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32/61

32.もしもラブコメヒロイン達が孫子の兵法を読んだら

 

「拙速!拙速!拙速!」


「拙速!拙速!拙速!」


「拙速!拙速!拙速!」


「何なの? 3人共、昨日の姫様の言葉に触発されたの……?」


「まぁ、そんな所だね」


 そう言いつつ、不敵な笑みを浮かべる愛狗姉。


 もはや拙速botと化した、愛狗姉、翠おねえちゃん、かぐや姫様を俺は交互に見た。ちなみに3人共、そりゃあもうベタベタと俺の身体にボディタッチを仕掛けている。なんなら、俺の右腕に愛狗姉が、俺の左腕にかぐや姫が。そして、俺の腰には翠姉ちゃんが張り付き、さながら群体生物の如し。


 あれからまた一夜明けた。昨日はあんなことがあったが、学校は通常通り開校するという。警察の現場見分は昨日で終わったのだろう。


 我が家での報告会もあのままお開きになった。とりあえず、うちの両親は俺達の恋愛模様には不介入というのが改めて決まった形である。ちなみに、翠姉ちゃんと姫様は、我が家でうちの両親から誘われ、夕食を食べて、ついでにその後4人で某エクストリームなガンダ◯ゲーム(家庭版)をして帰っていった。二人ともあれだけバチバチした後に、ある意味大した肝の座り方をしている。


 夕食会で語っていた事には、かぐや姫の推しMSは∀ガンダ〇らしい。そういえば、あれも昔話の方のかぐや姫がモチーフの1つだっけ。


 更に言うと、そのエクストリームなガンダ◯ゲーでは愛狗姉と翠姉ちゃんの間でなんやかんやあってリアルファイトに発展したが、この辺りの話は、ただひたすらに醜いだけなので全カットである。


 という訳で、俺達学生は今日も今日とて登校する訳だが、彼女達、我が愛しのヒロインズは、何を思ったのか、通学路で次々に俺と合流してはオナモミの種の如く、拙速、拙速と呟きながら俺に張り付いてくる。


「孫子に曰く、兵は拙速を尊ぶ。戦争は国家の一大事、故にやるからには、速攻で終わらせなければならない。そう。多少、拙くとも。」


 今度は翠姉ちゃんが言う。


「さっさと勝負を決めて、国や勢力のリソースを戦争に使い過ぎない様にしなければならない。争いは基本的に破壊しか生まないからね……」


 姫様が口を開いた。何だ……この流れ。


「「「恋愛でもそれは同じ! 白ちゃん(シド)(白兎)と、速攻で恋仲になる!! 多少、汚かったり、強引な手を使ってでも!! 」」」


 くっ、このヒロイン達、全員孫子の兵法を履修済みか! うむ、孫子の兵法が恋愛にも応用出来るとは盲点だった。


「よし、そっちがその気なら」


 ならばこちらも応えなければ失礼というもの。こちらは3人共俺のものにしたいのだ。


「こうしよう。明日は土曜日だ。放課後に姫様、明日の引っ越し後に翠姉ちゃん、日曜日に愛狗姉とデートしよう。そうしよう」


「儂は良いと思うぞ」


「……まぁ良いんじゃない?」


 俺はそう言ったが、姫様はあまり乗り気ではない様だ。


「1日ごと……」


「週末全部を儂に注ぎ込んで欲しいのだが。……まぁ良いわ。元々、デートの予定はあったしの」


「私だけ放課後って、明らかに時間が少ないんだが……」


「付き合いが長い二人に、より報いるのはフェアだと思うがね」


「前世からの仲を考えたら、二人より、より濃密な時間を過ごしているんだが……」


 姫様が特に不満げだったが、それを愛狗姉が煽る。


「ま、諦めなさいな。嫌なら勝負から降りても良いのよ? 」


「ぐぬぬ……」


「翠姉ちゃんはそれで良い?」


「ああ。儂は元々愛人枠狙いじゃ。儂にリソース割いてくれれば、満足じゃ。それにこういったらなんじゃが、女の子としての格は儂らは同レベルくらい。時には妥協と待ちも必要よ」


「まぁ、大体同感ね。悔しいけど、叔母さまやお姫様も、悪女ではないからね。華麗にざまぁして終わりって訳にもいかないし……」


「成程、ヒロインレースは完全に拮抗状態にあるから、二人は勝てる状況が来るのを待つって事。勝つべからざるは己にあるも、勝つべきは敵にあり。って訳……まぁ、良いだろう。今はポイント稼ぎタイムといこうじゃないか」


「じゃ。そういう事で」


 そう言うと、俺はこの話を打ち切った。三人ともヤンデレ気質の割にあっさりと話が決まった辺り、下手にゴネて俺の心象を悪くするよりは、ここは受け入れた方が良いと判断したのだろう。


 週末は忙しくなりそうだ。


 なんなら、今後はデート代を捻出する為に、アルバイトを探しても良いかもしれない。生活費に手を出すわけにはいかないし、何をするにも先立つものは必要だ。



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