、鞄と財布。そして、小説を彼女に返すと、3人はそそくさと退散していった。
3人が完全に見えなくなった所で、俺はようやく緊張の糸がほぐれて、その場にへたりこんだ。メンチの斬り合いなんて慣れない事をやるもんじゃない。相当なストレスだった。よく耐えたぞ、俺。それに強面と向かい合うは鉄鼠の顔で慣れていたのも良かった。
「……あ、あの……ありがとうございます」
ぼそぼそとした声で、件のガリガリの少女が礼を述べてきた。
「いや、こちらはちょっとした詐欺をしただけさ。そちらこそ、怪我は無かったか?」
「は、はい! 大丈夫です!」
改めてよく見ると、彼女はやせ過ぎで、即身仏よりはマシという位には、身体に無駄な脂肪がついていない。なんなら、栄養も不足気味なのか身長は小柄な俺よりも低く、着る服によっては、小学生にも見えてしまうだろう。
髪はオーソドックスな黒色のツインテール。だが、同じツインテールでも、毎日、手入れをして美しい愛狗姉の髪と比べると、月とスッポン。失礼ながら、情けない程に劣っていると言わざるをえない。
そんな風に俺が観察していると、改めて彼女が口を開いた。
「私……平常世といいます。飛輝鐘高校の2年生です」




